日本酒なら兵庫や京都あるいは新潟などが有名で、ワインであれば山梨、ウイスキーなら北海道などが知られています。しかし、日本の首都である東京にも多くの地酒やクラフトビールなどを醸造する場所があります。さらに日本を代表する工業地帯を擁していることや江戸時代から続く様々な工芸品の存在も忘れてはいけません。
東京のお酒はもちろん日本中のお酒を注ぐための酒器が東京には数多くあるのです。

※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
目次
江戸切子の酒器セット
職人の技術が光る切子酒器
江戸切子は江戸時代末期から東京で作られているガラス細工です。透明な鉛ガラスに切子細工を施していき、複雑な模様を生み出しています。同時期の開発された薩摩切子の技術も導入し、明治以降も発展を続けていきました。さらに海外の技術導入も積極的に行い、近代的なガラス細工へと変貌していった歴史を持ちます。
和の模様を積極的に導入しているのも特徴です。矢来・菊・麻の葉模様など着物にも見られる模様が施されているのも日本の工芸品らしい点として挙げられます。薩摩切子は一時技術の断絶があったのに対し、二つの大戦と関東大震災を乗り越えて、江戸の技術が現在も伝わっています。
この酒器は、魅力的な特徴を持つ江戸切子とぐい呑みのセットです。
いずれも美しい青い被せガラスに美しい切子の模様が入っています。系譜が確かな職人の手によって作られ国産の材料で作ったというこだわりの酒器といえるでしょう。
東京銀器のぐい呑
東京で生み出された銀の加工技術
東京銀器とは、江戸時代中期に生まれた銀の加工技術によって作られた金属工芸品です。1979年に国の伝統的工芸品に指定された製品で、江戸中期に生まれた長い歴史を持ってもいます。
もともと、くしやかんざし、みこしの金具を作るための技術として生まれました。銀のインゴットの溶解からスタートし、延べ板にした後にハンマーで鍛金します。そこから絞りや彫金によって銀器に仕上げていくのが特徴です。その後の仕上げを施して美しい銀の輝きを出していく様は、圧巻といえるでしょう。
このぐい呑も同様に、伝統的な技法「金古美」によって表面は非常に細かな彫金が施され内面は研磨されています。江戸職人の技を感じながらおいしいお酒をいただきましょう。
江戸硝子のタンブラー
江戸切子の流れをくむ技術
江戸硝子は、江戸時代からのガラス加工技術です。江戸切子の流れを汲んでいるガラスの技術でもあります。東京都の伝統工芸品の指定を受けた窯元で作られたガラス器のみ名乗れるのが特徴で、その名称を用いられるのはごく一部の窯元です。
実は、江戸時代は重要なリサイクル技術として注目されていた歴史があります。江戸の町内で損したガラスを回収し、溶解して作り直していたのです。そのため、豪華なガラス器というよりも様々なガラスから生み出された日常的で温かみのある作風が特徴となっていきました。
このグラスは、江戸硝子の技術で非常に薄い飲み口に加工されており、底面には江戸切子のような切子の模様があしらわれています。
一見透明なグラスですが、寒色の風合いを持つものや暖色系のもの、そして透明性を高めたものなどがあります。自分の好みの透明感で選んでみるのもおすすめです。
大正浪漫硝子のタンブラー
大正のモダンさが漂う和硝子の酒器
東京のガラス器は江戸切子から始まり、東京硝子といった技術の派生を経て大正時代に突入していきました。その際に一世を風靡したのが乳白硝子の技術です。
この技術はガラスの模様に乳白色の模様を加えることで独特の風合いを持たせることに成功しました。昭和に入ってこの技術が一度断絶してしまったものの、墨田区の職人が復刻し、製品として再び日の目を見ることができるようになったのです。
このタンブラーは、乳白硝子の技術で美しい模様を加えたのが特徴です。焼酎はもちろん、ビールやウィスキーなど何を注いでもその美しさは引き立ちます。大正ロマンを感じながらお酒を頂いてみるのも良いかもしれません。
多摩森林のヒノキコースター
多摩の森林の間伐材で作ったエコなコースター
東京というと23区の都会的なイメージを持っている方も多いはずです。しかし、東京の西部に広がる多摩地域は豊かな自然に恵まれた山間部として知られています。
この多摩地域に広がる多摩森林は、森林資源の管理が行われ、定期的に間伐材が産出されます。
そして間伐材を有効利用すべく生み出されたのがヒノキコースターです。
単に間伐材をシンプルにコースターにしたのではなく、和風の模様が加工が施された和モダンの製品に仕上げっているのが特徴。日本酒やビール、ウイスキーに、素敵な時間のお供となるでしょう。
東京職人のチタンタンブラー
チタンに彫金を施したタンブラー
東京には江戸時代から数多くの職人がいます。その多彩な職人技の一つにヘラシボリと呼ばれる技があります。これは金属の板を回転させてろくろの上で加工していく高度な技術です。その技術は現代も連綿と続いており、現在も職人が様々な金属製品をヘラシボリによって生み出しています。
このタンブラーは、ヘラシボリの技術を使ってタンブラーにした酒器です。
独特な風合いもチタンそのものを発色させているのも特徴といえるでしょう。チタンの輝きとヘラシボリの美しい模様によってお酒が進むこと間違いありません。
工房つちみのタンブラー
東京で焼かれる焼き物のタンブラー
東京には、陶磁器の技法がいくつか存在していましたが、現在ではそのほとんどが焼失しました。しかし、多くの人々が住む東京では、現在も陶工の方々が新しい陶磁器の作陶に挑戦しています。
工房つちみは東京の西部、武蔵村山市に窯を構えて作陶を行っている工房です。手がけている作家は神戸出身の方ですが、岡山や岐阜の多治見、愛知、そして沖縄で修業した実績を持っています。その全国各地で学んだ陶芸の技術を東京で表現している作家なのです。
全国の技術を生かした東京らしい焼き物で美しいブルーが印象的な焼き物に仕上がっています。そして、このタンブラーに日本酒やビールなどを注ぐことでさわやかな印象を与えます。東京発の陶磁器でお酒を楽しんでみるのも良いかもしれません。
工房つちみインスタグラム
mas/mas(マスマス)のアクリル升
実用性の高いアクリルの升
升といえば杉などの木をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし木器は繰り返し使うことでダメージを受けて劣化しやすいという一面を持っています。そんな弱点を克服したのがアクリル升です。
軽量で無色透明な特徴を持っているだけでなく、割れにくいため連用にも耐えられます。また、このアクリル升は実用性を意識し、一般的なアクリル升よりも薄く作ることで、升酒の飲みやすい酒器として加工しました。
桜など職人が一つ一つ手作業で彫刻を施しているのも魅力です。アクリルの升にお酒を注いで新しいスタイルの升酒を楽しむのもおすすめです。
ホーローのグラス
東京のデザイナーと企業が生み出したホーロー製の酒器
酒器と言うとガラスや陶器をイメージします。しかし、この酒器はホーローで製作された酒器です。透明感のある白が美しく魅力的な外見をしているグラスであり、どのようなお酒にも合います。
もともとホーローは金属に陶器の釉薬をかけて焼成することによって生み出された製品です。そのため、どこか陶器のような風合いも残しつつ、金属器の性質を持っているといえるでしょう。さらに釉薬を工夫すればガラスのような質感を与えることもできます。つまり、金属、陶器、そしてガラス器の3つの特徴を持っているといえるのです。
加えてこの酒器は日本伝統の漆を使った加工である金継ぎの技術を用いてホーローの焼成跡をきれいにしています。
最後にデザイナーは現代デザインを手掛ける小泉氏です。小泉氏は東京でデザイン事務所を構えつつ、都内の美大で教鞭をふるっている専門家。ホーロー技術に和の技術を加え、さらに現代的なデザインを与えた、この酒器でお酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
東京は、江戸時代から続く多くの職人技が今も息づく地域です。焼き物こそ、ほとんどが断絶してしまったものの、金属加工の技術や江戸切子から派生した様々なガラス器が気軽に楽しめます。
一見、新しい技術に注目されがちな東京ですが、今回紹介してきた酒器のように工芸品の技術も息づいています。もし、興味があれば東京から生み出された数々の魅力的な酒器を手に取ってお酒を頂いてみてはいかがでしょうか。きっと東京のもう一つの顔をうかがい知ることができるでしょう。