最近は若い方や外国人にも人気が出てきている日本酒ですが、日本酒というと透明に澄んだお酒を思い出されるでしょう。しかし日本酒の中には白く濁った「にごり酒」というものもあります。
普通の澄んだ日本酒と「にごり酒」とは、何が違うのでしょうか。なぜ「にごり酒」は白く濁ってしまっているのか、解説していきましょう。
にごり酒とは
「にごり酒」とはその言葉の通り、透明ではない濁った日本酒のことを言います。
濁ったお酒と言うと「どぶろく」を思い出される方もいるかもしれませんが、「どぶろく」は酒税法上では日本酒(清酒)に分類されていません。なぜ「どぶろく」が日本酒に分類されないのかについては、後で説明しましょう。
なぜ「にごり酒」は白く濁っているのか?
まず普通の日本酒は透明に澄んでいるのに、なぜ「にごり酒」は白く濁っているのかを見ていきましょう。
日本酒は蒸したお米に麹や酵母を加えて発酵させることで造られます。発酵している段階のものを「もろみ」と呼び、このもろみをこす(搾る)ことで日本酒が出来上がります。ちなみにこのとき、こされずに残ったものが「酒粕」です。
通常はこの「こす」作業によって、透明な液体(つまり日本酒)と酒粕とに分けられます。
しかしこの「こす」作業が目の粗い布などで行われると、もろみがしっかりとこされないまま液体の方に出てきてしまいます。こうして造られたのが「にごり酒」なのです。
「こす」ときに使われた布の目が粗いと、もろみの中の固形物は液体の方に入ります。この固形物とは、酵母や蒸したお米の破片などです。
このような固形物が入っているために、「にごり酒」は白く濁ったお酒になるのです。そしてこれらの濁りの原因のおかげで、にごり酒の味わいに独特の特徴が生まれます。
にごり酒の誕生と歴史
にごり酒の誕生がいつ頃だったのか、はっきりしたことはわかっていません。しかし透明に澄んだお酒よりももっと古くからあったものとは考えられます。
日本での稲の栽培は弥生時代、今から2400~2500年前には始まっていたとされます。そしてこの頃には、すでに日本酒の原型があったとも言われます。
もしかすると弥生時代の人々も、にごり酒を飲んでいたかもしれません。
3世紀頃に書かれた中国の歴史書「魏志倭人伝」には、日本人にお酒を飲む習慣があったことが書かれています。(ただこのお酒が、にごり酒だったかどうかまではわかりません。)
「どぶろく」と「にごり酒」の違い
ところで、先ほど「どぶろく」は酒税法で日本酒に分類されないと言いましたが、なぜなのでしょうか。
実は酒税法で日本酒とは「もろみをこしたもの」と定義されています。そのため「こす」作業をしていないものは、日本酒ではないのです。
「どぶろく」の原材料は日本酒と同じで、その製造工程も日本酒と同じです。しかし「どぶろく」の場合には、最後にもろみを「こす」という作業をしていません。
そのため日本酒とは定義されないのです。ちなみに「どぶろく」は「そのほかの醸造酒」に分類されます。
では「にごり酒」の場合はどうなのでしょうか。
「にごり酒」の場合には、最後に必ず「こす」という作業が行われています。(行われていなくては、「にごり酒」として売ることができません。)
「にごり酒」の中には「どぶろく」と同じくらいに白く濁ったお酒もあります。そのようなお酒はだいぶ目の粗い布でこしています。
目が粗いために、もろみがお酒の方にたくさん出ているのです。かなり濁っているものであっても、「こす」作業はしっかりと行われています。
にごり酒と一般的な日本酒の違い
一般的な澄んだ日本酒と違い白く濁っている「にごり酒」は、その味わいも少し違います。
「にごり酒」にはもろみが少し入っているために、もろみの旨みも感じられるようなお酒になっているのです。もろみがどのくらい入っているか(どのくらい濁っているか)によっても、味わいは違ってきます。
また火入れがされているかいないかによっても違ってきます。
もろみを目の粗い布でこした後、火入れがされているものが一般的に「にごり酒」と呼ばれるものです。
それに対して火入れがされていないものは「活性清酒(活性にごり酒)」と呼ばれます。「活性清酒」の中の酵母は、まだ生きている状態です。常温くらいに温まってくると、発酵がさらに進んで炭酸ガスをどんどん発生させてしまいます。そのため「活性清酒」は冷所保存するなどして、保存状態に気をつけなくてはいけません。
にごり酒に合う料理
濃厚な味わいのにごり酒には、とろりとした食感の料理が会うでしょう。口の中でとろっととろけるようなものがおすすめです。
例えばクリームチーズを使ったおつまみや、コーンクリームを使ったおつまみなどを合わせてみてください。お酒が一層進むかもしれません。
にごり酒のおすすめの飲み方
にごり酒は、まずは冷やして飲んでいただくのが良いでしょう。そのあとで常温にして、味わいの違いを楽しむのも良いと思います。
またにごり酒は濃厚なとろりとしたお酒ですので、そのまま飲むだけでなく何かで割ったりしても良いでしょう。
氷を入れてオンザロックにしてみたり、炭酸水で割ってみてください。
日本酒に氷を入れたり炭酸水で割るというのは意外な感じもするかもしれませんが、飲みやすくなるのでおすすめです。
このとき一緒にレモンやライムを絞ってみても、飲みやすくなる上にオシャレに楽しめて良いでしょう。
飲むときには瓶の下の方に沈殿してしまっているため、瓶をゆっくりと傾けて回すようにし、上澄みと沈殿部分とを混ぜ合わせてから注ぐようにしましょう。
ただし火入れがされていない発泡性のものは、開け方を間違えると炭酸ガスが吹き出してしまうこともあります。
お酒によっては、瓶に開封時の注意事項が書かれていることがあるほどなのです。発泡性のものは必ず冷やして、あまり揺らさず気をつけて開封してください。
おすすめのにごり酒
にごり酒にはいろいろなものがあります。どれが良いか迷ったら、次のようなものを探してみてください。
1.菊水「五郎八(ごろはち)」
菊水酒造の「五郎八」は冬のにごり酒の定番とも言えるお酒です。秋冬だけの限定のお酒になります。
とろりと濃厚で、コクのある甘口お酒です。ただしアルコール度数は21度と高めになりますので、飲み過ぎには気をつけなくてはいけません。
お酒に弱い方は、このままで飲むには少しキツいと感じられるかもしれません。その場合にはオンザロックなどにすると良いでしょう。
2.獺祭 純米大吟醸 発泡にごり酒 スパークリング50
それまで日本酒をあまり飲んでいなかった層にまで日本酒ファンを広めたお酒とも言える獺祭にも、にごり酒があります。
これはスパークリングワインのようで飲みやすく、まろやかな味わいのお酒です。日本酒初心者の方や、女性にもおすすめです。記念日などにも良いかもしれません。
3.にごり酒の上善如水純米吟醸
こちらは12月だけの限定酒で、ラベルには可愛らしいシロクマのイラストが描かれています。ラベルは可愛らしいのですが、アルコール度数は17度以上18度未満と決して弱いわけではありません。
ラベルのデザインが可愛いらしいので、冬のホームパーティーなのに持って行っても喜ばれそうです。
まとめ
透明に澄んだ日本酒とはまた違った味わいのある「にごり酒」。寒い冬の日に暖かな室内で、とろりと濃厚なおつまみと一緒に飲むのに向いているお酒でしょう。
また「活性清酒(活性にごり酒)」の白い濁りは、雪のイメージにもピッタリかもしれません。クリスマスパーティーのような冬の季節の集まりに持っていけば、華やかな気分になれそうです。