山形は日本海からやってくる雪によって多くの名水を生み出してきました。鳥海、朝日、月山など名水として知られる水系は、いずれも個性があり異なっています。こういった水の豊かな背景によって高級酒、とりわけ吟醸酒の出荷割合が高い地域でもあります。
質にこだわった日本酒を中心に酒造りが盛んな山形は、酒器の制作も盛んに行われています。
※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
平清水焼
山形の日本酒を飲む用に、山形の平清水焼青龍窯の酒器も購入🤗無印良品で2500円位だった! pic.twitter.com/3peCIFNZdc
— 櫻子 (@EttaP90) January 29, 2017
常陸と相馬の流れをもつ焼き物
平清水焼は山形県の県庁所在地である山形市で焼かれている陶磁器です。
同市の南東部にある千歳山の山麓に窯元が点在し、江戸中期に現在の茨城県である常陸から来た陶工によって確立されました。もともと同地にあった焼き物が常陸の陶工の手で形になったという言い伝えもあります。さらに現在の福島県である相馬からやってきた陶工が平清水焼の姿を現在の形にしました。このように他の地域からやってきた陶工らによって進化してきた歴史を持ちます。
鉄分の多い土を活かした特徴があり、民芸陶器の素朴な風合いを感じさせます。もともと水がめなど台所で利用される雑器を得意とし、耐久性の高さも特徴として挙げられます。
楯岡焼のぐい呑み
山形といえばさくらんぼ、ぶどう、りんごなどフルーツ王国で知られています。山形の村山地方で焼かれている楯岡焼は、これらのフルーツの剪定などで出る木や枝を燃料に焼き上げた焼き物です。釉薬にもこれらの草木を原料にしており、加えて桑の木を用いて深い色合いを出しています。
様々なバリエーションがあり、楯岡焼のぐい呑みだけを集めても、個性的なぐい呑みがそろいます。コレクションで集めて、それを眺めながら一献いかがでしょうか。
山形鋳物の鉄燗鍋
山形の鋳物技術が光る
山形には鉄の鋳物技術が古くからあります。その古さは実に900年、平安末期に生まれたとされています。当地で起こった反乱を平定するために京都からやってきた源頼義が連れてきた鋳物師が山形で鋳物を作ったことから始まりました。
産業として発展したのは同地を治めていた最上義光です。安土桃山時代に城下の整備を行った際に鋳物師を集めた地区を築き、産業化に成功させました。
山形市内の川の砂や付近の土が鋳物づくりに適しており、その後も高い技術を維持しながら現代まで伝わっています。途中京都の技術を再導入し進化した鋳物でもあります。
米沢焼のぐい呑み
お土産にぐい飲み、
色合いが気に入った。#米沢焼 pic.twitter.com/OZKYzeC5fI— ちびすけ (@muzzle2020) December 11, 2021
上杉鷹山ゆかりの焼き物
山形の米沢といえば、名君として知られる上杉鷹山をイメージする方も多いのではないでしょうか。そんな上杉鷹山は多くの産業を興し、窮乏する米沢を救ったとされています。
この米沢を救った産業の一つが米沢焼です。当時は成島焼と呼ばれ、実用性の高さから東北地方で重宝された焼き物として発展してきました。成島焼の流れは米沢焼として受け継がれ、米沢焼として知られています。
楯野川の冷酒グラス
山形の有名蔵元のグラス
山形には多くの名水によって高級日本酒を中心とした醸造が行われています。この日本酒を手掛ける蔵元の一つが楯の川酒造です。
ただひたむきに良い酒を造り、品質だけで勝負するというモットーに現在も精力的にプレミアムな酒造りに邁進しています。
そんな盾の川酒造の看板銘柄が盾野川です。
日本酒の醸造には「米を磨く」という工程があります。平たく言えば、米を削る作業のことです。どれくらい「磨いた」のかを表す指標を精米歩合といい、精米歩合が60%と表記されていればお米の40%を削り取ったということです。一般的なお酒では3割から4割、大吟醸酒になると6割以上の部分を削りとってしまいます。し...
IBUKIビアグラス
高級ガラスの質感に迫る樹脂グラス
山形は、技術で勝負する企業が少なくありません。この酒器を手掛けた企業、IBUKIもその一社です。金型の設計や製造に定評があり、数多くの製品を開発してきた同社が挑んだのは樹脂のグラスです。
この樹脂グラスは、クリスタルガラスなどの高級ガラスに迫る性能を求めた酒器です。今まで培ってきた技術を生かし、樹脂を極薄に加工、さらに十分な耐久性と樹脂には難しいグラマラスなシェイプを与えるのに成功しました。
樹脂グラスと言うと何となく安っぽい印象がありますが、そんなイメージを破壊するインパクトある酒器に仕上がっています。山形のエンジニア魂を感じながらビールを飲んでみてください。
安達 浩子氏 いろコップ
優しい色合いを感じさせる癒し系の酒器
山形では現在も様々な陶芸家が新しい作風を追求し、日々作陶が続けられています。このいろコップも新しい焼き物として焼かれている焼き物です。
手掛けている陶芸作家 安達 浩子氏は地元山形出身で、国内の賞もいくつか手にしています。
陶芸作家 安達浩子ホームページ
その実績もさることながら、同氏の特徴は優しく、癒される作風。手びねりで形を作った手のぬくもりを感じ、色合いも穏やかで癒されます。
この酒器は表面の加飾部分を手描きで丁寧に仕上げてあり、泡のような円のような、見る人を落ち着かせてくれます。癒しや優しさを感じながら現代作家の酒器で日ごろの疲れを癒してみるのもおすすめです。
まとめ
優れた数多くの水系をもち、豊かな米どころという顔を持つ山形は、まさに日本酒に適した環境で数多くの蔵元が誕生しました。高級な銘柄として知られる日本酒も多く、初心者から玄人をもうならせる酒造りで地位を確立してきました。
そんな山形は民芸品や美術品も数多く誕生し、それらの技術を生かした酒器もたくさんあります。また、近年では現代的な感性で挑んだ酒器や工業技術を生かした酒器なども生まれています。
魅力的な山形の地酒を楽しむだけでなく、このような豊かな酒器も同時に楽しんでみてはいかがでしょうか。手軽に買える酒器から人生を共にできるような高級酒器まで多数のラインナップを誇るのが山形の酒器です。ぜひ楽しんでみてください。