県の面積の65%が森林という青森県は、多様な地形が広がる本州最北端の地域です。森に実が変えれた水で作られる日本酒が素晴らしく全国的にも高い評価を得ています。また、様々な地域から集まった文化によって伝統工芸品も多くある地域です。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
津軽びいどろのねぶた酒器セット
津軽びいどろは青森県指定の伝統工芸品として知られるガラス工芸で、昔から続く宙吹きの技法が特徴です。日本の風景をそのままガラスに表現したような目の覚める色彩が鮮やかで、その美しさから全国的にも知られています。
昭和初期にもともと漁業用の浮き球を製造する工場が青森に多く存在し、その技術が派生して生まれた歴史を持ちます。浮き球がガラスからプラスチックに移行するようになると、ガラス製の浮き球は次々に消えていきました。そんな中、青森県で一番美しいとされる七里長浜の砂を原材料に加えてガラス製品を作ったところ深い緑色になるのを発見します。その偶然によって津軽びいどろの独自性を獲得するに至ります。
津軽塗の錫器ぐい呑み
錫と漆のコラボレーション
津軽塗は、青森を代表する漆器の技術です。この技術を錫のぐい呑みに施したのがこの酒器です。錫のぐい呑みも伝統工芸として知られる大阪浪華錫器を使用しています。ここに津軽塗の代表的な4種類の技法として知られる唐塗、七々子塗、錦塗、紋紗塗のうちの唐塗を施しているのが特徴です。
唐塗は、斑点模様で複数の色を浮かび上がらせた塗り方で、津軽塗の基本的な技法です。基本といってもその手間は大変なもので、何度も漆を乾かしながら塗り重ねています。さらにその模様を研ぎ出し、摺り重ねて艶をつけて仕上げるといった手順を踏み、膨大な時間がかかっている技法でもあります。そのような手間のかかった伝統工芸品のコラボレーションをまじまじと見ながらお酒を頂いてみてはいかがでしょうか。
北洋硝子のワイングラス
津軽びいどろを生み出した元祖が放つワイングラス
津軽びいどろを生み出したのが青森市にある北洋硝子です。もともとガラス製の浮き球を専門に作っていた企業でしたが、試行錯誤を経て美しい色合いを持つ津軽びいどろを生み出しました。その後、他社や作家も携わるようになり、青森の伝統工芸として確立していった歴史を持ちます。
躍るような曲線と津軽びいどろの特徴でもある深く透き通る色合いは海のようです。グラス部分と台座など、異なる青の色合いが心を奪う酒器に仕上がっています。津軽びいどろの元祖が手掛けるワイングラスで、美しい色合いを楽しみながら酒席を設けるのもおすすめです。
津軽金山焼のフリーカップ
津軽半島中南部に位置する五所川原市で焼かれているのが津軽金山焼です。
誕生したのは1985年と、長い歴史を持つ焼き物が多い中で新しい焼き物といえます。同市内にある金山の大溜池の底に堆積していた良質の粘土を使用し、赤松を燃料に釉薬を使わずに焼き上げるのが特徴です。深みのある独特の風合いで、使い込むほどに表情を変えていくのも魅力といえるでしょう。
津軽塗のワイングラス
唐塗りの台座が優雅なワイングラス
津軽塗は江戸時代初期に、青森の津軽地方を治めていた津軽藩の藩主によって漆器づくりの職人が召し抱えられたことに始まります。
その後、津軽藩が贈り物などで利用することがあったものの、本格的に産業として発展するのは明治時代になってからです。江戸時代に培われてきた様々な技術をベースに多彩な塗り方や技法で日本中に受け入れられました。
このワイングラスもそんな津軽塗の技法の一つである唐塗が用いられています。斑点模様で複数の色を浮かび上がらせた美しい模様は、ワイングラスの華やかなイメージとマッチし、お酒の席を華やかにします。また、ベースとなるグラスも高級感あふれるクリスタルガラスを使用しています。
薄く作ったクリスタルガラスによって口当たりも軽やかです。ハレの日に使いたいワイングラスと言えるでしょう。
青森ヒバの抗菌一合升
青森もブランド木材で作った桝
青森ヒバは、青森を代表する木です。
しかし、もともと同地に自生していましたが、注目されることはありませんでした。明治期になって日本で最初の林学博士である本田静六が従来のあすなろの変種であることを発見。一躍注目されるようになります。そして、北海道や関東でも同種が見つかり、ヒノキアスナロと命名されました。
さらに青森では県内で生育しているものを青森ヒバと呼び、ブランド木材として出荷するようになります。
香りが強い木で、その香りは緊張を和らげ、落ち着きを与えるアロマ・リラクゼーション効果が期待できるのも特徴です。
青森ヒバを使って一合升にしたのがこの酒器です。青森ヒバの素晴らしい香りで、癒されながらお酒を楽しめることでしょう。抗菌加工がされているので衛生的で何度も利用できるのも魅力です。
倉石焼のフリーカップ
「倉石焼」の青もキレイですよ pic.twitter.com/8Ru8MBwkHz
— なつこちゃーん🥨 (@natti32) May 17, 2016
地域密着型で焼かれている焼き物の酒器
倉石焼は、青森県南に位置する五戸町(ごのへまち)で焼かれている焼き物です。
比較的歴史が浅い焼き物ですが、同町の倉石地区で産出される黄土を使用して焼いているのが特徴です。また、地元の材料にこだわり土灰・木灰・藁灰などを使い、独特の風合いを得ています。地域の窯元として食器を始め花器や茶器、蘭鉢などを作陶しています。
また、陶芸教室を開いており、気軽に自分らしい酒器を作れるもの魅力です。陶工のアドバイスやアシストのもと、キレイな倉石焼が自分の手で生み出せます。オリジナルの酒器で一杯いただいてみませんか。
倉石焼陶芸教室 倉石焼松月窪「陶花苑」
八戸焼のぐい呑み
実家で貰ってきた八戸焼で黒霧島を呑む!
スーパーで買ってきた肉塊を焼いてオツマミにします。実にGWらしい高貴な生活 pic.twitter.com/LM9EYjc1jX— ターボ柴🐕🚗💨 (@shibant_vr4) May 1, 2021
謎が多い焼き物の酒器
八戸焼は、青森県東部の八戸市で焼かれている焼き物です。
創始年代、創始者などは不明で誰がどのようにして始められたのか分かっていません。江戸の末期にはすでに庶民に親しまれており、蟹沢焼の別名も持っていました。明治時期には一度消滅し、失われた技術となりました。こういった経緯から昭和期には、幻の焼き物とまで言われていたそうです。
しかし、1975年に同地を訪れた陶工が何度も足しげく通って八戸焼の復活を試み、同地に開窯します。そして、山中に窯跡を発見し、出土した陶片などを研究し、復活させることに成功し現在に至った焼き物です。
特徴は、八戸の色を描き出す緑釉。深い青みがかった緑は独特の風合いを醸し出しています。陶工の情熱が復活させた八戸焼で、お酒を楽しむのもおすすめです。
烏城焼のぐい呑み
ギネス級の長大な登り窯から生み出される酒器
青森県のちょうど中央部に位置する黒石市で焼かれているのが烏城焼です。
烏城焼が生み出される103mの登り窯は、世界最長の認定を受け、ギネス記録にも記載されています。特徴は自然釉と薪での焼き方にこだわっていることです。これによって力強い焼き物に仕上げれていきます。ちなみに自然釉とは、釉薬を使わずに薪などの成分によって焼き上げることです。主にアカマツを使っているのが特徴です。
この酒器は、烏城焼の特徴である力強さがあふれており、辛口の日本酒を注げば、その雰囲気を存分に楽しめることでしょう。ギネスの話題なども絡めながらお酒の席に花が咲きます。
まとめ
青森は、自然や従来の産業を生かした様々な酒器が今日も生み出されています。いずれも青森らしい雰囲気を持ち、厳しい冬の寒さや雄大な自然によって作られてきたものばかりです。また陶磁器の分野でも次々に新しい焼き物が誕生し、新しい風を吹き込んでいます。
日本海と太平洋の両方の風を感じ、世界遺産・白神山地をはじめ、八甲田山、奥入瀬渓流、十和田湖などの自然を感じさせる酒器で今晩のお酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。きっと、青森にいるような雰囲気にさせてくれることでしょう。