越前ガニをはじめ、若狭フグや若狭カレイ、珍味の白魚として知られるイサザなど日本海の海の幸が豊富な福井は日本海側気候による豪雪エリアでもあります。このような背景から、豊かな食文化と豪雪時に室内でできる工芸の技術が高められてきました。食文化と工芸の技術が高まると美味しいお酒やおつまみが生まれ、お酒を入れる酒器の文化も豊かなものとなります。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
笏谷石(しゃくだにいし)のロック酒盃
福井で産出される笏谷石は実に1500年もの前から福井で用いられてきた石材です。美しい青色から越前青石の異名を持ち、古今様々な場所で用いられてきました。
古墳時代の石棺をはじめ、平安時代末期石塔や石造美術、江戸時代には城の土台や石垣にもみられ、大名の献上品としても用いられてきました。このように長い歴史を持ち、多くの人々に利用されてきた笏谷石ですが、現在は採掘を終了し遺された笏谷石を少しずつ使用しているというのが現状です。
そんな希少な石材を酒器に加工したのがこのロック酒盃です。加工のしやすさを生かして、精巧に加工された酒器は、お酒を注ぐと深い青色に変化し、より美しさを演出する性質を持っています。古代から愛されてきた素材にロマンを感じながら一杯いただくのはいかがでしょうか。
越前焼のダルマ酒器
福井を代表する焼き物の1つに越前焼があります。これは、福井の中央部にある越前町で焼かれいる焼き物で、鉄分の多い土を使うことによって赤褐色の力強く自然美溢れる雰囲気が特徴です。
平安時代に常滑焼の技術を導入し、実用性を高めて進化を遂げるなど外部の技術で成長してきた歴史を持ちます。明治から大正にかけて需要の減少から廃業する窯元も相次ぎ、技術が途絶える危機を経験しましたが、昭和になって復興運動が起こり復活し現在に至ります。そして、伝統工芸品の指定を受けて2017年には日本遺産に認定されるなど大躍進を遂げた焼き物でもあります。
このような歴史を持つ越前焼をダルマ酒器にしたものが、この酒器です。ダルマのように丸く収まる徳利で、素朴な風合いもあって、とても愛着の持てる形に仕上げっています。ゆっくりをお酒を楽しみながら、形を愛でるのも良いかもしれません。
越前焼のぐい呑み
越前焼の特徴として、素朴な風合いだけでなく耐久性の高い実用性も挙げられます。もともと鉄分を多く含んでいる土を使っているため、焼き上げることで金属のような強さを手にすることも可能です。この性質を生かして、陶器では成形が困難といわれている超が付くほどの薄造りの陶器を生み出すことにも成功しました。
この酒器は、そんな越前焼の強さを生かして薄く作ることで、漆器のような薄さのぐい呑みを生み出したのです。陶器の滑らかさと漆器のような口当たりの両方を体験できるユニークな酒器といえます。越前焼の可能性をうかがい知ることができる珍しい酒器です。
九頭龍の酒燗具
人気の日本酒のロゴが入ったお燗のための酒器福井には県内にいくつもの醸造所があります。その中でも知名度が高いのが黒龍酒造の銘柄として知られる九頭龍です。日本有数の禅寺である永平寺の近くで醸造を行っているこの醸造所は1804年創業の歴史を持ちます。その連綿とした歴史の中で酒造りの技を磨いてきました。
そんな黒龍酒造が自社のお酒を美味しく楽しんでもらうためにリリースしたのは、熱燗を作るための酒燗具です。ポットのお湯をこの酒燗具に注いで徳利に注いだ九頭龍を温めれば簡単に適温のお燗ができます。お燗を楽しみたいけど、電子レンジや鍋に入れて温めるのは面倒という方にとってきっと便利な酒器になるでしょう。
ラウンドボタン-S 日本酒「黒龍」は、福井県の酒造、黒龍酒造株式会社により作られたお酒になります。黒龍酒造は、1804年、文化元年に初代石田屋二左衛門によって創業された酒造になります。 白山の名水と最適な酒造好適米を使用 黒龍には、白山の名水が使われています。山々に囲まれて清らかな湧き...
越前漆器のカップ
福井の工芸技術が光る漆器
福井は越前焼の他に越前漆器と呼ばれる工芸品があります。この越前漆器は、メガネの生産で有名な鯖江市を中心に製造されている漆器です。
その歴史は古く、西暦500年頃の飛鳥時代に継体天皇が冠の塗り替えを現地の職人に頼んだところ、その仕事ぶりやあわせて献上された黒漆の椀の美しさに感銘しました。そして、この技術を奨励したことから本格化したとされています。その高い技術は、越前漆器職人であり漆の専門集団である越前衆を形成し全国に技術者を派遣するまでになりました。古典的な優雅さと堅牢なことで高い技術を持つ漆器は、現在も椀・膳・重箱と様々な製品を生み出しています。
この酒器は、高い技術をもった越前漆器によってお酒を注ぐカップにしたものです。美しい色合いは継体天皇が感動した質感を今に伝えているといって良いでしょう。木器のため、食洗器などで洗うことはできませんが、ハレの日に最適な酒器です。
越前漆器のお月見杯
優雅なな雰囲気を持つ越前漆器
越前漆器は様々な木器に漆を施し、美しい風合いが楽しめる酒器として楽しまれています。
このお月見杯は、木地呂塗りという漆器の伝統的な技法を用いていおり、非常に質感の高い仕上がりでありながらうっすらと木目が見えるという風合いになっています。内側に満月と三日月を浮かび上がらせており、おしゃれなワンポイントになっているのも特徴です。熱燗などを入れても変質しないだけでなく冷酒を注いでも結露しにくい実用性の高さがあります。さらに口当たりも漆の滑らかな質感が楽しめます。
森と器の酒器セット
若狭の焼き物が生み出した酒器セット
森と器というブランドで焼き物を展開しているのは、福井の西部にある若狭地方の熊川宿内で焼かれている焼き物です。同地で手作りにこだわり、「森が創り出す、無駄のない美しさを目指してー」をテーマに様々な焼き物を作陶しています。シンプルな色とデザインのラインナップですが、釉薬の溶け具合の違いが、ひとつひとつの酒器に個性を与えているのも特徴です。
片口とグラスのセットで構成されており、優しい白い色合いが日常遣いにも癒しを与えてくれます。毎日の仕事の疲れをケアしてくれるような雰囲気を与えている酒器です。
「カニの甲羅酒」の味わい・魅力
寒くなると熱燗が飲みたくなりますよね。熱燗をそのまま飲むのも良いのですが、熱燗の中に「ヒレ」を入れたり、蟹の甲羅に熱燗を注いで飲んだりするといつもの日本酒がさらに美味しく感じられます。 特に「ふぐのひれ酒」や「カニの甲羅酒」はおすすめの飲み方です。 今回はご家庭で日本酒をさらに美味しく飲む方法と...
まとめ
福井は伝統工芸が盛んであり、その工芸品を酒器として生み出しているのも特徴です。福井といえば海の幸が有名ですが、それを楽しむお酒を美味しくする酒器も数多くあるといえるでしょう。ハレの日の特別な酒器から普段使いも楽しめる酒器、工芸品の限界に挑戦した酒器など様々な酒器を通じて、お酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。