2017年4月に国税局から発表された酒税法の改正について、みなさんはどの程度理解しているでしょうか。実は改正の第一段階が、2020年10月に適用されます。
酒税法が改正されると、お酒を購入する値段が変わるのでお財布に直接影響を与えることになります。お酒を飲む方は酒税法の改正をきちんと理解しておきましょう。以下にて詳細をまとめていますので、ぜひ参考にして下さい。
※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール
酒税法とは?
酒税法とは、国税庁の管轄にあたる法律のひとつです。9つの章から成り、酒税を賦課(ふか)したり、酒類を製造・販売する際の免許について定めたものになります。
なお酒税法では、アルコール分1%以上の飲料を「酒類」としています。
酒類に関する税金はメーカーから出荷する際に課せられます。酒類そのものの価格に含まれているため、製造社から販売店、販売店から消費者と負担が課せられ、最終的には実際にお酒を買う消費者が負担することになります。
すなわち、酒税法が改正され酒類に対する税率が変わると、お酒を買う時の値段にも影響がでるということです。
酒税のはじまり
実は今まで、酒税法はなんども改正されてきました。改正となるのは今回が初めてではありません。
酒税そのものは江戸時代からはじまっています。13世紀のはじめごろ、酒造りに必要な酒麹売業者に税金が課せられたのがはじまりだと言われています。そこから徐々に酒税は当たり前のものになっていきました。
近代的な酒税法が定められたのは明治時代に入ってからになります。1875年に始まりましたが、最初はビールなどには酒税は掛けられておらず清酒や濁酒がメインでした。
さらに明治時代のなかでは酒造業はたいへん大きな盛り上がりを見せており、政府が財源として注目したそうです。そこから急発展し、税に関する法律が整えられていきました。1890年代には国税収入の30%~40%ほどが酒税収入だったこともあるほどです。
このあと、時代の流れによって酒の種類が広まっていくと、酒税法で定められる課税対象のお酒の区分も増やされるようになりました。明治時代後期には焼酎や酒類の混ざった飲料である混成酒が、1901年にはビールへの課税がはじまります。なおこの頃には自分でお酒を作る=自家醸造が禁止されています。
近代における課税の変化
近代に入ると酒税に関する決まりはより複雑化していきました。酒の種類や階級ごとに消費量の多いものは担税力が高いとされて、負担が増えるようになりました。たとえば人気のビールやウイスキーはアルコール1度に対する税率が非常に高く、負担の大きいものとなっていました。
1980年頃から、世界との貿易がどんどん拡大していきました。そこでウイスキーは酒税が高く貿易に不利になることをEUに指摘され、ウイスキーの税率は他の種類のお酒に近いものまで引き下げられました。こうしてビールだけが他に比べて5倍程度の高い税率をかけられることになったのです。
さらに2006年には酒類の区分が「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の4種類に簡素化されました。
- 発泡性酒類:ビール、発泡酒、その他発砲性酒類
- 醸造酒類:清酒、果実酒、その他の醸造酒
- 蒸留酒類:焼酎、ブランデー、ウイスキーなど
- 混成酒類:合成清酒、みりん、リキュールなど
こうした変化の中で、酒税の高いビールに変わり人気が出たのが「第3のビール」と呼ばれるアルコール類です。サントリーの『ホップス』やサッポロビールの『ドラフトワン』といったものが家飲み市場で注目されるようになりました。
酒税法改正の対象と内容について
さてここからは、実際に2020年10月から適応される酒税法について注目してみましょう。第3のビール(新ジャンル)と呼ばれるものが発展したことにより、ビールや発泡酒、新ジャンルの税率に変化がもたらされることになっています。具体的にどう変化するのか、以下にて説明していきます。
第3のビール | 10円値上げ |
ビール | 7円値下げ |
発泡酒(麦芽比率25%以上50%未満) | 約4円値下げ |
発泡酒(25%未満) | 変化なし |
※350mlあたり
第3のビール
流行の新ジャンルは、税率が引き上げられることに決まっています。従来は350mlあたりの価格が約28円となっていましたがら2020年10月からは約38円/350mlまで増加します。安さが魅力と言われていた第3のビールですが、約10円もの値上げになってしまいますので気をつけておきましょう。ビール
第3のビールは値上げとなりましたが、一方ビールは税率がやや下げられます。77円→70円と、350mlあたり7円も値下げとなるようです。
発泡酒
麦芽比率25%以上50%未満のものは約62円→約58円とおよそ4円程度の引き下げが決まっています。
一方25%未満の発泡酒は、約47円とその金額に変化はありません。
なお上記の3種類の増減を受けて、アサヒビールやキリンビール、サッポロビールからは販売商品の価格変更が発表されています。具体的な金額は明らかにされていませんが、種類ごとに変更金額が異なるので注意しておくと良いでしょう。
日本酒やワインも対象なの?
実はビールなどの発泡性酒類以外にも、酒税が変えられるものが存在します。醸造酒類といわれるものに変化が生じますので、具体的に見ていきましょう。
日本酒 | 約10円値下げ |
ワイン | 約10円値上げ |
※1リットルあたり
日本酒
日本酒は酒類区分ではいわゆる清酒とよばれるものになります。この区分のお酒は減税になるそうで、日本酒は1リットルあたりおよそ10円さがります。ちなみに紹興酒も減税対象となっており、1リットルあたり約20円もの減税となるそうです。
ワイン
ワインは醸造酒の中でも果実酒類に分類されてます。これまで日本酒よりも税率が低かったのですが、2020年10月以降から1リットルあたり10円程度値上げされます。こちらは1リットルあたりの価格なので、一般的なワインのボトル750mlで考えるとおよそ8円の値上げとなります。
値上げまでに買いだめすべき?
上記で述べた通り、実は酒税法改正=全て値上げというわけではありません。お酒の種類によって値上げするものと値下げになるものが存在します。2020年10月の酒税法改正までに買いだめをしたいという方は、注意しておきましょう。
- 減税するもの:ビール、紹興酒、日本酒
- 増税するもの:新ジャンル(第3のビール)、ワイン、チューハイ・サワー
値上げ対象の新ジャンルやワインなどは買いだめしておくのが有効そうです。ただし減税となるビールや日本酒は買いだめしておくと損になることもあります。またこれらの減税ジャンルは、注目が集まりやすくなるため各社から新商品が出てくることもあるでしょう。ジャンルによって、前もって買うかどうかを判断し、損しないようにしてください。
2020年10月以降も今後さらに改正はあるの?
実は酒税法の改定は2020年10月のみでは終わりません。実は2023年10月、2026年10月にも酒税の増減が発生します。
基本的には2020年10月以降に増税されるものは今後の段階でも金額が増加、反対に減税されるものは金額も減らされていきます。2026年には各ジャンルの金額がまとめられ、たとえば清酒と果実酒、ビールと発泡酒などが同じ税率になるよう決められています。
まとめ
2020年10月より酒税法改正が行われます。お酒のジャンルによって価格が変わりますので、気をつけておきましょう。発泡酒や新ジャンル、ワインを楽しんでいた方は今後金額が増加していく予定ですので注意しておきましょう。反対に日本酒やビールは若干税率が下げられます。金額の変化を知り、上手にやりくりしながらお酒を楽しんでみてください。これを機に新たなお酒のジャンルに挑戦してみても面白いですね。