日本の南西端に位置し、亜熱帯海洋性気候の温暖なエリアとして大小160の島から構成されるのが沖縄です。東シナ海と太平洋に挟まれているこの土地は、実に東西1,000㎞にも及ぶ広大な地域には、それぞれの島に様々な文化が根付いています。沖縄伝統の料理やアメリカの食文化が流れ込んだ欧米風の料理にも感じることができます。
そんな沖縄の酒器について見ていきましょう。きっと南国情緒あふれ東南アジアとのつながりも深い沖縄の文化が息づいた酒器に出会えるでしょう。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
獅子一口カラカラ
うちにもシーサーが来ました
獅子一口カラカラ泡盛で乾杯🍻お疲れ様です pic.twitter.com/60PD3hDPAH
— つりあかり (@n3_aka_ta15) June 15, 2022
シーサーの技法を凝らした泡盛の専用酒器
沖縄の焼き物で連想されるのがシーサーです。このシーサーを手掛ける窯の一つが、この酒器を製造した中城窯、中頭郡中城村に拠点を構え、沖縄の伝統的な焼き物を現在も数多く製造しています。そんなシーサーの技法を生かして沖縄の伝統的な酒器であるカラカラに応用したのがこの酒器です。全く同じシーサーのデザインではなく、どこか海外のライオンをイメージさせるデザインを頂点にあしらっています。
急須のようなデザインの泡盛専用徳利である、カラカラとして実用面も意識した厚手の製品に仕上げてあるのが特徴です。すぐに洗って使えるようにお猪口もセットにしてあり、沖縄の泡盛が手に入ったらすぐにでも使いたくなるような酒器セットになっているのも嬉しいポイントと言えるでしょう。中国を思わせる唐草模様も絵付けされた沖縄らしい酒器です。
抱瓶(だちびん)
【抱瓶(だちびん)】沖縄で用いられる携帯用の酒瓶。陶製で、ひもで肩からつり、腰にフィットするように断面が三日月形になっています。昔、沖縄の農夫たちはこれに泡盛を入れて農作業に出かけたと言います pic.twitter.com/8WE88qaNmK
— 酒と肴の雑学 (@sake2sakana) December 2, 2021
沖縄式のスキットル
酒器の一つにスキットルと呼ばれるものがあります。主にウィスキーなどを入れる携帯用の小型の水筒のことを言うこの酒器と今回紹介する抱瓶は似た点が多くあるのです。
抱瓶は、泡盛を入れ肩につるして使用する携帯用の水筒を言い表面が曲線を帯びた三日月のようなカーブの形をしています。持ち運びしやすく、外出先でも泡盛が楽しめるというユニークな酒器です。もちろん家で飲む場合の保管の瓶としても機能し両面において機能を持つこの酒器は世界でも珍しいとされています。
1合程度入るので、晩酌に使うにはちょうど良く、思い切って沖縄式のスキットルとしてウィスキーを入れても良いかもしれません。
壺屋焼
📝泡盛勉強中〜2②
壺屋焼は
カラカラ〜など泡盛酒器として使われていて素敵ですよね
壺屋焼、三線など沖縄県内の国の伝統的工芸品は16品ありますよ。#泡盛#三線#壺屋焼#国の伝統的工芸品 pic.twitter.com/tfYfmNVOmT— 三線組合公式ツイッター (@11sanshin) November 7, 2021
伝統技法で作ったカラカラ
壺屋焼は、那覇市の壺屋地区や読谷村で焼かれている焼き物です。登り窯を基本としつつ、灯油やガスといった火力を使って現代的な技術を利用した焼き物でもあります。
その歴史は長く、先史時代の土器からも現代の壺屋焼の技術の源流をうかがい知ることができるとされています。そんな壺屋焼ですが、古くから沖縄の日用品を焼いてきた歴史があり、現地でも非常に生活に密着した焼き物の1つです。現在の形に近づいたのは日本の江戸時代、同地を治める尚貞王が陶工の整理を行い、新しい窯である壺屋を創立させました。その際に献上品としても利用できるよう、質の高さに磨きをかけ、日用品から贈答品まで幅広い製品を生み出すことに成功したのです。
その風合いは、本土でもみられにくいものであり、ベトナムの技法を伝えるアラヤチ、朝鮮陶工らによって始められた絵付陶器をルーツ荷物ジョウヤチに分けられます。エキゾチックな異国船や異国人を描いたものもあり、異国人を描いたものはエジプト紋と呼ばれ独特な風合いを持ってもいます。
琉球グラスのお猪口
沖縄の海のような美しさを感じさせるお猪口
沖縄には琉球ガラスと呼ばれる工芸品があります。一見伝統的な技法を多用した古い工芸品のような印象があるこのガラス、実は戦後に生まれた工芸品なのです。太平洋戦争が終わり、アメリカ軍が沖縄を占領していたころ、アメリカ軍の兵士が大量のコーラやビールの瓶を出していました。その様子に注目したガラス職人が空き瓶を溶かして再利用したことからこの技法が本格化したとされています。
源流は明治時代アジアとの貿易によってガラスの製造技術の基礎がもたらされ、本土にもその技法が伝わっていった経緯もあり、完全に戦後の工芸品というわけではありませんが、本格化したのがそういったきっかけであるとされています。
現在は、その技法に加えて厚手の赤色や緑色などの多彩な色合いやカラーの力強さが特徴のガラス工芸品として製造されています。特に今回紹介する沖縄の美しい海を思い起こさせるようなブルーの色映えは素晴らしく、多くの青色の製品が生み出されているのです。この美しいブルーの琉球ガラスでお猪口を作ったのがこの酒器です。泡盛はもちろん日本酒でも焼酎でも、注げばきっとさわやかな雰囲気をお酒の席にもたらしてくれるでしょう。
沖縄のチブグァー
カラカラのお酒を受けるお猪口
チブグァーは泡盛用のお猪口です。そう聞くとあまり個性のない、何の変哲のない酒器のように思われますが、実はおそらく世界一小さい盃といえるコンパクトなお猪口です。
最小のものでは口径が2㎝程度しかなく、3~5㏄程度しか入らないとても小さな酒器です。泡盛自体40度を超えるものもあり、アルコール度数が高いため、日本酒のようなお猪口では飲めないという背景があったのもこの独特なお猪口が生まれた理由かもしれません。まるでウィスキーやテキーラのショットグラスを連想させる小さな酒器、集めるだけでも楽しめるコレクション性の高い酒器でもあります。
つぼや工藝店のゴブレット
壺屋焼の万能酒器
つぼや工藝店は壺屋焼を伝える那覇市の工芸店です。一人の陶工が淡々と現在も壺屋焼を作り続け、独創性を意識した作陶を行っていることでも知られています。それでいて壺屋焼の伝統を感じさせる技法を多用してもいます。
この酒器は、焼酎はもちろん、カクテルや洋酒、ビールなどにも使えるゴブレットを壺屋焼で作り上げています。気軽に沖縄の酒器を手元のお酒で楽しみたい時も便利な酒器と言えるでしょう。
つぼや工藝店|沖縄焼物ふるさと壺屋 壺屋やちむん通り
読谷山焼のお猪口
壺屋焼から派生した焼き物壺屋焼は那覇市の壺屋地区の他にも読谷村でも焼かれています。その壺屋焼のうち、読谷村で焼かれているのが読谷山焼です。
もともと壺屋焼を手掛けていた陶工らが1992年に改めて立ち上げた焼き物であり、素朴で温かみを感じさせる風合いが特徴といえます。ひとつひとつ違った絵付けや焼き加減によって風合いも同じものがひとつもありません。ハンドメイドな印象を強く与えてくれる焼き物です。
そんな読谷山焼をお猪口にしたのがこの酒器です。素朴な風合いに鮮やかな絵付けが入ったお猪口は、普段使いでも落ち着きを与えてくれる酒器に仕上がっています。晩酌のお共に気軽に使えるお猪口と言えるでしょう。
琉球ガラスのコバルト徳利
日本酒で沖縄を感じさせる酒器琉球ガラスの美しいブルー、その技法を用いた酒器は沖縄のお酒に対応させたものだけではありません。琉球ガラスのすばらしさを全国に知って貰うべく日本酒の徳利を作ったものも存在します。
非常に深く鮮やかなブルーの徳利は、日本酒を入れれば沖縄の美しい海の水を閉じ込めたような印象を与えてくれます。そんな深いブルーをで日本酒を楽しめば、どこか沖縄にいるような感覚になるはずです。
まとめ
沖縄は様々な食文化をはじめ、泡盛など本土ではみられないお酒もあります。このような背景から酒器も工夫がされ、カラカラなどユニークな酒器も生み出されてきました。また沖縄の美しい海を連想させる琉球ガラスなども多く生み出されています。
いずれも魅力的なものであり、泡盛を本格的に楽しみたいときに使いたいカラカラやビール、焼酎、チューハイやハイボールといったお酒を注げば色合いが美しく映える琉球ガラスの酒器などもあります。そんな沖縄の酒器を食卓に並べれば、晩酌も華やかで彩あるものになるでしょう。