楯野川

楯野川(山形の日本酒)精米歩合1%四合瓶で10万円の光明の挑戦

日本酒の醸造には「米を磨く」という工程があります。平たく言えば、米を削る作業のことです。どれくらい「磨いた」のかを表す指標を精米歩合といい、精米歩合が60%と表記されていればお米の40%を削り取ったということです。一般的なお酒では3割から4割、大吟醸酒になると6割以上の部分を削りとってしまいます。しかし、精米歩合を高めることは簡単ではありません。そこには技術が必要になります。

日本酒、気になる事調べものライターdencross
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精米歩合1%というお酒が存在します。お米の99%の部分を糠として取り除き、米の中心1%で醸造したお酒です。醸造したのは山形県の庄内地方にある楯の川酒造。どんなお酒なのでしょうか。

※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
 

楯の川酒造の歴史

楯の川酒造は、鳥海山の麓に広がる庄内平野の港町で知られる酒田市にあります。酒田市は関西と蝦夷地や東北各地を結ぶ北前船の寄港地として「西の堺、東の酒田」と称されるほど栄えました。また、庄内平野は米作りも盛んで、良質の鳥海山の伏流水と相まって酒造りも発展しました。
鳥海山
天保3年(1832年)創業庄内酒田を訪れた上杉藩の家臣が、当地の水質の良さに驚き、初代平四郎に酒造りを薦めに応じ、酒母製造業を興したことに始まります。酒母というのは酒造りに欠かせない酵母のこと。「酛」ともいいます。
安政元年(1854年)に本格的に酒造を開始しました。以来、良質の米と清冽な鳥海山の伏流水を利用して、当地において「楯野川」を脈々と醸造してきました。昭和37年に法人化し、楯の川酒造株式会社を設立、現在では日本酒以外にも山形のフルーツを使用したリキュールやマッコリ、焼酎の製造まで手掛けています。
酒名の「楯野川」は安政2年(1855年)、第9代庄内藩主酒井忠発が当家に訪れた際にお酒を献上したところ、大変喜ばれ酒名を「楯野川」と命名したとのこと。酒名は「楯野川」ですが、酒蔵は「楯の川」と表記がことなっている点は命名のエピソードと相まって、なかなか興味深いところです。
 

全量純米大吟醸醸造

日本酒
創業より180年、楯の川酒造は現在さまざまなお酒を製造していますが、日本酒に関しては全量を純米大吟醸のみを醸造しています。全量純米という酒蔵は結構ありますが、全量純米大吟醸というのはあまり聞いたことがありません。これは、現在の当主6代目佐藤淳平社長の目指す、少量高品質の酒造りへの想いの表れといえましょう。
楯の川酒造の日本酒醸造はオーソドックスな酒造りを行っています。しかし、その一つ一つの工程をしっかりと丁寧に、手間ひまと時間をかけて作業しています。ただでさえ大吟醸酒は手間と時間が余計にかかります。全量を大吟醸で醸造するとなるとその作業量は膨大になります。そのため、小規模な酒蔵では醸造量は少なくなってしまいます。楯の川酒造の醸造量が少ないのは当然のことなのです。
もうひとつ楯の川酒造の醸造の特徴に全量無炭素濾過があります。無炭素濾過というのは、活性炭のフィルターを通さず濾過することです。素濾過ともいいます。活性炭で濾過するのは透明で雑味のないスッキリとしたお酒に仕上がるからです。しかし、微小な炭素の粒子がお酒に残留し、炭のにおいが微かにお酒に移るという短所もあるといわれています。
実際のところ、大規模な酒造メーカーから中小零細な酒蔵まで、今の日本の酒蔵が炭ににおいが移ったお酒を出荷するとは考えられません。今、無炭素濾過の酒造りを行っている酒蔵はあえて無炭素を選択していると考えられます。当然、楯の川酒造もそうでしょう。活性炭を使わなくても大丈夫という酒質への自信の表れでしょう。

 

精米歩合1%への挑戦

大吟醸酒というのは精米歩合が50%以下のお米で醸造したお酒です。楯の川酒造では、2017年7月精米歩合を7%まで高めた「楯野川 純米大吟醸 七星旗」というお酒を発売して業界を驚かせました。

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精米歩合7%のプロジェクト進行中、酒田市内の酒販店より、いっそ精米歩合1%のお酒を造っては」との提案があり挑戦を決意。プロジェクトは動きだしました。

米を1%まで精米するということは簡単に見えますが非常に難しいことなのです。まず大量の良質な酒米が必要になります。精米すると1%の量になるのです。少量醸造の楯の川酒造であっても仕込みの総米は600キロくらい必要です。単純に考えると60トンの精米に堪える良質の酒米が必要になります。
次に精米です。楯の川酒造は自家精米を行っているため精米機を自社で2台所有しています。ですが、1%まで精米するためには2か月半フル稼働させなければなりません。それも精米度合が上がるごとに繊細さは増します。ひとつひとつ障害をクリアしながら進めていきました。
つづいて、洗米と吸水という日本酒造りに大切な工程です。小さく磨かれた米の一粒一粒がうまく洗米できるか、ザルの網目をすり抜けないか、吸水はうまくいくかなどに気を付けて丁寧に仕込まれました。
こうして醸造されたお酒が「楯野川 純米大吟醸 光明」です。澄んだ酒質に上品な甘さ、米の旨味がしっかりと伝わるバランスのよい味わいのお酒になったそうです。価格は4合瓶で10万8000円。全て完売したそうです。以降、「光明」は毎年仕込まれています。高価ですが一度は味わってみたい至高のお酒といえましょう。

 

「楯野川」の味わい

「光明」のような特別なお酒は簡単に購入することはできません。ですが、「楯野川」にラインナップされている商品はたくさんあります。そしてどれもが純米大吟醸酒です。高価なものからリーズナブルなものまでいろいろと揃っています。「楯野川」のなかからいくつか紹介しましょう。

楯野川 純米大吟醸 清流

「楯野川 純米大吟醸 清流」は、楯野川「Basic(ベーシック)シリーズ」としてスタンダート商品に位置付けられる商品です。地元山形の契約農家で栽培された酒米「出羽燦々」を全量使用。50%まで磨き上げ、鳥海山の伏流水で仕込んだ一本です。アルコール度数は14度と若干低めに設定されており、軽快でさらさらと飲めるお酒です。
価格もリーズナブルというか、純米大吟醸酒の1升瓶がこの価格という驚きの価格。晩酌にもピッタリです。グラスに注いで立ち上がる香りは若い瑞々しい果実を思わせます。クリアでさらりとした飲み味ながら酒米「出羽燦々」の旨みがしっかりと、上品な甘みとあいまって遅れて立ち上がるバランスの良い酸味と調和し、後味がすっきりとしたお酒です。大吟醸だけに冷やして行きたいところですが、常温で愉しむのがスタンダート。軽く凉冷えもいいでしょう。逆に、軽く日向燗にしても上品な甘みが引き立つのではないでしょうか。
 

楯野川 Shield  惣兵衛早生

「楯野川 Shield  惣兵衛早生」は仕込みに酒米 「惣兵衛早生」を使用した稀少なお酒。惣兵衛早生」は、幻の酒米といわれている「亀の尾」の親に当たる品種で、庄内地方で古くからある品種ですが、現在では「亀の尾」以上にレアな酒米で、山形県農業総合研究センター水田農業試験場に保管されていた種より歳月をかけて増やし、復活にこぎつけました。そんなレアな「惣兵衛早生」100%使用で仕込んだ純米大吟醸酒の一本です。
開栓後、グラスに注ぐと立ち上がる上品で甘美な香りはややひかえめか。口に含むと「惣兵衛早生」由来の米の力強いうまみと甘みが口一杯に広がります。やや遅れて、酸味がスッと立ち上がりますが、そのいずれもが調和して一つに重なり合って一体となり喉奥へと消えて行きます。
「楯野川 Shield」シリーズには「亀の尾」で醸したお酒もありますが飲み比べてみるのも面白いかもしれません。
飲み方としては、やはり軽く冷やした凉冷えや花冷えで愉しむのが定番。この味わいなら食事の邪魔をせず、食材や料理をしっかりと引き立ててくれるので常温で食中酒としてもいいかもしれません。
燗酒にするのはどうかと懸念もありそうですが、軽く日向燗あたりにして、その風味を味わうのも一興かもしれません。燗酒にする場合、直火燗は避けて、湯煎でゆっくりと温めてほしいですね。
 

楯野川 純米大吟醸 極限

酒米の王様とされている山田錦が使われているお酒です。精米歩合8%は全国のどの蔵元も行っていない割合でとても特別なお酒になります。香り、繊細さ、旨味、味のふくらみ、余韻などすべてのバランスが取れているお酒を生み出したいという想いから完成したお酒になっています。
8%の精米歩合を実現するために24時間体制で14日間もかけて磨き上げられています。さらに完成したお酒を0度の氷温貯蔵で3年間熟成させ、最高の味わいになるように仕上げました。クリアな色、爽やかで鮮やかな香り、清らかな口当たり、山田錦の旨味が余韻に残るというお酒です。数量も限定されていてなかなか入手できない貴重なお酒となります。冷やして飲むと美味しいお酒です。
 

楯野川 純米大吟醸 七星旗(しちせいき)

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七星旗という銘柄の由来は、戊辰戦争において庄内藩二番大隊が掲げた軍旗とされています。この歴史を日本酒を通して伝えていきたいという想いで完成させたもので精米歩合は7%となっています。香りと旨味のバランスが取れているお酒で冷やして飲むと旨味がしっかり感じられます。贈り物にも喜ばれるお酒です。
 

楯野川 純米大吟醸 七星旗(しちせいき) 2016vintage

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純米大吟醸 七星旗のヴィンテージ酒です。柔らかな香りと旨味が楽しめるお酒です。口の中に優しい甘さが広がって余韻が残ります。冷やして飲むと美味しいお酒です。
 

楯野川 純米大吟醸 十八(じゅうはち)

冷たく冷やして飲むと美味しいお酒です。精米歩合18%のお酒で中取りの部分だけを瓶に詰めているお酒なので美味しい部分だけがぎゅっと詰まっています。香り高い味わいで宝石のような日本酒とも言われています。
 

楯野川 純米大吟醸 爽辛(そうから)

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楯野川シリーズでは初めて五百万石を使用しているお酒になります。控えめで上品な香りが楽しめるお酒でやや辛口になっています。口当たりがまろやかなので辛さを強く感じず飲みやすいです。日本酒をあまり飲まない人でも美味しくいただけると言われているお酒です。夏にぴったりの味わいなので良く冷やして飲んでください。
 

楯野川 純米大吟醸 一雫入魂(いちだにゅうこん)

普段使われることが無いという責めの部分を使用しているお酒で柔らかな味わいに仕上がっています。上品な味わいのお酒で贅沢な味わいです。冷やして飲むと美味しいお酒です。
 

純米大吟醸 三十三(さんじゅうさん)

優しく爽やかな香りのあるお酒です。柑橘系の果物のような香りが楽しめます。強い香りでは無いので飲んでいてしんどくなってしまう事がありません。残り香もすっきりとしています。
味わいは淡麗でのど越しがとても良いお酒です。優しい甘さがあり清涼感があるのでとても飲みやすいです。ワイングラスで飲んでも美味しいお酒でしょう。冷たく冷やして飲むと美味しいお酒です。
 

楯野川 純米大吟醸 無我 ブラウンボトル

6つの「無」をコンセプトとして造られているシリーズになります。ブラウンボトルは量契約栽培による減農薬・減化学肥料で栽培した美山錦を100%使用しているのが特徴です。フレッシュで新鮮なお酒でシャープな味わいですがお米の旨味もしっかりと感じられる仕上がりになっています。
 

楯野川 純米大吟醸 無我 ブラックボトル

ブラックボトルは山形県産の出羽燦々を使用して造られているお酒です。甘みと旨味が口の中に広がります。旨味と甘みのバランスが取れているお酒でしっかりした味わいになっています。
 

楯野川 純米大吟醸 無我 クリアボトル

兵庫県産の山田錦を使用して造られています。山田錦の味わいがしっかりと出ているお酒で深みのある味です。

楯野川に使われているお米について

楯の川酒造株式会社では、栽培契約を依頼している農家さんから仕入れている酒米を使用してお酒を造っています。栽培契約に取り組んでいる蔵元が少なかった時代にこの方法を取り入れていて地元の農家さんに直接依頼して小規模から栽培契約を開始していったのが始まりでした。
現在では23名の栽培契約農家さんから酒米を仕入れています。農業関係のしがらみなどもありなかなか思うように仕入れできないことなどもありましたが、多くの契約農家さんや関係者様の協力を経て美味しいお酒を造るためのお米が調達されています。
2017年からは特別栽培米以上の酒米の生産にも取り組まれており、今後もこだわりのあるお酒を生み出すためにさらに原材料を追求していかれることでしょう。自家精米も行っていて、完成させるお酒の仕上がりに合わせた精米歩合に調整されています。
 

まとめ

山形県で1832年に創業した楯の川酒造は、180年以上も酒造りを行っている老舗酒蔵になります。
日本国内だけでなく海外へも日本酒の輸出を行っている酒蔵で海外でも知名度があります。世界の有名な日本食レストランで提供してもらえるお酒となるように日々酒造りを行っている酒蔵で、他の蔵では造り出すことができないようなお酒造りをしています。特に精米歩合にこだわって酒造りをされていて、国内初のお酒も誕生しています。
さて、「楯野川」について紹介してきましたが、こちらのお酒にはまだまだいろいろなお酒がラインナップされています。また、楯の川酒造は、日本酒以外に山形のフルーツにこだわったリキュール、大吟醸酒の酒粕を利用した米焼酎、天満天神梅酒大会で大阪知事賞を受賞した大吟醸酒で漬けた梅酒なども製造しています。興味がある方はこちらも調べてみてはいかがでしょうか。特に、梅酒は至高の一本といえますよ。

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