日本酒はビールなど他のお酒と異なり、0℃から60℃とさまざまな温度帯で楽しむことができ、さらに温度で香味まで変わるという、世界でもとてもめずらしいお酒です。焼酎も「お湯割り」「水割り」などがありますが、日本酒はお酒そのものを温めたり冷やしたりするのが、焼酎との大きな違いです。今回は、冷酒についてご紹介します。
冷酒とは
冷蔵庫などで15℃以下に冷やしたものが冷酒です。日本酒を楽しむには、この温度を知ることがとても重要になります。具体的にみていきましょう。
温度は?
冷酒の温度は5℃から15℃です。15℃から30℃が常温、30℃から60℃が燗酒になります。
飲みごたえは?
冷酒は、甘みや香りがおさえられますので、すっきりした味わいや、刺激的で爽快感のある喉越しを楽しめます。また、料理と一緒に飲むことで、口の中をリフレッシュする効果もあります。脂っこい料理と一緒に飲むのもおすすめです。
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日本酒の「冷や」と「冷酒」の違いは?
常温のお酒(15℃から30℃)は「冷や」とも呼ばれます。紛らわしいですが、なぜ冷たくないのに「冷や」なのでしょうか?
冷蔵庫が存在しなかった時代、日本酒には「燗酒」と「常温」の2種類しかありませんでした。
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今では、常温でお酒を楽しむ人は多くありません、ですので、「冷やで」と言われても、店員の方が気を利かせて「冷酒でよろしいですか?」と確認してくれたり、そっと冷酒を出してくれたりするお店も多いです。しかしお店で冷酒を注文するときは、「冷やで」ではなく「冷酒で」と伝えるのがスマートです。
冷酒の温度別の呼び方
日本酒は、は温度によって、四季を感じさせるような、風情ある名前がついているのが大きな特徴です。冷酒だけでもたくさんの呼び方があります。ひとつずつご紹介します。
みぞれ酒
酒。「和カクテル 梅冷酒」菊正宗酒造
みぞれ酒にしていただく。
プラスチック容器の日本酒って、こんなこともできるんだーΣ(゚д゚lll) pic.twitter.com/Kc3LGmUJdu— ひなた寝子 (@conte_maki) March 1, 2014
日本酒がシャーベット状になった状態です。冷凍庫にお酒を入れてゆっくりと冷やすと、完全に凍らず、液体のまま冷たくなります。この状態で冷蔵庫から外に出し、冷えたコップに注ぐと、その衝撃で分子が結晶化し、シャーベットのようになるのです。
家でみぞれ酒をつくりたい場合は、大きなファスナーつきのビニール袋に入れて、冷凍庫で寝かせてみましょう。瓶のまま冷凍庫に入れてしまうのは、中身が膨張して破裂する危険がありますので厳禁です。
カチカチには凍りませんが、シャリシャリ感を楽しめる、大人のシャーベットのできあがりです。またマンゴーや桃などのフルーツと一緒に凍らせることで、見た目も鮮やかな、夏向けのおしゃれなデザートになります。
雪冷え(ゆきびえ)
5℃に冷やした日本酒を「雪冷え」と呼びます。酒瓶の表面に結露が生じている状態です。冷え切っているため、口の中に含んでいても味がわかりづらいことがあります。
花冷え(はなびえ)
10℃に冷やした日本酒を「花冷え」と呼びます。冷蔵庫から取り出して、瓶が冷たくなった状態です。香りが弱くなりますが、飲んでいるうちに徐々に広がっていきます。
涼冷え(すずびえ)
15℃の日本酒を「涼冷え」と呼びます。冷蔵庫から取り出して、少し放置した状態です。とろみを感じられます。
温度によりどのように風味や味わいが変わるか?
日本酒は、冷やすことで透明感のあるキリッとした味わいを、温めることで思いがけない香りや旨味を楽しめるのが大きな特徴。冷やすことで、清涼感を感じられるようになります。しかし一方、香りそのものを感じられなくなるというデメリットもあります。また、甘みや旨味も感じにくくなります。まろやかさを特徴としていたり、複雑な味や香りが売りだったりするお酒には向かないかもしれません。
ではどのようなお酒が、冷酒に適しているのでしょうか?
冷酒に適した日本酒は?
日本酒には、次の4タイプがあるとされています。
- 熟酒(じゅくしゅ)
- スパイス、蜂蜜、ドライフルーツのような熟成した薫りが特徴のお酒です。古酒、熟成酒がこれにあたります。
- 醇酒(じゅんしゅ)
- 米の風味があり、旨味やコクを感じられるのが特徴のお酒です。主に純米酒がこれにあたります。
- 薫酒(くんしゅ)
- 甘い果実や花のような、華やかな薫りが特徴のお酒です。吟醸酒、大吟醸酒がこれにあたります。
- 爽酒(そうしゅ)
- ハーブや青竹のような薫りで、軽快でスッキリと飲みやすいのが特徴のお酒です。普通酒、本醸造酒、生酒がこれにあたります。
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すっきりした香味が特徴なので、冷やすことでよりおいしく感じられます。冷酒を楽しみたいなら、まずは「淡麗」と表現されている銘柄を選ぶのがおすすめです。5℃前後の「雪冷え」で楽しみましょう。
また、大吟醸などの薫酒タイプも、冷酒に合います。10℃前後りんごやバナナのような、フルーティーな香りを持つ薫酒は、冷やすことでよりみずみずしい果実のような味わいを楽しめます。おすすめの温度は、10℃前後の「花冷え」です。一方、雪冷えにしてしまうと、フルーティーさを感じられなくなってしまうので、冷やしすぎには気をつけましょう。
そして、ぜひ冷酒で試していただきたいのが、スパークリングタイプの日本酒です。代表的なものに、京都にある宝酒造の「澪」、宮城県にある一ノ蔵の「すず音」、福島県にある末廣酒造の「ぷちぷち」山口県にある旭酒造の「獺祭スパークリング45」などが挙げられます。
冷酒の冷やし方
一番てっとり早いのは、氷水につける方法です。ボトルを首まで氷水に漬けましょう。1分で約1℃下がります。例えば25℃のお酒を10℃の「花冷え」で楽しむには、氷水に15分漬けます。滑りやすくなってしまうので、持ったときに落とさないように気をつけましょう。
また冷蔵庫の場合は、1時間で約5℃冷えます。25℃のお酒を10℃に冷やしたい場合は、3時間が目安になります。
冷酒に最適なグラスや器は?
日本酒は、グラスや器の形状や材質、大きさや厚みによって、香味が変わるという特徴があります。香味を考慮してグラスや器を選ぶのも、日本酒を楽しむ秘訣です。
冷酒の場合は、温度が冷たいままのうちに飲みきれるような、小さめの器がよく合います。また爽やかさを感じられるような、ガラス製のお酒がぴったりです。特に装飾をほどこした切子細工は、高価ですが、冷酒ととても相性が良くおすすめです。「江戸切子」や「薩摩切子」が有名です。
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まとめ
お酒は温度によって驚くほど味が変化します。ここまで幅広い温度で楽しめるのは、世界中を探しても日本酒だけではないでしょうか?
冷酒には、薫りや旨味を感じづらくなるデメリットがありますが、苦手なお酒が飲みやすくなるとも言えるでしょう。飲んでみて「この酒、苦手だな」と思ったら、冷やしたり「みぞれ酒」にしたりしてみましょう。新たな発見があるかもしれません。
まずは蔵やお店、行きつけの居酒屋などで、店員の方に「冷酒向きのお酒」についてきいてみるのがベターです。そして次は、自分自身でいろいろな温度で試してみましょう。ぜひ、あなたのベストな温度を見つけてみてくださいね。