「天吹(あまぶき)」という銘柄の日本酒をご存知でしょうか。この銘柄は、なんと創業から300年以上の歴史を持つという蔵元が造り出した、伝統技術と自然由来の魅力がたっぷり詰まったお酒です。
花酵母とよばれる酵母を使っている珍しいお酒は、日本酒ファンにはたまらない味わいです。この記事では、そんな天吹の魅力を詳しくお伝えしていきます。
※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール
製造元は「天吹酒造」
天吹を作っているのは、佐賀県にある天吹酒造という名の蔵元です。蔵の北東には天吹山があり、この山から天吹という名がつけられたそうです。
創業は古く、1688年までさかのぼります。長い歴史の中で伝統技術を磨きながら、パソコンを使用した徹底的な温度管理など現代の技術も取り入れて成長をし続ける蔵元です。その蔵は国の有形文化財に登録されるほどで、中へはいると仕込みタンクが30本ほど並んでいる大きな酒造であることがわかります。精米なども自家製で行っており、整った環境下で“真摯なお酒作り”を行っているのが見て分かります。
天吹酒造行ってまいりました!!! pic.twitter.com/UgRhnLVPPt
— 深海 (@syokunotankyuu) February 1, 2020
ちなみに天吹酒造の蔵人たちは、全員が社員だそうです。特定の季節に酒造りを行う蔵では季節雇用が多い中、これは珍しいことです。蔵人たちはピーク時に酒造りをするのはもちろんですが、酒造りの行われない夏などには試飲会やイベントでお酒の良さを伝えるなど、つねに努力を惜しみません。
こうした取り組みにより、もともと佐賀で愛されていた天吹は、近年で急激に全国区のお酒となっていきました。

天吹の味わいの秘密
天吹酒造の酒造りには佐賀平野で収穫される酒米を使用しています。この酒米は、農薬や除草剤、そして化学肥料を一切使わないで作られた良質なお米です。またそれにあわせて、まろやかなことで知られる背振山系の伏流水を使用しています。
花酵母を使用することで、個性豊かな味わいが表現されているのが天吹の魅力です。フルーティーかつキレのあるものや、お燗にすることで香りが引き立つものなど、その種類はさまざまです。
花酵母について
さてここからは、上記でご紹介した「花酵母」についてさらに詳しく説明していきましょう。
この花酵母は、東京農大醸造学科の中田久保氏によって発見されたものです。自然界に存在する花から分離された清酒酵母で、最初はナデシコ酵母からはじまり現在までに40種類ほど発見されてきました。このうち、実際のお酒造りに使われているものは16種類あります。
ひとことで花酵母といってもさまざまなものがあるため、実用化まではたいへん時間がかかったそうです。天吹酒造ではその味を日本酒で上手く引き出すまでに、なんと10年もの月日が費やされています。初めは新しいチャレンジとして周りから色モノ扱いなどもされたそうですが、出来上がったお酒は他にない個性的な味わいと上品な高い香りで多くのファンを生み出すことになりました。
なお、花酵母は種類によって大きく味わいが違います。天吹ではいろいろな種類の花酵母を取り入れており、商品によって全く異なる表情を見せています。
天吹のシリーズ紹介
さてここからは、天吹のシリーズについてご紹介していきます。シリーズは沢山ありますので全てご紹介は出来ませんが、特におすすめなものを5つピックアップしていますので是非チェックしてみてください。
天吹 純米大吟醸 りんご酵母
- 種類:純米大吟醸
- 原料米:夢しずく
- 精米歩合:50%
- 使用酵母:りんご
- メーカー価格:720ml 1,500円(税抜)
天吹 純米大吟醸 中汲み
天吹 純米大吟醸 愛山 中汲み。口当たりの柔らかさが異常。さすが隠し酒。 pic.twitter.com/udbH8fx1Lk
— TooToo (@too_t_s) December 15, 2017
天吹のなかでも高級なボトルとして知られているのがこちらの純米大吟醸 中汲みです。アベリア酵母を使用しており、華やかな香りと優雅さを感じることができます。
お酒を搾る過程で良い部分といわれる中汲み部分だけを瓶に詰めており、まさに贅沢な1本と言えるでしょう。特別な日を演出してくれるような、素晴らしいお酒です。冷酒~常温で、香りをしっかりと感じながらゆっくり飲んでみてください。
- 種類:純米大吟醸
- 原料米:愛山
- 精米歩合:40%
- 使用酵母:アベリア
- メーカー価格:720ml 5,000円(税抜)
天吹 純米吟醸 雄町 生
天吹は酵母だけでなく、使用する酒米にもしっかりとこだわっています。こちらはファンの多い酒造好適米のひとつである、雄町を使って造られたお酒です。酵母にはナデシコ酵母を使用しており、雄町の深い味も相まって上品な香りの中に広がるふくよかな味わいがポイントです。火入れをせず生のまま瓶詰めしているため、味わいの複雑さや奥行きも楽しめます。ぜひ冷やして飲んでみてください。- 種類:純米吟醸
- 原料米:雄町
- 精米歩合:55%
- 使用酵母:なでしこ
- メーカー価格:720ml 1,600円(税抜)
天吹 超辛口 特別純米 火入れ
- 種類:純米酒
- 原料米:山田錦
- 精米歩合:60%
- 使用酵母:ベゴニア
- メーカー価格:720ml 1,300円(税抜)
天吹 純米大吟醸 金色
色シリーズはどれも飲んだ時に感じられるみずみずしさが特徴です。蔵内で低温熟成されたこのシリーズは、香り高く華やかな香りを纏っています。後に来るのは程よい酸味と上品な旨味で、全体的なまとまりも感じられるでしょう。飲む際には、香りをしっかりと楽しめる冷酒~常温がおすすめです。
- 種類:純米大吟醸
- 原料米:山田錦
- 精米歩合:50%
- 使用酵母:アベリア
- メーカー価格:720ml 1600円(税抜)
おすすめの飲み方
日本酒にはさまざまな飲み方があるのをご存じでしょうか。たとえば冷やと呼ばれる飲み方がありますが、これは20~25℃ほどの常温のことです。口に含んだ時にやや冷たさを感じることからこう呼ばれており、熟成されたお酒や香り高い純米酒など日本酒そのものの味を楽しみたいときにおすすめの飲み方です。
5~15℃程度の、温度が低い冷やしたお酒は冷酒と呼ばれます。冷やすことでよりシャープさが増すので、軽快な飲み口のお酒や香り高い大吟醸酒などを飲むのに適しています。
天吹はシリーズによって適した飲み方が異なります。どちらかというと花酵母由来の香り高い吟醸酒が多いため、迷った方はまず冷やで飲んでみるのがいいでしょう。
また温度以外にも使う「酒器」を変えることで、飲み方のバリエーションは広がります。日本酒=お猪口やグラスというイメージを持たれている方も多いですが、近年ではワイングラスで日本酒を飲む方も増えています。香り高くジューシーな天吹は、まさにワイングラスで飲むのにピッタリです。いつもと気分を変えてみたい方はぜひ試してみてください。
佐賀から全国に広がる「天吹」を飲んでみよう!
佐賀から全国区で愛されている天吹は、めずらしい花酵母を使ったお酒です。他に無い個性的な味わいで、一度飲んでみるとやみつきになる方も多いそうです。日本酒好きの方やいろいろなアルコールにチャレンジしたい方は、ぜひ飲んでみてくださいね。