近年世界的なブームとなっているのが「ジャパニーズウイスキー」です。日本産のウイスキーは非常に飲みやすく、また香りが高く上質な味わいをしています。
そんなジャパニーズウイスキーですが、2021年4月1日より正式に定義が決められました。従来まではさまざまなウイスキーがジャパニーウイスキーを名乗っていましたが、これからは日本で採取された水を使用しているもの、国内で蒸留がなされているものなど、定められた条件を満たすものだけが正式なジャパニーズウイスキーと認められることになります。

目次
ジャパニーズウイスキーが定義された背景は?
ジャパニーズウイスキーが定義されたのには、ジャパニーズウイスキーが世界的な注目を集め人気が高まったことが大きく関係しています。
世界的な賞の受賞やハイボールブーム、マッサンでの人気
かつてはウイスキーというと世界5大ウイスキーのスコットランド産など海外のものが有名でしたが、2000年代に入りジャパニースウイスキーの世界人気が高まりました。人気の理由はさまざまですが、日本産のウイスキーは海外のものに比べて非常に飲みやすく、雑味が少なく上品な味わいをしていることが大きな理由として挙げられます。
品質の良さはプロにも認められ、さまざまな品評会などで日本のウイスキーが軒並み入賞することとなりました。さらには世の中でビールに変わり「ハイボール」が流行ったことや、国内ではNHK連続テレビ小説 「マッサン」でウイスキーに関する内容が取り上げられたことも人気を後押ししました。
【竹原市 NHK朝ドラ「マッサン」】
ニッカウヰスキーの創業者で、「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹原市生まれの竹鶴政孝をモデルにした「人情喜劇」です。 pic.twitter.com/dLcWthDvsw
— 朝ドラ「マッサン」NHK連続テレビ小説 (@dramanhkma3) September 29, 2014
人気による原酒不足・高騰化が相次ぐ
急激に人気が高まった日本のウイスキーですが、人気が高まったからといって急に生産量を増やせるわけではありません、ウイスキーは製造の過程で熟成させる期間が必要なので、生産量を増やすまでには長い時間がかかります。そのためジャパニーズウイスキーは需要に供給が追いつかなくなってしまいます。特にサントリーの「山崎」やニッカウヰスキーの「竹鶴」などの銘柄を中心に、年代物のウイスキーは原酒不足のため終売となってしまったシリーズもあるほどです。
原酒不足で供給がなされなくなると、ジャパニーズウイスキーの市場価格は一気に高騰化しました。10年前に比べ10倍以上の値段がつくものなど、ジャパニーズウイスキーの価値は日増しに高まっています。今後もしばらくはこの状態が続くと予想されているため、人気の銘柄は今以上に価格が上がる可能性も高いです。

日本のウイスキーはここ10年ほどで人気が非常に高まっています。日本産のウイスキーは「ジャパニーズウイスキー」と呼ばれ、世界5大ウイスキーの一つとして認識されています。実際に世界的なコンクールで日本のウイスキーが表彰されることも多く、お酒のプロからみても価値の高いものだと評価されていることがわかります...
原酒不足から海外の原酒が使われるウイスキーも
あまりの原酒不足や高騰化が続いたことで、ウイスキーの銘柄の中には海外の原酒を使い出すものも増えてきました。しかし従来まではジャパニーズウイスキーについて明確な定義がなかったため、海外の原酒を日本でブレンドしたようなウイスキーがジャパニーズウイスキーのように売りだされることもありました。海外の消費者などが、純粋な日本産ではないウイスキーをジャパニーズウイスキーだと思い購入してしまうようなケースもあったそうです。世界中でジャパニーズウイスキーに関する混乱が生じていました。
ジャパニーズウイスキーの価値を守るための定義付け
世界でジャパニーズウイスキーが誤認されているケースがあることを受け、「日本洋酒酒造組合」はジャパニーズウイスキーの定義付けを行うことに決定しました。この定義によって原酒がどこで造られているのか、どのようにして蒸留されているかなどの明確なルール決めを行うことで、ジャパニーズウイスキーの価値を守ることを狙いとしています。
ジャパニーズウイスキーの要件は?
日本洋酒酒造組合の定義によると、ジャパニーズウイスキーの新たな基準は以下のようになっています。
- 原材料:原材料は麦芽・穀類・日本国内で採水された水に限ること。なお麦芽は必ず使用しなければならない。
- 製造:糖化・発酵・蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。なお蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。
- 貯蔵:内容量700リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること。
- 瓶詰:日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。
- その他:色調の微調整のためのカラメルの使用は可。

また1929年(昭和4年)4月1日に日本初の本格国産ウイスキー「サントリーウヰスキー(通称「白札」)」が発売されたことからジャパニーズウイスキーの日実行委員会が「4月1日はジャパニーズウイスキーの日」と制定しジャパニーズウイスキーの情報発信、応援をしています。
定義されることでのメリットはあるの?
さて、いきなり厳しい基準が設けられたジャパニーズウイスキーですが、やはり定義が決まるということにはメリットがあります。厳格に原酒の原材料や製法が定められることで、基準をクリアしたものしかジャパニーズウイスキーを名乗れなくなり、「ジャパニーズウイスキー」の価値が守られることとなります。消費者から見ても、従来よりもどれが本格的なジャパニーズウイスキーであるのかがハッキリとわかるようになります。
海外の方にお土産として渡す場合などは、やはり基準が定まることでより一層喜ばれやすくなるでしょう。基準を満たしているウイスキーの価値が今後さらに高まることも期待できます。
定義されることでのデメリットも
ジャパニーズウイスキーを明確に定義することで、デメリットが全くないわけではありません。何もなかった状態にいきなり厳しいルールが設けられることで、ジャパニーズウイスキーを名乗れなくなる銘柄も多くなるためです。
今回定められた定義では、輸入原酒を一部でも使用しているとジャパニーズウイスキーではないということになります。しかし輸入原酒が使われているからといっても、味が著しく劣化するとは限らないからです。中にはこだわりを持ってあえて海外の原酒をブレンドしているような美味しく人気の銘柄もありますが、そのようなウイスキーであっても今後は「ジャパニーズウイスキーではない」と区別されてしまうこととなります。
対象になるジャパニーズウイスキーの銘柄を確認しよう
今回の基準を満たすようなジャパニーズウイスキーの銘柄にはどんなものがあるかチェックしてみました。本格派の国産ウイスキーを期待しているという方は、ぜひチェックしてみましょう。
ジャパニーズウイスキーの定義を満たす銘柄の例
山崎

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サントリー ローヤル
サントリー 季 ( とき )
ニッカ カフェグレーン
富士
サントリー オールド
リザーブ

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ジャパニーズウイスキーの対象から外れそうな銘柄は?
日本のイメージがつよい銘柄であっても、海外原酒が使われているとジャパニーズウイスキーの定義をクリアできません。以下の銘柄は海外原酒をブレンドしているため、人気は高いですが基準からは外れてしまいます。
- サントリー角
- ニッカセッション
- ニッカカフェモルト
- イチローズモルト&グレーンホワイトラベル
- 富士山麓シグニチャーブレンド
- 陸
など
定義も重要だが何よりも味が大切
