日本酒のラベルをよくみてみると、「生酒」と書かれたものを見かけることがあります。しかし日本酒の生酒について、なんとなく言葉を知っていても実はどんなものかよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
生酒は、なんとなく美味しそう・・・というイメージを抱いている方も多いかと思います。もちろんこれは正解で、生酒というだけあってフレッシュ感がありみずみずしいという特徴があります。
ちなみに生酒は、春から夏にかけて全国の酒造から発売されます。つまり旬の時期が限られたお酒とも言えます。

目次
生酒しぼりたてとは?通常の日本酒とどう違うの?
通常の日本酒
通常日本酒を造る過程では、「火入れ」と呼ばれる加熱処理が2回施されます。加熱は約60度ほどの温度で行われていて、殺菌をすることで日本酒の質を安定させています。
生酒
通常の日本酒に対し「生酒」とは、火入れ処理を一切していない、しぼりたてのお酒になります。火入れをしていない分、フレッシュなお酒そのものの味を堪能することができます。
ただし火入れ処理をしていないということは、その分劣化も早いということです。生酒は常温流通可能な商品であっても、賞味期限はおよそ8ヶ月程度と通常の日本酒よりも早く飲むことが想定されています。ちなみに一度開封してしまうと、酸化のスピードも早まりすぐに酸っぱくなってしまいます。そのため出荷したて、開封したての時にだけ味わえる、特別な味わいが魅力とも言えます。
生貯蔵酒との違いは?
日本酒には生酒と普通酒の他にも、「生貯蔵酒」と呼ばれるものがあります。これはお酒を絞った後に火入れせず生酒の状態で貯蔵しておき、出荷前の容器に詰める際に一度だけ加熱処理を施したものになります。
「原酒」との違いは?
「そのままのお酒」と聞くと、原酒を思い浮かべる方も多いかと思います。日本酒のラベルをみてみると、原酒と書かれたものが多く流通しています。
原酒は生酒とは違い、火入れ工程のことではなく「加水処理をしていないお酒」のことです。絞ったお酒を水で割っていないため、アルコール度も高くガツンととした味わいであることが多いです。
ちなみに火入れも加水もされていないお酒は「生原酒」と呼ばれます。日本酒好きの方はぜひチャレンジしてみてください。
春から夏が生酒のシーズン!その理由は?
日本には四季があり、シーズンによって気温が大きく異なります。そして食べ物には季節ごとに「旬」と呼ばれるシーズンのものがあります。

したがって、5月ごろになると全国各地の酒造から「生酒」が販売されます。この生酒は期間限定でしか購入できないものも多いため、まさに旬のお酒と言えるでしょう。冷やして飲むと美味しいものが多いので、暖かさが増すシーズンにうってつけです。
生酒の味わいは?
生酒は火入れ加工がなされていません。そのためとてもフレッシュでみずみずしい味わいをしているのが特徴です。さらに原料のお米の味や仕込み水の特徴をそのまま感じられるため、銘柄によって個性豊かな味わいをしています。
また火入れがなされていないことで、香り高いものが多いです。この香りが旨味や甘味となって感じられるため、非常に飲みごたえがあります。
さらに生酒は、瓶詰め後も発酵が進みます。その発酵が微炭酸となるため、口に含むと爽やかな爽快感を味わえます。決して後から炭酸を加えたような強い刺激ではなく、スパークリングワインのようなきめ細やかで口当たりの良い軽やかな刺激です。
生酒の選び方について
生酒は火入れをしていないお酒のことを指すので、その種類は銘柄やお酒の造り方によってもさまざまです。あまりに種類が多いので、どんな生酒を選んだらいいか悩むという方も多いでしょう。
ここからは生酒を選ぶ際に注目したい、3つのおすすめポイントを紹介します。生酒にチャレンジしてみたい方はぜひチェックしてください。
1.地域から探す
日本酒は全国各地で造られています。そして地域によって気候や水の特徴が異なるため、場所ごとに味わいに差があります。さらには杜氏による伝統の酒造りの手法なども、味の変化に差をもたらします。
例えば米どころとして有名な新潟県には「淡麗辛口」のお酒が多いです。日本酒の発祥地とも言われている兵庫県の灘のお酒は、男酒とも呼ばれる酸味の強い辛口のものが多いです。
生酒を選ぶ際には、このような地方のお酒の特色に注目しながら選ぶと良いでしょう。

2.特定名称酒で探す
特定名称酒とは、定められた条件で作られたお酒のことです。大きく分けて吟醸酒、純米酒、本醸造酒の3つに分かれていて、それぞれに特徴が異なります。
精米歩合の違いにも区別されます。精米歩合とは玄米から表層部を削って残った米の割合を%で表したもので、削った部分を表すのは精白率と呼びます。
吟醸酒
「吟醸酒」はよく磨いたお米を低温でゆっくりと発酵させたお酒のことで、果実のようなフレッシュで華やかな香りのものが多いのが特徴として挙げられます。精米歩合が60%以下のものが吟醸酒、さらに精米歩合が50%以下のものが大吟醸酒と呼ばれています。
純米酒
「純米酒」は醸造アルコールを使わずに、米・麹・水のみを原料として造られるお酒のことです。米本来の旨味やコクを感じやすく、濃厚さの際立つお酒です。
本醸造酒
「本醸造酒」は精米歩合が70%以下の米・米麹・水に、醸造アルコールを加えて造ったお酒になります。引き締まった味の辛口のお酒が多く、キレを感じられます。
3.甘口or辛口で探す
日本酒には「甘口」と呼ばれるものと「辛口」と呼ばれるものがあります。しかし甘口や辛口といっても、甘味料や香辛料などが加えられているわけではありません。
日本酒の甘口or辛口は、お酒の中に含まれている成分の量で決まります。糖分や酸がどのくらい含まれているかによって、日本酒の味わいが変わってきます。
日本酒の甘口または辛口を見極めるためには、まず「日本酒度」に注目しましょう。日本酒度とは日本酒の中にどれだけ糖分が含まれているのかを数値化したものになります。0を基準として、マイナスの値が大きくなるほど甘口に、プラスの値が大きくなるほど辛口の味わいになります。
目安としては下記になります
おすすめの生酒5選と発売時期
男山 純米生酒(北海道)
- お酒の種類:生酒
- 造り:特別純米
- 蔵元出荷日:2021年4月上旬ごろ
- 価格:1800ml 2,970円(税込)
多満自慢 純米吟醸 夏の生酒(東京都)
多満自慢・純米吟醸夏の生酒 開栓5日目。ごくごく安定しています。いいですねー。
これの凄いところは苦味がほぼないところですね。しっかり排除できてる。アミノ酸度高いけど、苦いアミノ酸は出ないよう努力したのかなー。やりますねぇ。 pic.twitter.com/3e2FAaZ7k2
— 神奈川建一 (@KanagawaKenichi) July 27, 2020
夏限定で販売される限定の生酒です。兵庫県産の山田錦をよく磨き上げて造られた純米吟醸のお酒で、酸味が強めの軽快な飲み口です。そのまま飲むのはもちろん、ロックやソーダ割りにして飲むのもおすすめです。
- お酒の種類:生酒
- 造り:純米吟醸
- 蔵元出荷日:2021年4月21日
- 価格:720ml 1,815円(税込)
玉乃光 純米吟醸 夏生 祝100%(京都府)
玉乃光 純米吟醸 夏生 祝100%
京都市伏見区のお酒。久しぶりの玉乃光。フレッシュ感と甘辛バランス良くて美味しいです。 pic.twitter.com/890Qi1LtZN
— だい (@daibouken0110) September 26, 2020
京都伏見で造られる夏の生酒です。京都の酒造好適米「祝」を使用していて、豊かな甘味と酸味を感じられます。濃厚さを感じられるお酒なので、しっかりと冷やして飲むとバランスが良くなります。
- お酒の種類:生酒
- 造り:純米吟醸
- 蔵元出荷日:2021年4月20日
- 価格:1800ml 3,278円(税込)
亀泉 純米吟醸生原酒 高育63号(高知県)
- お酒の種類:生原酒
- 造り:純米吟醸
- 蔵元出荷日:2021年4月14日
- 価格:1800ml 3,630円(税込)
越の誉 大吟醸生酒(新潟県)
- お酒の種類:生酒
- 造り:大吟醸
- 蔵元出荷日:2021年4月5日
- 価格:720ml 1,595円(税込)
生酒を美味しく飲む方法
生酒はここまで述べた通り、鮮度が肝心なお酒です。美味しく飲むためにはいくつか気をつけておきたいポイントがあります。
1.しっかりと冷やしておく
生酒は火入れが行われていないため、温度変化によって味が変化してしまう可能性があります。そのため入手してから飲むまでは、しっかりと冷蔵庫で冷やしておくことが大切です。自宅で冷やすのはもちろんですが、配送する場合などもクール便で送るようにしましょう。
2.開封後はできるだけ早めに飲みきる
生酒は一度開封してしまうと発酵速度が加速し、そのまま置いておくとすぐに酸っぱくなってしまいます。なので一度開封したものはできるだけすぐに飲み切ってしまいましょう。
目安としては1週間ほどで飲んでしまうのがおすすめです。一人で飲む場合や1日に飲む量が少ない方は、一升瓶ではなく720ml、300mlなど少し小さめのサイズの瓶を選んでおくのもおすすめです。
3.氷を入れたオンザロックや、ワイングラスで飲むのもおすすめ
日本酒は通常ストレートで飲むことが多いかもしれませんが、生酒は冷やして美味しいお酒です。そのため氷を入れたグラスに注ぎ、オン・ザ・ロックで楽しむという方法もあります。オン・ザ・ロックなら日本酒の刺激やアルコール感も和らぐため、日本酒をあまり飲み慣れていない方や苦手な方でもチャレンジしやすいです。
生酒にあうおつまみと料理
生酒は爽やかさの際立つお酒です。おつまみに合わせるものも、お酒の風味を損なわないようなフレッシュなものがおすすめです。
例えばよく冷えたお刺身は、生酒との相性が抜群です。そのほかバーニャカウダなどと合わせてみても良いでしょう。
また生酒の微かな発泡感は、サクサクした食感の揚げ物などとも相性が良いです。春野菜の天ぷらやフライ料理と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
生酒の保存方法
生酒を保存しておく場合は、10度以下の冷蔵保存を推奨します。直射日光や紫外線などは避け、購入後は速やかに冷蔵庫に入れましょう。瓶の口をしっかりと拭き、清潔にしておくことも大切です。
なお冷蔵庫で保存する際には、あまり香りの強いものと一緒に入れないようにしましょう。長期間強い香りのものと一緒に保管してしまうと、香りが移ってしまったり損なわれてしまう可能性があるためです。
ちなみに一度だけ火入れをしている「生貯蔵酒」も、生酒と同じく冷蔵保存をするようにしましょう。賞味期限や美味しく飲める期間は銘柄にもよりますが、長くとも製造から8〜9ヶ月以内には開封し飲んでしまいましょう。
まとめ
夏に向けて全国の様々な酒造から「生酒」が出荷されています。フレッシュでみずみずしく冷やして美味しい生酒は、春から夏にかけての暖かくなる季節にぴったりです。
なお生酒には色々な銘柄があり、商品によって味わいが大きく異なります。味の違いを比べ、好みの銘柄を探してみてください。