佐賀は、食材、自然など誇れるものが「がばい」(とても)あります。食材は高級ブランド牛の佐賀牛や新鮮で透明感あふれるイカの活造り、濃厚な味覚がたまらない竹崎かに、自然は玄海灘や有明海、山といえば北には脊振山脈、その南には広大な佐賀平野が控えています。温暖な気候は過ごしやすく春には桜、秋には紅葉、さらに冬は九州でも珍しくスキーが楽しめます。
そんな佐賀ですが、お酒も多く作られており、そのお酒を楽しむ酒器にも恵まれている場所です。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
唐津焼のぐい呑み
唐津焼は佐賀の東部で焼かれている焼き物です。日常遣いの食器から高級な茶器に至るまでオールラウンドで活躍する焼き物として知られています。そういった幅広い用途で使われることから種類や技法も非常に多彩であり個性的な焼き物です。
もともと唐津の港からアジアや日本全国に出荷していたことからこの名がついたとも言われており、それだけ多くの種類が唐津から発送されていたことがうかがえます。安土桃山時代にはすでに焼かれていたことから、その歴史は長く千利休も唐津焼の茶碗を持っていたとされています。
このように歴史が長く高い品質を誇る唐津焼をぐい呑みにしたのがこの酒器です。深い青みを帯びた渋い風合いのぐい呑みは日本酒を硬派に楽しむ方へ特におすすめしたい逸品です。
有田焼の窯変酒器セット
サクラが美しい片口徳利とぐいのみ
有田焼も全国区の知名度を誇る焼き物です。佐賀の西部、有田町で焼かれているこの焼き物は伊万里焼という異名も持っています。
もともと泉山陶石、天草陶石など九州のさまざまな場所から優れた材料を集めて焼いているのが特徴で美しい絵柄が魅力的な焼き物です。高温で焼成し、ガラス化が進んだ磁器と呼ばれるジャンルの焼き物であり、江戸後期に全国で製造されるまで日本で製造されていた唯一の磁器製造拠点でもありました。
今回紹介する酒器はユニークで、磁器がほとんどの有田焼にあって若干やわらかい陶器で作っています。磁器のイメージが強い有田焼の印象を一新する新しい試みで作られたこの酒器は、有田焼らしい非常に精彩でリアルなサクラが絵付けされています。桜の時期、あるいは桜の恋しい時期、いずれも楽しめる酒器といえます。
そうた窯の盃
モダンな要素を盛り込んだ有田焼の酒器
有田焼は伝統的な技法のものも多くありますが、新しい作風を求める動きも活発です。このそうた窯も、新しい有田焼の姿を模索する陶工が確約しています。
この酒器は、有田焼の現代的な解釈をもとに製造された杯です。どこか西洋の模様を連想させる絵付けと、コブレットのような形状をした杯に仕上げられているのが特徴です。そのため、日本酒や焼酎といった日本のお酒以外にもワインなどの洋酒を入れても違和感のないデザインになっており、口当たりもよく開口部が大きく開いているので香りも存分に楽しめます。
伊万里焼の焼き締めロックぐい呑み
岩の質感を表現したぐい呑み
有田焼の別名、伊万里焼は唐津焼のように伊万里港から積み出されたことで、この名前が付きました。そのため、唐津焼同様様々な手法の伊万里焼が存在しこの酒器もそういった手法の一つを用いています。
焼き締めという技法を使って、岩のような野性味あふれる質感に仕上げられており、まるで岩を削って作ったような印象さえ受けるワイルドさがあります。轆轤(ろくろ)ではなく、土の塊から削り出して行う刳り貫きという技法を用いているため、より岩を再現している点も注目です。
1日に製作できる数量も限られ、決して同じものは出来ない一点物のぐい呑みです。
武雄焼のぐい呑み
唐津や有田以外にも佐賀は焼き物王国として数多くの焼き物を輩出しています。武雄焼もその一つで、知名度こそ両者に劣るものの、実力派の焼き物として九州では知られています。
この武雄焼はもともと文録・慶長の役の際、武雄領主に同行した朝鮮半島の陶工たちによって焼き始められました。佐賀南西部の武雄市を中心に焼かれており、その長い歴史を持つ技術は、現在も伝えられている焼き物です。土味を生かした茶系統の「陶器」と白く輝く「磁器」があり、白いものは白唐津とも呼ばれます。
この酒器も白唐津として知られる武雄焼の白い時期であり、シンプルで美しい絵付けが魅力のぐい呑みに仕上げられているのが特徴です。
古伊万里風のぐい呑み
華やかな模様が美しい酒器
伊万里焼の中でも骨董品的な価値のあるものが古伊万里といわれています。実際の古伊万里は非常に高価な金額で取引されており、一般の方が普段使いにおいそれと使うことができないものばかりです。酒器も例外ではなく、古伊万里の酒器もまた高額なやり取りがされています。
そんな古伊万里の風合いを持つ酒器を気軽に使えるようにしたのがこの古伊万里風の伊万里焼のぐい呑みです。染付・色絵の鮮やかさが特徴で赤の鮮やかさは当時、古伊万里が日常遣いされていたころをイメージさせます。そんな古人を思いつつ一杯楽しむのもおすすめです。
有田焼 翡翠ろくろの片口
有田焼の懐の深さを感じさせる酒器まるで宝石の翡翠を思わせるような磁器に仕上げられた有田焼です。有田焼は様々な技法があり、こちらは天竜寺青磁という中国の元の時代に多く作られた技法をもとに作られています。
その色合いにお酒の透明感が合わされば、より美しさが増す酒器といえるのではないでしょうか。有田焼の技法の多彩さを実感できる酒器といえます。
色鍋島の酒器
待ちに待った明日の休暇😆
つーか…たった1日だけど(笑)
やっと正月🎍やろうと思ったらさ…食い盛りのあんちゃんたちにお節料理食い尽くされて全滅也💦父ちゃんは紅白板わさで一杯也😅酒器は…色鍋島大盃と…前回の正月にうっかり割ってしまい😅持ち手修復した瓢の徳利で赤ず金をやる😋 pic.twitter.com/8YJ9ALNkhD— minetsuyo (@jamtland_mine) January 2, 2021
色鍋島の絵付けが美しい杯
色鍋島は、鍋島焼の一つで佐賀藩を治めていた鍋島氏が藩直営で製造した一連の焼き物です。藩を挙げて製造していた経緯から豪華絢爛で藩主の所用品や将軍家・諸大名への外交のための贈答品としても製造されていました。廃藩置県によって一度は途絶えたものの今泉今右衛門家がその豪華な技法を復活させ現在に至っています。
この酒器もその特徴を存分に持っており豪華な絵付けがされています。
まとめ
佐賀は古くから東アジアとの関わりが深く、弥生時代の遺跡を公園化した吉野ヶ里歴史公園などかつての様子をうかがい知ることができます。こういった関わり深い背景から古い時代より焼き物が盛んであり、今回も多くの酒器が焼き物でした。
現在も佐賀の各エリアでは盛んに素晴らしい焼き物が製造され、作陶されており魅力的な酒器も毎日生まれています。職人技が光る伝統工芸品や新しい感覚の作陶による斬新な酒器など、佐賀にはまだまだ多くの魅力的な酒器が眠っています。
今回紹介した以外にも自分に合った素晴らしい酒器に出会えるかもしれません。まずはそれらの酒器を知って、佐賀の深い酒器の世界に足を踏み入れるのもいいのではないでしょうか。