美味しい日本酒を表す単語として「香り高い」という表現を聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。実際に美味しいと言われる日本酒は、フルーツのような香りや花のような香りなど、さまざまな香りがついています。味だけでなく香りを知ることができれば、より日本酒を楽しめるようになるでしょう。
目次
なぜ日本酒から香りがするの?
日本酒にはさまざまな香りがついています。香りがついているといっても、香料で無理やり強い香りをつけているわけではなく、日本酒が造られる過程で自然の香りが生まれているのが特徴です。そのため良い香りがすると言われる日本酒は、決してわざとらしくない「やさしく豊かな香り」を楽しむことができます。
なお日本酒の香りには、酵母由来の香り、精米によるお米本体の香り、そして吟醸造りのような低温発酵時に生まれる吟醸香などがあります。丁寧に時間をかけて醸された日本酒や、よく精米されて造られたという高級なお酒になるほど、香りが高くなる傾向にあります。そして香り高いお酒は雑味やツンとくるアルコール感が少ないため、初心者でも飲みやすいものが多いと言われています。
吟醸香とは?リンゴやバナナのような香りがする理由
数ある日本酒の中でも、今大きな人気を集めているのが「純米吟醸酒」「純米大吟醸」などの吟醸酒と呼ばれるお酒です。吟醸酒とはよく精米したお米を原料にしてゆっくりと発酵することで造られるお酒であり、華やかでフルーティーな「吟醸香」が楽しめるのがポイントです。
カプロン酸エチル由来のリンゴ香
吟醸香には有名なものが2つあります。1つ目は「カプロン酸エチル」が生み出す、リンゴのような香りです。現在流行している吟醸酒の多くから感じられる香りで、非常にフルーティーながらも爽やかなのが特徴です。低温で発酵する吟醸造りのおかげで、カプロン酸エチルが豊富に生み出され、ほのかに甘い香りになるそうです。
酢酸イソアミルによるバナナ香
吟醸香の中で2つ目に有名なのが、「酢酸イソアミル」由来のバナナのような香りです。これもカプロン酸エチルと同様に、吟醸造りの中で生み出されます。
低温発酵のおかげで香りの成分が蒸発しにくく、もろみの中にとどまり華やかな香りが生まれます。そのため特に大吟醸酒などは、低温発酵がしやすい冬場仕込みであることが多いです。
日本酒の香りの表現方法は?どんなものがあるの?
日本酒には甘口・辛口、濃厚・淡麗と色々な味があるように、香りにもさまざまな種類があります。テイスティングノートや解説を読めば、そのお酒がどんな香りがするのか想像できるでしょう。
ここからは、日本酒の香りの表現に使われる言葉とその特徴を解説していきます。
フルーティ
バナナやリンゴ、そしてライチなどの果物香をフルーティと表現することが多いです。吟醸酒に多いのが特徴です。
特に果実が加えられているわけではないですが、果実に含まれる成分がお酒造りの過程で生まれることで、フルーツのような香りを発するお酒になります。
華やか
薔薇やチューリップ、アカシアなど花に例えられる香りで、こちらも吟醸酒に多いです。高級と呼ばれるランクの高いお酒に多く、ギフトにしても喜ばれます。
爽やか
レモンやライムなどの柑橘系の香りのお酒で、酸味がありスッキリした印象なので夏におすすめです。また青竹や若草、三つ葉のような香りなど、植物に例えられるものもあります。
ふくよか
純米酒から感じられる米本来の香りをふくよかと表現することが多いです。稲や栗のような深みのある香りで、飲みごたえばっちりのお酒が多いです。
熟成香
フレッシュなお酒よりも、期間をおいて熟成させたお酒に多い香りです。カラメルやナッツのような香りで、透明感のある熟成酒に対し重厚でインパクトがあります。
香り高いおすすめ日本酒7選
獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分
花のような甘い香りの上質な純米大吟醸酒です。二割三分は精米歩合が23%という意味で、極限まで精米することで雑味が取り除かれ、柔らかな味が生み出されています。口に含むと蜂蜜のような甘味が広がり、余韻もゆっくりと続いていきます。
磯自慢 中取り純米大吟醸 35
洞爺湖サミットで乾杯酒にも選ばれた高級日本酒です。白桃やマスクメロン、ラ・フランス、完熟バナナといったフルーティーさが特徴です。豊かな香りを持ちつつも、酸味やキリッとした味も楽しめるというバランスの取れた1本です。黒龍 大吟醸 龍
香りは豊かですが味わいはクセが少なくスッキリとしているため、吟醸酒ですが食中酒としても人気があります。
出羽桜 一路 純米大吟醸
而今 純米吟醸 山田錦無濾過生
青リンゴを思わせるフレッシュでやや酸味のある香りと味わいが特徴のお酒です。元々は三重の地酒でしたが、あまりの美味しさから人気に火がつき全国区のお酒になりました。こちらは無濾過の生酒タイプで、ほのかな発泡感を楽しむことができます。フルーティーなにごり酒で、酸味はありますが甘口好きの方にもおすすめしたい1本です。
花陽浴 純米吟醸 八反錦 無濾過生原酒
埼玉県で造られる花陽浴シリーズのお酒で、よく磨いたお米を使い、袋づりの製法で丁寧に一雫ずつ集めた日本酒となります。刺激を与えずに丁寧に醸された無濾過の生原酒は、パイナップルや青リンゴを感じさせる爽やかな香りと味わいが特徴です。飛露喜 純米大吟醸 山田錦 100%
飛露喜は1999年より発売開始された、比較的歴史の浅い銘柄のお酒です。発売直後からあまりの美味しさで高い評価を受け、瞬く間に人気銘柄となったシリーズです。こちらのボトルはそんな飛露喜シリーズの中でもランクの高い純米大吟醸酒で、出荷数が限られているという限定商品です。透明感がある上質なお酒で、程よい吟醸香を感じることができます。
香りの良いお酒を美味しく飲む方法
日本酒は季節や好みに合わせて、温度や飲み方を変えて楽しめるアルコールです。どんな飲み方で飲むのが一番美味しく感じられるかは、お酒の種類や銘柄によって変わります。
一般的に香り高いとされているお酒は、純米吟醸や純米大吟醸などの「吟醸香」が多いです。したがって、香りの良いとされるお酒を飲む場合は、吟醸香をなるべく消さずに堪能できる方法で飲むと良いでしょう。
冷やしてから5度~10度前後で飲む
例えば温度ですが、吟醸香を楽しむためにはなるべく冷やしたほうが良いとされています。燗酒にしてしまうとせっかくの香りが消えてしまう可能性が高いため、注意しておきましょう。特に生酒タイプや無濾過タイプのお酒は、しっかりと冷蔵庫で冷やしておくようにしてください。火入れタイプのものも、できれば冷蔵庫で冷やしてから5度~10度前後で楽しむのがおすすめです。
日本酒はビールなど他のお酒と異なり、0℃から60℃とさまざまな温度帯で楽しむことができ、さらに温度で香味まで変わるという、世界でもとてもめずらしいお酒です。焼酎も「お湯割り」「水割り」などがありますが、日本酒はお酒そのものを温めたり冷やしたりするのが、焼酎との大きな違いです。今回は、冷酒についてご紹...
ワイングラスを使用する
また吟醸香を楽しむためには、グラスの形状にもこだわってみると良いでしょう。しっかりと香りを感じたいなら、少量しか入らないおちょこではなく「ワイングラス」を使用して飲む、という選択肢もあります。特に白ワインを飲む際に使うような縦長ですぼまりのある形を選ぶと、香りが逃げにくく口をつけた時に満足感が得られやすいです。
日本酒は和のお酒だからおちょこや枡で飲むもの・・・そう決めつけている方はいませんか?もちろんおちょこや枡を使って飲むのも美味しいですが、実は日本酒はワイングラスで飲んでも美味しいお酒でもあります。日本酒ファンの中にはわざわざワイングラスに注ぎ、日本酒を楽しむという方もいます。 ちなみに日本酒をワイ...
香り高い日本酒に合わせたいおつまみ
香り高い日本酒に合わせるなら、お酒の香りを邪魔しないあっさりとした風味のおつまみを選ぶのがおすすめです。さっぱりとした「魚のカルパッチョ」や「かまぼこ」、「白身魚の刺身」といった魚ベースのおつまみのほか、「山菜の天ぷら」「冷奴」「サラダ」「チーズ」などもマッチします。反対に癖の強い肉や唐揚げなどの味の濃いものは、せっかくの香りを消してしまう可能性があるので注意しましょう。
そのほかミントを使った味付けやワサビを使った味付けなど、ちょっとしたアクセントになるおつまみをプラスしてみるのも刺激になるのでおすすめです。
お酒を飲むときに欠かせないのがおつまみです。美味しいおつまみと合わせれば、いつものお酒がより美味しく感じられるようになるでしょう。 ※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール お酒におつまみを合わせるコツ おつまみとお酒には相性があります。もちろん自分が好きな食べ物を選ぶ...
まとめ
お酒にはさまざまな香りがあります。吟醸香と呼ばれるフルーティーな香りや華やかな香りのほか、純米酒ならではのお米の豊かな香り、熟成酒の奥行きのある香りなどです。特に高級なお酒は香りが高いものが多く、味そのものだけでなく「香り」からも日本酒を堪能することができます。
なお香り高いお酒は雑味が少ないため、日本酒初心者の方でも飲みやすいものが多いです。気になる銘柄を見つけた方は、ぜひ試してみてください。