お酒の名前によく使われるものに「鶴」があります。数えたことはありませんが、名前に「鶴」が入ったお酒はかなりあるんじゃないかと思います。「鶴」は長寿や円満な夫婦仲の象徴ということで縁起がよいということだけではなく、かつては日本中で鶴が舞う姿が見られたといいますから身近な鳥でもあったのでしょう。

※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
米沢上杉藩の御用酒蔵として
「米鶴」を醸造するのは、お酒の名前と同じ屋号の米鶴酒造株式会社。歴史は古く、江戸時代の元禄17年(1704年)に遡ります。酒蔵初代の梅津伊兵衛が豊かな米と清らかな水に恵まれ、置賜地区と宮城県の仙南地区とを結ぶ重要な交易路二井宿街道に面した当地に蔵を開いたことに始まります。以後、300年に渡り、質実剛健の掟のもと、より良い酒造りに勤しんできました。
江戸時代末期には、米沢藩15万石を治める、米沢上杉家の御用酒蔵となり隆盛を極めました。
ところで米沢上杉家といえば、時代劇に煩い方には4代目藩主上杉綱憲の名前が思い出される事でしょう。上杉綱憲は、忠臣蔵でお馴染みの吉良上野介の子で、後に米沢上杉家へ養子として迎えられました。赤穂浪士の吉良家討ち入りの折、一軍を率いて吉良邸へ救援に向かうところを家臣に諌められ断念する場面は忠臣蔵の名場面のひとつとして知られています。
また、疲弊した藩政を立て直し、伝国の辞を伝え、現在でも理想のリーダー像として信奉を集める上杉鷹山を輩出しています。
いちはやく科学的根拠に基づく酒造りに着目
明治期の9代目当主梅津伊兵衛は、地域の名士として村会議員や村長を務め日々奔走する側ら、本業の日本酒醸造にもしっかりとした足跡を残しました。
日本酒醸造は多くを自然の営みに頼り営まれています。天候や温度、蔵の環境など経験や勘のみで行われてきました。そのため、一定の品質を確保することも難しかったと思われます。
そんな時代に、日本酒造りを科学的にアプローチするとよう試みを取り入れます。10代目にあたる息子を、大阪高等工業学校(現大阪大学工学部)に送り、当時最新だった醸造学を学ばせます。その後、最新の知見に基づき、酒造の改革を行いました。結果、酒質は大いに向上することになりました。
この9代目はなかなかのアイデアマンだったようで、名入れコップによる販売プロモーションや抽選付販売、冷酒の開発など、当時として斬新な数々の手法をとり、千石蔵にまで成長させました。「米鶴」の銘柄を誕生させたのも9代目でした。
酒造の実績
その後、世界恐慌、太平洋戦争、戦後の混乱と酒蔵には厳しい環境が続きました。昭和30年、早逝した10代目に代り11代目が23歳の若さで蔵を継ぐことになりました。伝統の看板「米鶴」を求め、日々試行を重ね、ついに5年後に全国新酒鑑評会金賞を受賞しました。
さらに昭和43年には山形県では初の全国調味食品品評会ダイヤモンド賞を受賞の栄誉に浴しました。
これ以後、品評会へ出展するお酒を味わってもらいたいと、翌年度より吟醸酒「米鶴」の出荷を開始。吟醸酒という名前も広く知られていない時代、吟醸酒ブームの先駆けとして人気の商品となりました。今につづく吟醸酒人気の礎を造ったお酒のひとつといえるでしょう。
「まほろばの里」山形県高畠町

米鶴酒造が蔵を構える山形県高畠町は、「まほろばの里」とよばれています。「まほろば」とは、「すみやすい場所」や「すばらしい場所」の意味をもつ古語。「まほろばの里」とよばれるところは日本中にあります。
高畠町は、地味豊かで水清らか、さくらんぼやぶどうなど数多くの果物が生産されています。周辺は山々に囲まれ、先史以来ずっと人々がこの地でくらしてきました。豊かで住みやすい地、まさに「まほろばの里」といえる環境です。
冬季、この地は豪雪に見舞われることもしばしばあるといいます。厳しい冬の寒さは、日本酒造りには適した環境。清冽で豊かな水とピンと張りつめた空気が満ち、日本酒を育てていきます。
酒米についてもこだわりがあります。地元農家と共同で酒米研究会を組織、地元産の酒米を中心に使用。その使用率は、地元二井宿産の酒米を過半数、山形県産米を含めると95%にも及びます。また、酒米「亀の尾」を選抜栽培したオリジナル酒米「亀粋」を仕込んだお酒も醸造しています。
300年以上続く山形県高畠町で造られる「米鶴」4選

現在、「米鶴」は純米大吟醸や吟醸酒など、バラエティーに富んだ商品がラインナップされています。
米鶴 米の力 特別純米 亀粋
純米酒らしい落ち着いたかおりが、ふっと香る立ち上がり。口あたりは滑らかで優しく、やわらかな米の旨みと清涼感溢れる甘みと酸が見事に調和しています。あと、長く余韻を引いて消えて行きます。この味とクオリティでこの価格は出色もの一本です。
米鶴 純米 豊穣の里
先日からの晩酌。
山形県 米鶴酒造 米鶴 純米 豊穣の里
原料米:出羽の里
しっかりとお米の甘味があり呑みごたえのあるお酒でトロミあり。
後口は酸味もありすっきり(ノ´∀`*)#日本酒 #純米 #出羽の里 #米鶴 #山形 pic.twitter.com/rL8Lm1JJhn— Falcon (@matsu_falcon) June 19, 2018
「米鶴 純米 豊穣の里」は、高畠町酒米研究会が栽培した酒米「出羽の里」を全量使用した、水、酒米、醸造とすべてが「まほろばの里」高畠町で満たされたお酒です。グラスに注ぐと穏やかなマスカットのような香りにほっとします。
口に含むと落ち着いた米の旨みと優しい甘さに調和した微かな酸が爽やかな喉越しのお酒です。高畠町のエッセンスが感じられるような気がします。残念なのはこのお酒、高畠町内の酒販店のみの限定販売。高畠町の近くにお出かけの折に立ち寄って購入したいお酒です。
米鶴 純米大吟醸 天に舞う鶴の輝き
マスカットのような香りが立ちあがり、華やかな気分になります。口あたりは滑らか、さらさらと水のように舌の上を流れていきます。しっかりとした米の旨みが口の中で広がり、甘みをともなって溢れていきます。隠れた酸がすっとあわさり、長い余韻を引きながら喉奥へ消えて行きます。キリッと雪冷えや花冷えにして愉しむのが定番でしょうか。
日本酒はビールなど他のお酒と異なり、0℃から60℃とさまざまな温度帯で楽しむことができ、さらに温度で香味まで変わるという、世界でもとてもめずらしいお酒です。焼酎も「お湯割り」「水割り」などがありますが、日本酒はお酒そのものを温めたり冷やしたりするのが、焼酎との大きな違いです。今回は、冷酒についてご紹...
米鶴 スパークリング×山形ワイヴァンズ
なんと。…飲みたい。スパークリング日本酒好き。
パスラボ山形ワイヴァンズ × 米鶴スパークリング(3本セット) https://t.co/lmbiUNs1bn
— トトコ🐥 (@mym_s002) April 15, 2020
「米鶴 スパークリング×山形ワイヴァンズ」は男子プロバスケットボールリーグ山形ワイヴァンズとのコラボ商品。コラボ商品といって軽く見てはいけません。全量山形県産米で醸造したスパークリング純米酒。
口に含むと、シュワッとした発泡酒ならではの感触が口に広がります。最初に甘さが遅れて旨みが、最後にバランス良い酸が調和して、スパッとキレていきます。軽快な味わいの辛口の日本酒。バスケット観戦だけではなく、野球観戦のおともにもピッタリ。キレのある辛口ですので、晩酌にもあうのではないでしょうか。山形ワイヴァンズだけではなく、「米鶴」ファンにもおすすめの発泡酒です。
まとめ
「米鶴」は、300年以上続く酒蔵が、地元の酒米をはじめ地産にこだわった日本酒を醸造しています。そのラインナップは多岐にわたり、季節限定品もいれると軽く30種を超えます。それぞれに特色のあるお酒で、どれもが美味しいお酒です。
「米鶴」の由来は、山形県置賜地方に伝わる民話、「鶴の恩返し」より、実った姿がこうべをたれお辞儀しているようにみえる稲穂や、鶴の立ち姿から、感謝を伝えられるお酒でありたいという願いが込められているそうです。
豊富なラインナップの「米鶴」を一度味わってみて下さい。











