日本一の富士山と海産物が豊富な駿河湾、汽水湖の浜名湖など景勝地や自然が豊かな静岡は、お酒に合う食文化も豊かです。静岡おでんや桜エビの天ぷらをはじめ、宇都宮と日本一を争う浜松餃子など名物が数多くあります。

※この記事を書いたライターランニングフリージーのプロフィール
志戸呂焼のビアカップ
静岡の伝統的な焼き物のビアカップ
静岡中部の島田市の金谷地区で焼かれている焼き物が志都呂焼です。その歴史は古く、室町時代にはすでに製造が始まっていたという歴史があります。
もともと美濃の陶工がこの地で窯を構えて焼き始めたとされており、美濃焼のような風合いをどこか感じさせます。徳川家康からも保護を受け成長を遂げました。
戦国時代から江戸時代にかけて活躍した茶人、小堀遠州が目をつけて茶器の産地としても知られるようになります。赤みのかっかった器に黄色と黒色の釉薬をかけて侘びを感じる質感が特徴となりました。この酒器はビアカップとして、ビールの色合いにも合う素朴でありながら力強い雰囲気を持っています。濃厚な味わいのドイツビールを注いでゆっくり楽しんでみるのも良いかもしれません。
Tomonori Egawanoの片口
浜松のガラス作家の手掛ける酒器
静岡にはガラス製品を作成する作家も少なくありません。この酒器を手掛けたTomonori Egawano氏もその一人です。静岡西部の浜松に工房を構え、ハンドメイドで数多くのガラス器を生み出しています。
この酒器はダイヤモンドをモチーフにした片口で、光を浴びるとダイヤモンドのように光り輝く美しい酒器です。全体にダイヤモンドカットを施したようなガラスの加工を行い、輝きを計算した美しい片口に仕上がっています。
機能面も高く精巧な作りによって注ぎ口から流れるお酒も綺麗にぐい呑みや猪口へと収まっていきます。片口もガラス器にすると日本酒の味わいも変わります。特に冷酒との相性も良いので試してみるのも良いかもしれません。
竹炭のぐいのみ
炭の効果でお酒の味わいがまろやかに
静岡の東に突き出た伊豆半島では、多くの山林が広がっています。この酒器を製造する松崎町もその伊豆半島の南に位置し、実に町域の6割以上を山林が占めるという環境にあります。ここでは炭づくりが盛んに行われており、竹炭の生産も行われている町です。
桜餅に使われる桜葉漬け、この桜葉漬けの全国生産量の約7割が、この町で作られており自然と共に生きる町でもあります。自然があふれ、林業が盛んな地域だけあり炭づくりも盛んな松崎町では自然素材の加工技術の高いノウハウを持ってもいます。
この酒器は、竹炭を加工しぐい呑みにしたユニークな酒器で外見はそのまま竹を切った竹炭です。この見た目のインパクトと並んで炭のろ過の性質が生きているため、お酒を入れておくと3分程度で味がまろやかになります。炭の器でお酒を楽しめば、味わいだけでなくそのユニークさから話に花も咲くでしょう。
清水柾 ぐい呑み
散りばめられた金箔が美しいぐい呑み
静岡には多くのガラス作家がいます。このぐい呑みもそんな作家の手掛けたガラスのぐい呑みです。
このぐい呑みを手掛けた清水氏は、ガラス細工の技術に定評があり、ガラス細工でひな人形を作るなど、非常に画期的な製品づくりを行っています。そういった実績を持っているだけあり、美しく精巧な作りになっています。縁起の良い紅白のぐい呑みで、金箔が散りばめられており、ハレの日にふさわしい酒器に仕上がっているのも特徴です。
富士ちょこグラス
富士の造形がインパクト大
伊豆半島の西側、西伊豆でガラス製品の製造を手掛ける工房がいくつもあります。
黄金崎クリスタルパークと呼ばれる施設が、それらの工房の拠点となっているのです。もともとこの地方は、ガラスの原料である「珪石」の産地としてガラス文化を支えてきました。このような背景から工房や作家が多く集まっているという側面もあります。
この黄金崎クリスタルパークの一角で作られているのが富士ちょこグラスです。特徴はグラスの中央にそびえる青富士、頂上に積もった雪と青々とした裾野を忠実に再現しています。お酒を注げば、より富士山の雄大な姿が引き立ち、お酒を飲まない時も置いておくだけで、インテリアとしても楽しめる酒器です。
富士山グラス
切り子を施した高級グラス
このグラスはガラス職人がガラスの底に富士山を入れ、光によってその姿を変える精巧なガラス加工が施されています。観光庁の主催するおみやげグランプリ2015にてグランプリを獲得した実績からも、その実力が分かるのではないでしょうか。高級感あふれるロックグラスは、贈答品としても魅力的な品物として活躍してくれます。
富士桜の切り子も施し、日本らしい姿のロックグラスとして海外の方にも定評のある酒器です。ウィスキーや焼酎など様々な酒類を注いで、味わいやグラスの造形を楽しんでみるのもおすすめです。
賤機焼の徳利
今日は賤機焼で一杯🍶
釉薬で滑らかな口当たりになるね👍 pic.twitter.com/uc18FUiFuw
— しずと (@syzto) January 19, 2017
徳川家に保護された焼き物の酒器
賤機焼は静岡市で焼かれている焼き物です。江戸時代に始められた、伝統的な焼き物としては比較的歴史の浅い焼き物ですが、徳川家康が静岡の駿府城に移った頃から御用窯として繁栄しました。江戸中期に災害によって一度衰退をしましたが、明治期に焼き締めの技術を導入して再興に成功します。赤茶色の素地が特徴で、戦国武将の徳川家康が好んだ力強い風合いを持っています。
そんな特徴を持つ賤機焼を徳利にしたのがこの酒器です。深い赤色が印象的な酒器で、鬼福の異名を持つ賤機焼らしい徳利に仕上がっています。徳川家康が三方ヶ原の戦いので赤く鎧を染めた武田軍を駆逐したという逸話を思いながらお酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
静岡はガラスの原料が算出されてきた背景からガラスの酒器が多い地方です。しかし、遠州七窯と呼ばれる志都呂焼のような焼き物が焼かれてきた歴史を持っています。そのため、ガラス器から陶器といった幅広い種類の酒器を見かけられる地方でもあるのです。しかも竹炭から生み出された酒器があるなど珍しい酒器も多く、興味深い部分もみられます。
こうのような様々な酒器を知ればさらに楽しい時間を過ごせるでしょう。