能登杜氏発祥の地、奥能登に250年続く老舗酒蔵。「宗玄酒造」
かつて列車が走り抜けていたトンネルを路線廃止後に転用して、「隧道蔵」と名付け日本酒の貯蔵蔵としている酒蔵があります。能登半島の先端に近い珠洲市にある宗玄酒造です。

※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
創業250年を超える老舗酒蔵
宗玄酒造がこの地に酒蔵を開いたのは明和5年(1768年)、江戸時代中期10代目将軍徳川家治の時代です。
もともと戦国時代、七尾城の城主畠山義春をルーツにもつ初代宗玄忠五郎が創業しました。四代目宗玄忠五郎が清酒造り発祥の地ともいわれる兵庫の伊丹で修業、秘伝を習得し持ち帰りました。
能登にある酒蔵では最古の酒蔵。古くから存在するためか、あたりの地名は珠洲市宝立町宗玄と、地名にもなっています。最寄りのバス停の名前も宗玄です。
明和蔵は、明和5年創業のころの蔵が改修を重ね、現在もなお使われ続けられています。主に地元で消費される製品の醸造に使用されています。
平成10年には最新の技術が投入された設備導入した平成蔵を開設。数量限定のお酒や大吟醸など流通先が限られたお酒の醸造に使用を開始しました。
そして平成25年に開設された貯蔵蔵が隧道蔵です。酒蔵のすぐ裏側を走っていたのと鉄道能登線が廃止され、使用されなくなった宗玄隧道を修復して貯蔵蔵とした転用した蔵です。隧道の中は、一年をとおして温度が12度とほぼ一定で、湿度が高く安定しているため、日本酒を熟成させるのには最適な環境なのだそうです。
宗玄酒造では隧道蔵を利用した面白い試みも行っています。「隧道蔵オーナー倶楽部」です。好きな「宗玄」を6本購入して、年間維持管理費を納めれば、オーナーの名の入った専用棚に、お好きなお酒を好きなだけ保管と熟成していただけるサービスです。年間維持費は100円(税込)です。現地へ赴いて契約できない場合でも宗玄酒造のHPから申込も可能。ご興味がある方は確認して見てはいかがでしょうか。
また平成30年には、当時はまだ皇太子であった今上陛下の行啓を賜る栄誉に浴しています。
奥能登の老舗酒蔵として、地域活性化にも積極的にたずさわり、その存在感は日本酒造りだけではなく、広く地域に貢献しています。
能登杜氏の発祥の地

日本にはいくつかの杜氏集団があります。南部杜氏や越後杜氏、丹波杜氏や広島杜氏など、全国には様々な杜氏集団があります。なかでも南部杜氏、越後杜氏、丹波杜氏と並んで能登杜氏は、四大杜氏集団といわれています。能登杜氏は独自の技術と文化を継承発展させてきました。杜氏集団により造られるお酒には個性があるとされています。能登杜氏の醸すお酒は「華やかで濃厚」な味わいといわれています。
宗玄酒造のある奥能登は能登杜氏のふるさとです。能登杜氏は伝統の技術を引っ提げ、全国の名だたる酒蔵で日本酒を醸造、能登流の名を広げています。そのおひざ元である奥能登で日本酒を醸造する宗玄酒造も能登杜氏の伝統と技術も引き継いでいます。現在、2人の能登杜氏が日本酒醸造に従事しています。平成蔵には能登四天王の一人、故波瀬正吉氏の薫陶を受けた坂口幸夫杜氏。明和蔵には源徹杜氏。
お二人の杜氏は、日本酒造りを追ったオムニバスドキュメンタリームービー「一献の系譜」にもご出演されている有名な杜氏です。余談はありますが、「一献の系譜」は日本酒の愛好者をはじめ、食に携わる方々にはご覧いただき映画です。
宗玄酒造は、能登杜氏の発祥の蔵ともされています。二人の杜氏の日本酒造りを通して、その伝統と技術はしっかりと次代へと受け継がれていきます。「宗玄」は、その一端を担ったお酒でもあるのです。
宗玄酒造の酒造り
宗玄酒造は能登杜氏伝統の酒造りを実践すると同時に、新たな挑戦をし続ける酒蔵でもあります。小仕込と低温発酵で日本酒を醸造しています。少量づつの仕込みと低温発酵で醸造されるお酒は、伝統の技術のだけではありません。緻密な温度管理など、最新の技術と知見によるところも多くあります。伝統と最新技術の融合、新たな境地への挑戦が日々行われ、研鑽され、積み上げられていきます。
日本酒の8割は水からできています。水の性質により日本酒は幾多の表情を見せます。こちらの酒蔵では、酒蔵の裏手にある山で、ボーリングにより、地下深くから清冽な水を汲み上げて使用しています。柔らかな、ほんのりとした甘さをもつ軟水。能登の森が育んだ滋味豊かで柔らかな水です。日本酒の醸造には最適な水とされています。
日本酒原料は、純米酒であればあとは米と麹です。仕込みに使う酒米は地元産の「五百万石」や「のとひかり」のほか、もち米など使用します。また、兵庫県産「山田錦」をはじめ、杜氏の眼鏡にかなった酒米を全国から取寄せてもいます。
日本酒はお米を原料にして作られています。日本人の主食であるお米から作られているのでとても身近に感じられるお酒ですよね。 日本酒はお米が原料になっていますが、どんなお米でも日本酒を作れるわけではありません。日本酒を作るのに向いているお米とそうでないお米があります。またどのようなお米を使って日本酒を作...
「宗玄」のラインナップ3選

「宗玄」の名を冠するお酒は、どの品も素晴らしいクオリティのものばかりです。地元のお店でしか手に入らないようなスタンダート商品から、数量限定の特別限定品や季節限定品の純米酒や大吟醸酒まで、その品質は間違いのないものばかりです。
宗玄 本醸造 黒峰
「宗玄」本醸造黒峰(石川)昔ながらのスッキリ。熱燗向きかなぁ🍶 pic.twitter.com/5FlTBgyoab
— DKZ (@DKZ79755988) January 18, 2024
「宗玄 本醸造 黒峰」は、ほとんどが地元で消費されてしますスタンダートなお酒。本醸造ですので純米酒とは違い醸造用アルコールが使用されています。醸造用アルコールに使用に一部否定的な意見もありますが、現在ではかつて三増酒のような目的ではなく、香味やキレの調整に使用されることがほとんどです。こちらのお酒もそう。
豊かなお米の風味にしっかりとした甘みのある味わいながら、しっかりキレのあるお酒。冷やから燗酒まで、あらゆる温度帯で愉しめます。
暖冬だと今年は言われていますが、やっぱり寒い! そんな時にソッと身体を暖めてくれるのはやはり日本酒の熱燗だと言っていいでしょう。 ひとくちに熱燗と言っても温度によってその呼び方も変わりますが、日本酒の味、薫り、口当たりも変化します。 今回は家でできる美味しい熱燗の入れ方やその種類、温度に合う日...
宗玄 純米 石川門
ドッシリと重厚なお米の旨みと甘みに深いコク、それでいてしっかりとキレのある味わいはさすがの一言です。常温で飲んでも美味しいお酒ですが、凉冷えか花冷えあたりにキュと冷やして飲むと、奥深い味わいをじっくり堪能できるでしょう。蔵元はおすすめしてませんがこれくらい力のあるお酒です。燗酒にしても十分なポテンシャルがあるのではと思います。
宗玄 大吟醸 Samurai King
口に含むと鼻へと抜けてゆく豊かな香りとともにやってくる米の旨みと甘み。そこへ繊細ながら、しっかりとした酸がゆるやかに広がっていきます。圧倒的な旨みと甘みに見事に調和した酸がクドさ流し、喉越しの爽やかさを演出してくれます。最後には軽くキレて消えてゆき、あと味は爽やかで、また一杯と盃がすすみます。常温から冷やして愉しむお酒で、キリッと雪冷えで、しみじみと味わいたいお酒です。
「宗玄」のシリーズにはまだまだ魅力的なお酒がラインナップされています。地元石川どころか能登でしか入手困難なお酒もあるといいます。伝統の能登杜氏の技術を余すことなく投入して創り出される、豊かな味わいと華やか香りのお酒です。能登半島の風土に育まれた滋味豊かなお酒の数々、ぜひとも一度は味わってください。そして、機会があれば是非とも石川県珠洲市の日本海に面した宗玄バス停まで起こし下さい。「宗玄酒造」はすぐそこです。











