日本最大の半島と言われる紀伊半島、その紀伊半島の南西に位置する和歌山、このエリアは温暖な気候に育まれ、南国のような雰囲気を持っています。また、高野山や熊野那智大社、熊野速玉大社など新興の篤い地方でもあります。
農作物の生産も盛んで温州ミカンの生産は日本一、ほかにも八朔やオレンジ、夏ミカンの生産も盛んなかんきつ王国です。そして忘れてはいけないのは南高梅、梅干しの生産は全国トップクラスを誇ります。梅と言えば梅酒、おつまみとお酒のイメージも強いのが特徴です。

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那智黒釉のぐいのみ
深い黒が魅力的な酒器
那智と黒というのは深い関係があります。那智黒と呼ばれる碁石の黒は、碁石の一大ブランドであり、高級品の代名詞です。そんな那智と黒の関係は、それだけではありません。釉薬を工夫した那智黒釉という焼き物もあります。
もともと那智黒とは和歌山の那智の地域で産出される黒い石のことです。この石を生成して釉薬に加工したものを使ったのがこの那智黒釉です。マット調の淡いブラックの色合いが特徴で、全国トップ10に入る和歌山のゆずのように滑りにくいしっとりとした馴染みやすい質感を持っています。さらにこの酒器は使えば使うほど角が取れて味わいを増すことでも知られ、晩酌で頻繁に使うほどその魅力は増していく酒器でもあります。
もともと茶器などで使われる高品位の焼き物を酒器にしているのでどんな場面でもよく合う酒器と言えるでしょう。晩酌に、ハレの日に、友人との飲み席に、どのような場面でも横にいてくれる頼もしさも魅力です。
紀州漆器の屠蘇器
華やかな雰囲気を持つカップ
和歌山には紀州漆器と呼ばれる伝統工芸品があります。会津塗や輪島塗(山中漆器)などと共に日本を代表する漆器として知られています。
主に和歌山県北部の海南市で作られるこの漆器は、室町時代に近江周辺からやってきた木工職人たちが作り始めたとされる歴史の長い工芸品です。江戸時代には紀州藩の保護もあり、たくさんの紀州漆器が生み出され、全国に出荷、さらに蒔絵の技法も他県から導入し技術に磨きをかけていきました。戦後はプラスチック容器に塗装を開始するなど、他の漆器産地では行われなかった斬新な技法も生み出し現在に至ります。
紀州塗の枡
シンプルながら美しい枡紀州塗は、古くから様々な酒器を生み出してきました。当然、古来から酒器として用いられてきた枡も例外ではありません。枡の美しくシンプルな造形にスタンダードな黒漆の外見と朱色に塗り重ねた内部のコントラストはお互いに色を引き締めあっています。
そんな紀州塗の枡は、様々な場面、特にハレの日の場面で活躍します。結婚式はもちろんのこと、新築祝いに、お祭り、誕生日、それに就職祝いにもその雰囲気を演出してくれます。もちろん自分がめでたいと思ったときにいつでも気軽に使える丈夫な枡です。
PERLA(ぺルラ)のワイングラス
伝統工芸のDNAを持つモダンなデザイン
ぺルラと聞いて、和歌山を連想するのは難しいかもしれません。しかし、このブランドはデザイナーと紀州塗りの作家とのコラボプロジェクトとして生み出された伝統工芸の流れを持ったれっきとした和歌山のブランドです。もちろん紀州塗と言っても、単に伝統の紀州塗りのみを学んだ作家ではなく、中東や欧米を見分して国際的な感覚を持った作家のため、従来の紀州塗とは一線を画しています。
このワイングラスもそのプロジェクトから生み出された酒器で、一見紀州塗はどこか分からない印象を受けます。しかし、足の部分を見るとワイングラスに淡い美しい色合いを見つけることができるでしょう。これが紀州塗のカラーを生かした部分なのです。
一見紀州塗を感じさせない酒器ですが、実は紀州塗のDNAを持っている、そんな酒器でワインを飲めば、意外な発見で話も弾むことでしょう。
紀州塗のコースター
紀州塗は、様々な酒器が生み出されています。そのジャンルは広くこのコースターもその一つです。紀州塗の元々の製品にお盆があり、このお盆の技術をコースターに応用したモダンな製品に仕上げてあるのが特徴といえます。
コースターというと消耗品のようなイメージがありますが、この紀州塗で仕上げたコースターは重ね塗りした漆によって高い耐久性や耐水性を持ちます。どんなお酒のグラスとも相性が良く場面も選ばないので、どんどん使える便利なコースターです。
紀州塗の屠蘇器
ハレの日に使いたい酒器
屠蘇器というと、高価でそれでいて木器のために耐久性も気になるものです。久しぶりに出してみたら割れていたというのでは、せっかくのハレの日が台無しになるでしょう。そんなトラブルを起こしにくいのがこの紀州塗の屠蘇器です。
もともと70年以上前から樹脂にも漆を塗るという当時としては斬新な技法を現代にも使用し、樹脂製の屠蘇器に紀州塗を施すことで強度と美しさを両立し、屠蘇器としては安価な金額で提供できる製品に仕上げられています。改まった場面で久しぶりに利用しても破損のない酒器と言えるのがこの屠蘇器です。
紀州梅を使ったビアカップ
紀州梅を原料にしたユニークな陶器の酒器
和歌山の代名詞と言えば紀州梅です。この紀州梅を漬けた梅酢や梅の木の灰を使って焼き上げたビアカップになります。
もともと焼き物は灰をかぶったり、釉薬を塗ることで防水性や美しい色合いを出すことができます。これらの材料に和歌山名産の梅を利用することで和歌山らしさを出しているのが特徴と言えるでしょう。じっと眺めているとほのかに梅を感じさせる風合いがあるこの酒器でクラフトビールを注いでゆっくりと和歌山の海の幸や山の幸を頂くのもおすすめです。
根来塗の片口
紀州塗の流れを持つ伝統的な酒器
和歌山の漆器というと紀州塗をイメージしますが、近隣には根来塗と言われる漆器もあります。こちらは近江の流れを組む紀州塗りとは対照的に根来寺と言われるお寺で自らが日用品として使う漆器として生み出された歴史を持っています。黒漆だけで仕上げた黒根来やわざと完全に塗った朱色の漆器に磨きをかけて地の黒漆を出す技法などが特徴です。
この酒器は、伝統的な片口を気軽に使えるように小型にしたものであり実用重視の根来塗らしい酒器に仕上げてあります。晩酌など日用品として使える酒器として利用してみるのもおすすめです。
まとめ
和歌山は紀伊山地を中心として豊かな森林資源があります。そういった背景から木器、ひいては漆器が盛んに作られ酒器も多くの漆器が存在します。今回紹介しませんでしたが、桐ダンスでも有名な場所であり桐を用いたグラスなども製造されています。
このように豊かな和歌山の森を感じながらお酒を楽しむのも良いのではないでしょうか。もちろんモダンなワイングラスで和歌山らしさを感じたり梅の木の原料を使った焼き物の酒器を使ったりと選択肢の多いのも和歌山の魅力です。