能登半島をはじめ、日本海に面した位置にあるのが石川です。日本海の海の幸をはじめ、白山の山の幸、そして城下町金沢ではぐくまれた食文化など、魅力的な食のエリアとなっています。代表的なものとして能登牛や輪島フグ、門前そばといったグルメやノドグロの寿司など数えきれません。

石川県は、日本海側に面しているという事もあって、お酒に合うおつまみや名産品は、魚介類が多いです。 かまぼこなどは、新鮮な魚を使って作られている為、全国流通している市販品と比べて、魚の本来の風味を感じられます。佃煮やおでん、魚を糠で漬けた物などお酒のおつまみとしては最上の物を入手する事が出来ます。 ...

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珠洲焼のぐい呑み
能登半島の先端で作られている復活した酒器珠洲焼は、能登半島の北端にある珠洲市で作られている焼き物です。その歴史は古く12世紀ごろには形が完成されていましたが、17世紀に入りこつぜんと姿を消した謎の陶器でもありました。
昭和に入り、この幻の焼き物を復活させようとする動きが起こり、博物館などで保管されていた珠洲焼をもとに復元が試みられ見事に復活しました。その後、珠洲市を中心に作陶が行われるようになり、石川県指定伝統的工芸品を受けました。
この酒器は滑らかな艶消しの色合いである珠洲焼の特徴を持っており、幻と言われたかつての姿を現代に蘇られせています。
輪島塗のぐい呑み
石川を代表する工芸品のぐい呑み
教科書にも出てくる伝統工芸品で作られているのが輪島塗です。能登半島にある輪島市で生産されるこの漆器は、丈夫さを重視し美しさを追求する漆器にあってかたくて丈夫な特徴を持っています。
布を木器に貼って補強し、独自の調合による漆など強さが際立つこの輪島塗をぐい呑みにしたのがこの酒器です。単に丈夫さを追求しているのではなく、美しい紫のぼかしを入れたぼかし塗りを加えるなど一味違った輪島塗に仕上げてあります。漆器はもろいという先入観を吹き飛ばすような強さを持った酒器で晩酌をしてみるのも良いかもしれません。
金沢金箔の杯
石川の県都、金沢は文字通り金箔でも有名なエリアです。極限まで薄くした金箔で、様々な調度品はもちろんのこと、食品にも金箔を散らしています。
そんな金沢の金箔は、さまざまな工芸品にも使われており、酒器としても用いられることは珍しくありません。この酒器は、ベースこそ他のエリアの工芸品ですが、その表面を覆っているのは、みごうことなき金沢の金箔です。ハレの日にふさわしい華やかの極みのような酒器で祝ってみるのはいかがでしょうか。きっと、めでたい場面を演出すること間違いありません。
山中漆器の布袋ぐい呑
漆器と金箔のコラボレーション
石川は白山の森林資源によって漆器も盛んに作られてきました。その中に輪島塗と並んで有名な漆器として知られているのが山中塗です。石川南西部の加賀市で作られている漆器で、江戸時代に山中温泉の湯治客相手の土産物として盛んに作られるようになりました。
華やかな風合いと、大量生産技術によって大衆品としてまたは宮内御用達の品まで様々な品質を持つ、全国一の漆器へと変貌した経緯を持ちます。
この山中塗の布袋ぐい呑みは、そんな山中塗の漆器としての姿を敢えて隠し、金箔を前面に打ち出しています。もともと木器の造形技術にも優れているため、加工が難しい布袋ぐい呑みという形で山中塗らしさを見せているのも特徴です。とにかく金の輝きが光る逸品で、一味違った酒器を求めている方にもおすすめできます。
九谷焼の徳利と盃
九谷焼のやたらかっこいい冷酒盃とふぐの徳利!! pic.twitter.com/WqpP9dZRYM
— のみー (@swallow_sought) October 24, 2021
石川を代表する焼き物の酒器
金沢を中心として製造され、華やかな風合いを持つ焼き物が九谷焼です。五彩手(通称九谷五彩)という色鮮やかな上絵付けが特徴で、名物の金箔から華やかなイメージを持つ金沢らしい焼き物でもあります。
加賀藩の支藩(大きな藩から枝分かれした藩)である大聖寺藩で有田焼の職人を招いて、加賀の良質な原料を用いて焼き始められた歴史を持ちます。藩の財政を支える重要な産業として保護されたものの、一時期不振によって衰えを見せました。しかし、江戸中期に京都から職人を招いて再興したうえ、本家の加賀藩からも保護されるようになりました。明治時代になっても失業士族の授産施設の技術の中に九谷焼が加えられ、多くの陶芸家を生み出しました。
金沢箔 ガラス酒器揃え
ガラス器の透明感と金箔の輝き
金沢には金箔を製造する職人が多くいます。その金箔を製造する職人集団は、金箔だけでなく様々な工芸品や製品とのタイアップを行い、新たな価値を創出してもいるのです。
そんな試みの一つとして生み出されたのがこの酒器揃えで、酒差しとぐい呑みのセットをガラス器で製造し、その中に金沢の金箔を散りばめた美しい酒器に仕上げられています。氷結酒器揃えという名前のようにまるで氷の中に金が散りばめられたようなこの酒器は、冷酒を更に涼やかなものにしてくれるでしょう。
金箔 冷酒グラス
グラスに金箔を貼り付けた酒器
このグラスは金箔を貼り付けられています。この接着技術に用いられたのが山中塗でこの漆の技術によって金箔を接着し、金の美しさをダイレクトに感じられるようにしています。
漆と金箔という石川の技術のコラボレーションを感じることができる酒器でもあります。
HANASAKAの猪口
絵付けを排した九谷焼酒器
九谷焼といえば、華やかな絵付けが特徴です。その特徴を敢えてなくし、無地の九谷焼に仕上げるという動きが起こっています。
その動きの中心にあるのがこのHANASAKA、モダンなデザインのお猪口で九谷焼の知られざる魅力である生地の美しさを主張しています。現代の生活に調和する粋をコンセプトに、シンプルかつモダンなデザインでインテリアの邪魔をすることなく、お酒の席を演出してくれるでしょう。
欅(けやき)の酒器
木目を生かしたグラス
白山の森林には欅が植林されています。この欅の質感を生かして様々な木器が生み出されているのも石川の特徴といえるでしょう。
欅の酒器は、漆器でありながら木目を生かすために拭き漆という技法を使って自然な感覚をより際立たせています。もともと木は熱伝導率が低いため、氷を入れても器の外側に結露しにくいことから実用性も高いのも注目すべきポイントと言えます。白山の自然を感じながらウィスキーや日本酒を頂いてみましょう。
まとめ
石川は工芸品が多く数多くの酒器を生み出してもいます。今回紹介した酒器は、そのごく一部でです。これら以外にも探すことで非常に多くの酒器に巡り合うことができるでしょう。
それだけではなく、九谷焼など伝統工芸品と言われる工芸品の中にも今回紹介した絵付けをシンプルなものにしたり、絵付け自体をなくすといった新しいムーブメントが起こりつつあります。こういった工芸品の次なるステージを知りながら酒器を探してみてはいかがでしょうか。きっと加賀100万石の実力を存分に感じることができるでしょう。