北陸では発泡酒製造の規制緩和ののち、早くから数多くの地ビールが生産されてきました。立山をはじめとする険しい山々がもたらす雪解け水にめぐまれ、もともと冬の降雪が厳しく、夏は蒸し暑い気候だったこともあり、古くから日本酒造りが盛んにおこなわれ、そこで培った技術が今日の地ビール産業の発展につながったのです。
北陸の地ビールの特色として挙げられるのはフレーバーが豊富であるということ。定番のラガーやピルスナーはもちろん、日本酒の酵母を使ったものや柑橘系、さらには生姜を使ったジンジャーエール風のものまで、味の工夫が見受けられます。
また、「北陸といえばグルメ」といわれるように、日本海がもたらす豊かな海産物と海沿いで栽培される新鮮な野菜、厳しい気候がはぐくんだ味の良い米を使った料理が盛んで、お酒と一緒に味わうのも楽しみの一つです。
北陸地方(富山・石川・福井)のおすすめ地ビール
宇奈月ビール
名水と地場のホップのマリアージュは世界大会でもお墨付き
黒部宇奈月温泉や黒部ダムなど観光地を要し、立山連峰から流れる名水が湧き出ることでも知られる宇奈月。その地ならではの天然水を生かしたのがこの宇奈月ビールです。
注目すべきなのは立山連峰がはぐくんだ黒部川の伏流水だけではありません。もう一つの重要な原材料である麦芽も二条大麦の段階から自社で栽培しているのです。その二つが組み合わさったビールはインターナショナルビアコンペティションや日本酒類コンクール・ビール部門、さらにはモンドセレクションで銀賞を獲得したことのあるほどの折り紙付きの品質です。
醸造所:宇奈月ビール
住所:富山県黒部市宇奈月町下立687
城端麦酒
これがビール?とは思えない新感覚のティー&フルーツフレーバー
樽生が! 替わったよ! 爽やかレモン!
富山・城端麦酒『グレートブルー』です。副材料にレモンを使用し、苦味を抑えたスッキリ飲めるビール。無限に飲めます。優勝。 pic.twitter.com/Cp56jtqRBN
— Barあしあと (@Bar_ASIATO) July 1, 2020
世界遺産の五箇山合掌造りの集落にもほど近い、城端盆地に位置する南砺市。そこで醸造されているのがこの「城端麦酒」です。このビールの特徴はビールの味としてはなかなかイメージしにくいアールグレイやブラッドオレンジといった新感覚なカクテルフレーバーの発泡酒を展開していること。レモンやピンクグレープフルーツの果汁を使った「GreatBlue」や「TropicalPink」など、独特な色合いとスタイリッシュなパッケージで見た目も楽しめます。
もちろんしっかりとした味わいのエールや柑橘的ホップを使った「輝Wheat」などの定番もそろっています。
掲載ページ:城端麦酒
醸造所:城端麦酒
住所:富山県南砺市立野原東688
立山エール
富山初の地ビールは安定の本格派
立山エール美味 pic.twitter.com/Ob2g1vjYgO
— 🍺 (@hironofx) November 19, 2016
富山県で初の地ビールである立山エールを醸造しているのは1948年創業の老舗焼酎メーカー、北陸醗酵工業です。立山から流れる新鮮な伏流水を活用し、麦芽と麦芽エキス、これまで数々の日本酒蔵元に愛されてきた「金沢14号」を独自にアレンジした清酒酵母のみを使ったビールを1997年から製造しています。
瓶内で発行がさらに進む定番のラガービールは、飲むタイミングによって味の深みが増していくのが面白いですね。
掲載ページ:北陸醗酵工業株式会社
醸造所:北陸醗酵工業
住所:富山県滑川市浜四ツ屋111-乙
金澤ブルワリー
定番はもちろん、なんと!グルテンフリーも登場
金澤ブルワリーは、2016年に小さな一軒家から生まれたまだ新しい地ビールです。カナダ留学中に体験した地ビール文化を日本にも紹介したいという思いを持つ代表と小さいころに学校の授業で種籾の自然発酵を目の前で体験した醸造家が協力し、地ビール界でも珍しい自家培養の新鮮な酵母を使い、水や原材料配分などの調整に徹底的にこだわった自家製のビールを醸造しています。
定番のペールエールやヴァイツェンなどに加えて、日本酒酵母と通常の3倍の麦芽を使用したプレミアムな「犀川」「浅野川」、さらに2019年からは麦芽の代わりに米飴を使用し、しょうがの香りを生かしたグルテンフリーのお酒「ジンジャーリカー」も加わりました。
醸造所:金澤ブルワリー
住所:石川県金沢市円光寺3丁目1−5
越前福井浪漫麦酒『DIOS』
1世紀の伝統を誇る造酒処がはぐくんだ技術の結晶
ギリシア神話の酒の神、ディオニュソスにちなんで「DIOS」と名付けられた、1909年創業の造り酒屋越の磯が生み出したクラフトビール。熱処理もろ過も行わず、麦芽本来の風味を最大限に生かしたこのビールは、名前の通り酒造りの魂が表現され、日本酒製造の伝統がなければなしえなかった深みのある風味が楽しめます。
製造技術はもちろんのこと、地域との連携も注目するべきです。たとえば、福井の梅酵母と六条大麦越を生かした「越のビール」を福井県立大学と福井県食品加工研究所との産学官連携で開発したり、かつて日本海の貿易の拠点として栄えた敦賀の赤レンガ倉庫とタイアップして「敦賀赤レンガ倉庫ビール」を発売したりしています。
醸造所:越の磯
住所:福井県福井市大宮5丁目8−25
日本海倶楽部
生きた酵母にこだわった味は世界大会のお墨付き
市販のビールではたいていビール酵母は除去されているのに対し、地ビールでは逆にそれを生かしていることが大きな強みです。中でも日本海クラブのビールはビタミンに恵まれた酵母を中心に、麦芽とホップだけを加えて本場チェコから来た技術者の指導の下チェコの伝統的なスタイルで醸造されています。
その実力はビール界のノーベル賞とも称されるブルワリー・オブ・ザ・イヤーに認められ、2014年に受賞しています。
醸造所:社会福祉法人佛子園
住所:石川県鳳珠郡能登町字立壁92
暑い日、美味しいビールが自宅で飲めたら幸せですよね。缶ビールそのままもいいけれど、やっぱりサーバーから出したてのビールは一味違います。ビールサーバーがあれば、きめ細かな泡で喉越しが良いビールを飲むことができます。
お土産におすすめの地ビール
金沢百万石ビール
地元の農業法人がはぐくんだ味が気軽に楽しめる
金澤百万石ビールは、花火大会で知られる能美郡川北町の農業法人が生み出した地ビールです。休耕田を再活用して大麦を栽培するだけではなく、麦芽加工から醸造、販売まで自分たちで行う「第六次産業」を目指そうということで地ビールの一貫生産を始めました。
味もビールではなかなか味わえないゆずや瀬戸内レモン、さらには石川県でしか栽培されない新品種のお米「ひゃくまん穀」など、個性派が目白押しです。JR西日本のコンビニでも流通していますので、北陸を訪れた帰りに最適でしょう。
北陸地方の地ビールを楽しめる場所5選
宇奈月麦酒館
温泉地で見て味わう新鮮な地ビールとビールをアレンジした食事
宇奈月温泉を抱え、数多くの観光客がやってくる宇奈月。そこにあるのが宇奈月麦酒館です。
新鮮な立山の水と酵母を生かした、必須アミノ酸やビタミンが豊富な宇奈月ビールの製造過程を見学することができる施設です。また、開放感のあるレストランでは、出来上がったばかりの宇奈月ビールとともに様々な食事メニューが楽しめ、中には黒ビール「カモシカ」を使った「ビールカレー」なんてものもあります。
黒部渓谷で一日大自然を満喫した後に訪れたのが
宇奈月麦酒館である。管理人お酒あまり飲めないし旅してるので、何が目的かというとビュッフェバイキング
動き回ってお腹が空いたのでここで心もお腹も満たされました pic.twitter.com/RkCrvL8QD6
— おんせん風呂録(中の人) (@ONSEN_BLOG) September 5, 2020
掲載ページ:宇奈月麦酒館
住所:富山県黒部市宇奈月町下立687
城端麦酒 直売所
古さと新しさが入り混じった館内で楽しむ自分に合った量り売り
あの異彩を放つ地ビールの城端麦酒が、工場を移転したのを機に直売所をオープンしてより気軽に手に入れやすくなりました。モダンな建物は実は伝統的な棟梁の技術によるものです。
その古さと新しさが入り混じった空間で楽しめるのは今までにはなかった「量り売り」で樽から自分で好きな分だけ買うことができるのが魅力的です。また、直売所の目の前にはホップが栽培されており、実際にビールができるまでの様子を体感できます。
住所:富山県南砺市立野原東688
日本海倶楽部
奥能登が誇る日本海の絶景をどうぞ
日本海倶楽部は日本海に面する能登内浦の高台に位置し、地ビール工房やビアレストラン、牧場、プライベートビーチがそろうリゾートです。中でも注目なのがレストランから見える絶景。特に1階のテラスと2階のバルコニーからは雄大な内浦町九里川尻湾の景色が遮るものなしに1年じゅう見渡せます。
日本海倶楽部の世界大会で入賞したビールはもちろん、フードメニューも多彩で、地元の小木漁港と宇出津港で取れた海鮮料理や、名物の自家製ナンを使ったピザなど面白い料理がそろっています。
田中商店さんの後は溶けないアイス(クズバー)(^^)恋路海岸経由で日本海倶楽部(笑)で嫁ちゃんがビール、おいらはアイスコーヒー食後にエミューにエサやり(笑)どれだけ食べるんやろ(爆笑)#日本海倶楽部 #クズバー#溶けないアイス pic.twitter.com/vGHHGoLSuH
— shin (@1Agz1Nw3G2HtsSe) July 19, 2020
掲載ページ:日本海倶楽部
住所:石川県鳳珠郡能登町字立壁92
オリエンタルブルーイング
古民家でいただく自家栽培ホップ使用の新鮮な地ビールとピザ
金沢有数の繁華街の片町エリアに隣接し、レトロな街並みが人気のひがし茶屋街にたたずむ小さなビアパブ。スクラッチタイルと2階の丸窓が印象的な外観が目印です。
カウンター9席、テーブル12席のこじんまりした店内では、8種類のタップから自前のこだわりのビールはもちろん、各地からのよりすぐりの地ビールも楽しめます。特に富山県小矢部産のハト麦や加賀棒茶を使ったものがおすすめ。フードメニューも釜焼ピザやグリル料理が評判です。
オリエンタルブルーイング様(@OrientalBrewing )コラボ本当にありがとうございます!!
いつもお店で美味しいビールとお料理いただいております pic.twitter.com/QAxyV94cyv— 迂闊 7/27新刊出ます (@ukkariukatu) July 27, 2020
掲載ページ:オリエンタル ブルーイング(食べログ)
住所:石川県金沢市東山3丁目2−22
千鳥苑
全国の地ビールと旬の地の海鮮のコラボ
若狭湾に面するドライブイン千鳥苑は、海辺で実際に地ビールを製造しています。クラフトビールの本場北米から輸入した機械を使い、カナディアンロッキーの名水で育ったモルトとワシントン山脈産のホップ、そしてここ若狭の湧水を使った新鮮な若狭ビールを生産する過程をガラス越しで見学できます。
敷地内には若狭湾の絶景を眺めながら旬の海鮮が楽しめるバイキングレストランや自家製ベーカリーや足湯も用意されているので、併せて楽しめます。
若狭ビールの醸造所・千鳥苑若狭シーサイドブルワリーで工場見学。
1枚目:工場より五木ひろしコレクションに目が行く
2枚目:日本中の地ビールコレクションも
3-4枚目:工場自体はよそとそう変わらない、中身が勝負 pic.twitter.com/MYcJ3A0FSq— Sひろし (@1970er) June 11, 2016
掲載ページ:千鳥苑(食べログ)
住所:福井県三方郡美浜町坂尻43
北陸地方の地ビールにあうおつまみ2選
河内屋のスティックかまぼこ「棒S(ボウズ)」
「北陸の小京都」として栄えてきた金沢では、京都のしきたりと新鮮な地のものの海産物が織りなす食文化がはぐくまれてきました。
河内屋はその中でもかまぼこの老舗で、長らくスティックかまぼこで知られてきましたが、そのスティックかまぼこが「棒S」として生まれ変わりました。
チーズ・揚げかまチーズ・白えび・ブラックペッパーの4種類があり、地ビールやワイン、日本酒などジャンルを問わずお酒に合い、デザインもおしゃれで味のみならず見た目も楽しめます。
へしこジャン
福井県の若狭地域では魚の糠漬けのことを「へしこ」と呼んでいます。サバやイワシ、サンマやイカなど様々な地のものの海産物を長期保存できるようにするとともに、熟成させてうまみを引き出す方法として長らく親しまれてきました。そのへしこから「へしこジャン」が生まれました。魚を塩と糠につけ、秘伝のたれで仕込み、そこからさらにコチュジャンで味付けするというレシピが編み出されるまで、なんと10年近くかかったこの商品。もともとのへしこのうまみと唐辛子味噌の辛さがうまい具合にバランスよく合わさり、適度な塩辛さはどんなお酒にも合います。
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福井県の地酒の歴史 福井県は昔ながらの蔵元が、大小合わせて37あります。昔から米の生産量では日本でも有数のため、酒造りに最適な米をたくさん生産しております。 海や山も本当に美しい産物で、そこから生まれる美味しいお水があるがゆえの酒造りです。 地酒は鎌倉室町にかけて、米と同等の経済価値を持った商...
まとめ
以上、北陸に行ったら絶対味わうべきおすすめの地ビールを紹介しました。
北陸のビールといえば、新規参入組が勢いを伸ばしたり、他方で日本酒造りの伝統を生かして地ビールを始めた老舗のメーカーや地元の大学や研究機関と一緒に盛り上げたり、いろいろな面白さがありますね。
北陸ではビールづくりに欠かせない澄んだ水資源が豊富なので、地ビール製造に参入しやすい土地柄だからではないでしょうか。
また、北陸ではお酒のみならず食文化も豊かで、新鮮なお米や魚介類が手に入り、それらをふんだんに使ったこだわりの料理が楽しめます。グルメの一大拠点だからこそ、お酒もより楽しめるはず。手間暇かけた地ビールと料理を味わうという楽しみが北陸の大きな魅力でしょう。