山陰地方の鳥取というと砂丘やらっきょう、あるいは梨という、観光と農産物のイメージが強い方も多いのではないでしょうか。しかし、鳥取には江戸時代から窯業が盛んに奨励され、様々な陶器が生み出されてきた土地でもあります。そんな鳥取では、陶器による酒器も数多くつくられてきた歴史を持ちます。一方で、自然豊かな鳥取の地では漆器なども製造されてきました。その漆器も酒器として多く利用されてきた歴史を持っています。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
牛ノ戸焼 ぐい呑
牛ノ戸焼(うしのとやき)は鳥取県、鳥取市の河原町で焼かれている陶器です。江戸後期の天保年間に誕生し、徳利やすり鉢の製造で名をはせました。牛ノ戸焼は「用の美」を追求した作品と評価され、実用品の中にも美しさを感じさせる焼き物として知られています。特にスタンダードな模様として緑と黒とを半々に振り分けた釉薬の色合いは現代的さえあるデザインです。
このようにハイセンスなデザインを持つ牛ノ戸焼を江戸時代から定評のある酒器としておすすめしたいのがこのぐい呑です。いつの時代も常にモダンな印象を与えてきた酒器で一杯楽しんでみてはいかがでしょうか。
上神焼 酒器ぐい呑
上神焼(かづわやき)は、江戸中期の宝暦年間(1750年頃)に開窯された窯で作られてきた焼き物です。江戸時代と明治時代のはざまの動乱期にも脈々と、その技術を受け継いできました。しかし、大正期に入るとその技術も途絶える危機を迎えます。そんな中、陶工の平野洞雲に師事した藤一氏が再興を図り、再びその技術が連綿と続いています。色鮮やかな辰砂(しんしゃ、陶器に鮮やかな赤を生み出す鉱物)を用いた美しい色合いは、現代でも健在です。
そんな上神焼をぐい呑みにしたものがこの酒器です。美しい紅色は、清酒の透明さをより引き立て、華やかな印象を与えてくれるでしょう。楽しいお酒の場を演出してくれる酒器といえます。
鳥取因幡焼フリーカップ
今日は、鳥取市用瀬町に工房を構える鳥取因幡焼の器をご紹介します。窯主の三木健太郎さんは鳥取生まれ。京都伝統工芸専門学校を卒業後、中天陶窯に弟子入り。帰郷後の2013年 鳥取因幡焼を立ち上げられました。軽量で手馴染みが良く毎日の生活にそっと寄り添ってくれるような優しさも感じられます。 pic.twitter.com/zfFW7KHcOw
— 器屋うらの (@utsuwayaurano) September 9, 2019
カラフルな色合いが美しい新興のブランド・鳥取因幡焼 フリーカップ
鳥取因幡焼(とっとりいなばやき) は、新興の焼き物として現代に誕生した陶器です。鳥取県八頭郡用瀬町(現鳥取市)で工房を構え、初代とも言える陶工が腕を振るっています。青・緑・茶色のカラフルな色合いは和の陶器でありながら、どこか西洋の現代的な雰囲気を醸し出しているのが特徴です。機能面もおろそかになっていません。重厚な外見とは裏腹に軽量に作られた陶器が多く、使いやすい設計になっているのも注目すべき点といえるでしょう。
この鳥取因幡焼のフリーカップは、そんな機能と現代的なセンスを融合させた酒器です。焼酎やウィスキーといった蒸留酒はもちろん、食中酒のワインやなみなみと注いだ日本酒にも対応で来ます。きっとその扱いやすさから盃が進むことでしょう。
浦富焼酒器揃
この度、浦富焼の先代 山下碩夫さんの器を販売させて頂く事になりました。オンラインショップにもUPしましたので是非ご覧下さい。https://t.co/TsydRuLTRC pic.twitter.com/aObj9XrPvj
— 器屋うらの (@utsuwayaurano) May 23, 2018
染付が美しい浦富焼酒器揃
浦富焼(うらどめやき)は鳥取県の最北端、岩美町(いわみちょう)で焼かれている焼き物です。もともとこの場所では陶器に利用できる陶石(白色軟質の岩石で陶磁器の原料)が産出されることから江戸時代より陶器の製造が行われていました。模様を書き加えた染付として、実用的な製品という特徴を持っていましたが、明治期にその技術は一度途絶えてしまいます。その後、長い期間廃れていた技術でしたが、1971年の3月に山下碩夫氏と山下清志氏の両名が、その技術をよみがえらせ再興を果たします。
この一度失われた技術を用いて徳利と盃のセットにしたのが、浦富焼酒器揃です。素朴な模様が描かれた染付、かつては普段使いの実用品として用いられていました。現代もおしゃれな食卓を彩る酒器としても利用できる洗練された製品といえるでしょう。
saonのガラスピッチャー&グラスセット
鳥取の新しい風・saonのガラスピッチャー&グラスセット
鳥取県の西部、倉吉市に工房を構える吹きガラス職人が手掛けるブランド、それがsaonです。独特な吹きガラスの技法を用いて様々なガラス製品が製造され、その種類は食器や装飾品といった、分野を問わず様々なものがあります。凹凸のモールやガラスの精巧なデザインが魅力な現代的なガラス製品が多く、同地を代表するガラスの工房と言えるでしょう。
ガラスピッチャー&グラスセットは、そんなsaonでも実用的で普段使いに適した製品です。ピッチャーに瓶ビールを注いで、グラスにサーブしていけば、楽しいお酒のひと時が満喫できます。酒器としてももちろん、ソフトドリンクのサーブに使っても便利な実用性の高い美しい酒器です。
工房このか 楓星空蒔絵片口・杯
漆と木工の加工技術が光る・工房このか 楓星空蒔絵片口・杯
鳥取県は、木工も盛んに行われてきました。そんな鳥取県で新進気鋭の作家が手掛ける製品群を生み出している工房、それが工房このかです。鳥取市内にあるこの工房では木工轆轤(ろくろ)を使用して木地から塗装までを一人で一貫して行っているのが特徴です。
この酒器はそんな工房で生み出された漆塗りの現代的な一式の酒器で、底面に描かれた星空が美しい一品に仕上がっています。漆塗りというと保守的なイメージを持たれる方もいますが、現代生活と漆器というコンセプトでお酒を楽しめる酒器です。底面に浮かぶ星空を楽しみながら日本酒や焼酎など透き通るような美酒を頂きましょう。
福光焼面取徳利
福光焼の面取徳利。
黒釉でソリッドなカットが入ってもどこか柔らかで品の良さを感じる河本さんが作る器。
手あたり、口あたりもとてもいいのです。
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鳥取展は今日と明日の残り2日となりました。
宮島は五重塔辺りの紅葉がきれいです。
ふもとで鳥取のものたちとお待ちしています🕊
.#福光焼 #鳥取 pic.twitter.com/lb9wE7Ek3R— signal シグナル (@signal_craft) November 10, 2018
伝統的な蹴ろくろから生まれるあたたかみ・福光焼面取徳利
民芸という言葉があります。一般庶民が利用する実用品でありながら美しい工芸品という製品です。そんな民芸の精神を受け継いでいるのが福光焼(ふくみつやき)、民藝運動の推進者・河井寛次郎氏の孫弟子にあたる陶工が中心となって製造を行っています。
この福光焼はモノクロの風合いを持ちながら、どこか奥深い色彩を感じさせる焼き物です。面取の徳利にすることで、滑り止めとして機能する面取り部分から、それを感じ取ることができるでしょう。民芸という言葉の意味が実感できる実用的な酒器です。
因久山焼
今日は鳥取の因久山焼の器をご紹介します。
因久山焼は江戸時代に始まり、鳥取池田藩の御用窯として愛用され発展を遂げる事になります。
現在でも茶器を中心に素朴ながらも格調の高さを感じさせる作品を多く作られています。 pic.twitter.com/81nFGQhaNm— 器屋うらの (@utsuwayaurano) April 8, 2019
京都の風合いを感じる因久山焼
因久山焼(いんきゅうざんやき)は、鳥取の東部、八頭町(やずちょう)で焼かれている陶器です。もともと江戸中期、明和年間に当時の鳥取藩主が京都から陶工を招聘して 開窯(かいよう)させた歴史を持ちます。鳥取藩の保護を受けて、滋賀県の信楽焼の技術も加えながら進化をしていきました。美しい茶色の風合いが特徴で、多くの作品でその風合いを楽しむことができます。
まとめ
鳥取は、魅力的な陶器の他、新興の工房がガラスや木工といった技術で酒器が多く生み出されています。陶器自体にも平成時代になって生まれた焼き物も酒器として利用されている側面も持ちます。そんな鳥取の酒器は、素朴なもの、華やかなもの、斬新なもの、あるいはトラディッショナルなものなど、その奥深さに驚かされる方も少なくありません。酒器の種類も徳利や盃、あるいはぐい呑みといった江戸時代から存在するスタイルの酒器をはじめ、ピッチャーやカップ、ビアグラスといった洋酒やビールにも対応したスタイルも現れています。また、鳥取市をはじめとした東部と、倉吉市を中心とした西部では、風合いも異なった印象を受けるでしょう。そんな鳥取の酒器を楽しんでみてください。