「一白水成」は秋田県にある福禄寿酒造の醸す日本酒です。福禄寿酒造は330年以上の歴史がある酒蔵で、長年「福禄寿」というブランドのお酒を醸してきました。その酒名はおめでたいとされる七福神に由来します。
そんな福禄寿酒造が2006年(平成18年)に新しくスタートさせたブランド・ラインが「一白水成(いっぱくすいせい)」になります。

※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
環境

秋田県五城目町は、秋田県の県庁所在地秋田市の北約30Kmにあり、広大な水田が広がるおいしいお米の産地です。もっとも、五城目町の東部は急峻な山岳エリア、西側はかつては日本で二番目に大きな湖で、今ではあきたこまちの生産で知られる八郎潟干拓地に接しています。湖と山岳エリアに挟まれた広大な平野部に古くから農業や商業の栄えた土地で、町の中心部では500年前から続く朝市が立つことでも知られています。
五城目町は古くから米の産地だったので日本酒造りも行われてきました。「福禄寿酒造」は、創業が元禄年間という、長い歴史を誇る酒蔵で初代が当地に酒蔵を開いたのは米とともに清冽な水に恵まれています。
仕込み水
福禄寿酒造で使われる水は、日本酒の仕込み水としては珍しい「中硬水」です。敷地内の地下から豊富に湧き出るこの水は、カルシウムとマグネシウムを多く含んでいて、しかもその含有量のバランスは2:1です。これは最良とされるイオンバランスであり、舌触りは爽やかになります。
この清らかな湧き水を仕込み水に使う酒造りは、創業当時から変わりません。ただ16代目が大学で学んだ酒造りのやり方は、軟水が基準でした。中硬水の水は扱いにくく、造りに迷っていた時期には軟水に切り替えたり他からもらってきた水を使ってみたりといった試行錯誤もあったそうです。
しかし初代の彦兵衛氏がこの地で酒造りを始めたのはこの水に出会ったからだと信じ、現在ではこの水を大切にし、この水の良さを生かす酒造りを目指しています。
酒米と酒造り
お米は、ほとんどが地元の秋田県五城目町産のものを使っています。2008年(平成20年)に「五城目町酒米研究会」というものを発足させ、地元の農家さんと一緒に酒米を契約栽培しています。「秋田酒こまち」「美山錦」「美郷錦」「吟の精」といったお米を中心に使っていて、特に「美山錦」を多く扱っています。
日本酒はお米を原料にして作られています。日本人の主食であるお米から作られているのでとても身近に感じられるお酒ですよね。 日本酒はお米が原料になっていますが、どんなお米でも日本酒を作れるわけではありません。日本酒を作るのに向いているお米とそうでないお米があります。またどのようなお米を使って日本酒を作...
基本はていねいに手造りでの酒造りですが、機械に任せた方が正確で優れている工程については機械も取り入れています。一つづつの工程を、福禄寿酒造ならではのやり方で行なっています。
秋田県五城目で造ることを大切にされている酒蔵のお酒、ぜひこの土地の風を感じて飲んでみてください。
五城目の風土を感じられるお酒「一白水成」2選

中硬水で仕込まれるお酒はどんなタイプに仕上がっているのでしょうか。硬水で仕込まれたお酒は、キレのあるしっかりとしたお酒になるといわれています。日本一の酒処と名高い灘五郷の誇る宮水も中硬水の水です。
一白水成 特別純米酒
「一白水成 特別純米酒」は、地元やファンの間では”白ラベル”の通称でとおるお酒。地元五城目町で一緒に酒米を造る、「五城目町酒米研究会」の農家へお願いして栽培した酒米「吟の精」を55%まで磨き麹米に、「あきた酒こまち」を58%まで磨き掛米に使用した一本。「一白水成」のラインナップで定番酒に位置づけられるお酒です。グラスに注ぐと立ち上がるフルーティな香り。吟醸酒ほどではありませんが、しっかりとした吟醸香が漂い出します。口をつけると、広がってゆく果実感のある甘みとふくらみのあるたしかな米のうま味。透き通るようなスッキリとしたあと味は、余韻がスーッと消える、キレのよさもある味わい。美味しいお酒です。通常は軽く冷やした花冷えや、常温で愉しむお酒かもしれませんが、このポテンシャルならあえて燗酒にしてもグッド。日向燗や人肌燗で、ジンワリと味わっても美味しいのではないでしょうか。
一白水成 愛山
「一白水成 愛山」は、季節限定のお酒。兵庫県の特A地区産の稀少な酒米「愛山」を50%まで磨き上げて仕込んだ純米吟醸の一本です。「一白水成」に使用する酒米の殆どは、地元五城目を中心としたものを使用していますが、こちらのお酒は例外。黒いボトルに黒いラベルには風格が感じられます。先程の「一白水成 特別純米酒」の通称”白ラベル”に対して、”黒ラベル”とも称される本品、吟醸酒ゆえの華やかなフルーティーな香りは、口に含んでも清々しく鼻腔をくすぐります。豊かで力強い米のうま味と甘みが広がります。滑らかなにするすると流れていき、最後は喉奥に消えてゆくような淡くきれいな酸味が爽やかなあと味を演出しています。全量「愛山」のお酒でもこんなテイストがあるのかと驚きのある一本です。ほかに、限定品ですが「雄町」、「山田穂」、「山田錦」で仕込まれたお酒もあります。それぞれを飲み比べてみるのも一興でしょう。
「一白水成」は、福禄寿酒造が新たな試みとして、酒蔵のもつポテンシャルを余すことなく投入し、地元五城目のお米を中心に仕込んだお酒です。五城目の風土を感じられるお酒をめざした商品。紹介した以外にも、季節限定のお酒、搾りにこだわったお酒、大吟醸のお酒と、色々なお酒をラインナップしています。そのいずれもが、五城目の水や米、空気、蔵人の想いのこもったお酒です。その思いも一緒に味わいたいシリーズです。
名前の由来
福禄寿酒造のお酒といえば屋号を冠する「福禄寿」。当主の名前を号する「彦兵衛」や大吟醸酒、そして昔ながらの上撰をラインナップしています。
秋田県五城目の地で醸す愉しい酒の歴史
福禄寿酒造の創業は1688年(元禄元年)になります。蔵元の渡邉家は安土桃山時代、一向一揆から逃れるために石川県松任から秋田県にやってきました。その後1688年に、初代の彦兵衛氏が羽後国五十目村(現在の秋田県五城目町)で酒造りを始めます。この頃は主にどぶろくを造っていましたが、やがて江戸末期になると清酒製造が中心になっていきました。
1921年(大正10年)
しかし1921年(大正10年)、町の中心部で大火事が起きます。約300軒もの家々が焼失してしまったほどの大きな火事で、福禄寿酒造でも上酒蔵と下酒蔵以外の建物をほとんど失ってしまいました。歴史を語る上で貴重な資料なども、この時に全て失われてしまったそうです。それでもその後も酒造りは続けられした。
2001年(平成13年)
2001年(平成13年)、現在の16代目蔵元渡邉康衛さんが大学を卒業して戻ってきた頃は、時代の流れもあって酒蔵は大変な状況にありました。このころは普通酒をメインに造っていて、機械での仕込みが主でした。いろいろと悩まれたこともあったようです。
2004年(平成16年)
2004年(平成16年)には、社名が現在の「福禄寿酒造株式会社」に変更しています。
そして2006年(平成18年)に、県外向けの新ブランド「一白水成」が誕生したのです。とは言っても、最初の頃は地元の農家さんにあまり話を聞いてもらえず苦労もあったようです。そんな時代を経て、今は農家さんと一緒に米作りを行なったりもしています。もちろん昔から地元の人々に愛されてきた酒「福禄寿」も、力を入れて造り続けています。













