富山市の中心部から路面電車に揺られて30分、東岩瀬は神通川の河口にほど近い、入り組んだ路地のある江戸時代初期の建物も残る、かつて栄えた港町。今では、競輪場が近くにあるからか、開催中は時折鐘の音が聞こえてくる静かなところです。

※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
港町にある酒蔵

酒蔵のある東岩瀬は、神通川と富岩運河が合流して富山湾へ注ぎこむ辺り。今では、江戸時代に北前船で財をなした森家の建物や、明治大正時代の建物が残るレトロな街並みが人気のエリアです。
桝田酒造も、ルーツをたどると「岩瀬の5大家」のひとつの廻船問屋に関わります。初代兵三郎は、当時の「岩瀬の5大家」の一角の廻船問屋より妻を迎えた長男亀次郎らとともに、北前船に乗り北海道の開拓へ乗り出したことにはじまります。その後、開拓に入った北海道旭川で酒造業を興し、年間1500石を製造するまで成長するも、明治36年の寒波の後、当地での酒造を断念。明治38年、岩瀬へ戻り酒造をはじめました。以後、港町岩瀬の地で日本酒造りを行い今につづいています。
岩瀬での酒造は、明治38年からですが、酒蔵の歴史はさらに古く、明治26年より数え、2023年には創業130年になる酒蔵なのです。
吟醸酒の先駆者
桝田酒造は、市場がまだ吟醸酒の存在が一般的ではない昭和40年代半ばに醸造を開始した。当時、三代目当主の急逝により大学院で醸造工学を専攻していた4代目当主桝田敬次郎が急遽、酒蔵を継承した。困難な状況のもと、生き残りを賭けて、吟醸酒の醸造に舵を切りました。当然、市場での認知度は低いため、ハイリスクのチャレンジでした。
吟醸酒を造るといっても簡単なことではありませんでした。桝田酒造には、「能登四天王」のひとり、三盃幸一杜氏がいました。二人は、二人三脚で数々の困難を乗り越え、吟醸酒をものにしていきました。
一般的にはまだまだ知られていない吟醸酒でしたが、昭和47年の鑑評会で金賞を受賞。以降、受賞の常連組なりました。
昔ながらの手作りに徹底的こだわる一方で、品質の維持には手造りだけには頼れないと合理的な考え方も有します。しかし、基本的な部分には連綿と継承されてきた主義にこだわります。たとえば、酒蔵の麹室の改修の折には、杜氏と蔵人が能登半島の杉材を持ち込み、自分たちが納得できるまで組立にこだわった。さらに、断熱に用いるムシロやモミガラを苦労して入手するなど、随所に昔ながらの技術へのこだわりがうかがえます。
美味求眞
美味求眞とは、「美味しいものを食べている人しか美味しいお酒は造れない」という意味。桝田酒造のモットーとするところです。これは、富山の地は、南に立山、北に富山湾と山の幸と海の幸が豊かな地です。そこに住む人々は、当然舌が肥えています。豊かな海の幸や香気溌剌とした山の幸には軽妙な淡麗辛口の日本酒では力が及びません。しっかり造りこだ味わいの吟醸酒こそが、富山の幸がより美味しく愉しめるお酒なのです。
お酒を飲むときに欠かせないのがおつまみです。美味しいおつまみと合わせれば、いつものお酒がより美味しく感じられるようになるでしょう。 ※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール お酒におつまみを合わせるコツ おつまみとお酒には相性があります。もちろん自分が好きな食べ物を選ぶ...
主流の淡麗辛口ではない、しっかりとりた富山の幸に負けない、より美味しく愉しめるお酒を醸し続けています。
レトロな港町に佇む、前衛的な日本酒「満寿泉」4選

「満寿泉」は、「まんじゅせん」や「まんじゅいずみ」ではありません。「ますいずみ」と読みます。桝田酒造の桝と掛かっているのでしょうか。「満寿泉」の名を冠する商品は多く展開され、大吟醸酒や純米酒といったレギュラー商品から、季節限定や製造量の少ない限定生産品など、多くの商品がラインナップされています。いずれもに、美味求眞のモットーがしっかり反映されています。
満寿泉 純米
暖冬だと今年は言われていますが、やっぱり寒い! そんな時にソッと身体を暖めてくれるのはやはり日本酒の熱燗だと言っていいでしょう。 ひとくちに熱燗と言っても温度によってその呼び方も変わりますが、日本酒の味、薫り、口当たりも変化します。 今回は家でできる美味しい熱燗の入れ方やその種類、温度に合う日...
満寿泉 白ラベル辛口純米
「満寿泉 白ラベル辛口純米」は、「満寿泉 純米」よりも辛口に仕上げられた一本。酒米に山田錦だけではなく、雄町錦を使用。しっかりした米の旨みと甘み、調和した酸もバランスよい味わいながら、しっかりとしたキレがあり、スッと消えて行きます。クドさは全く感じず、飲み飽きしない味はさすがの一言に尽きます。ことらもお食事のおともに晩酌にと、毎日愉しめるお酒です。軽く冷やした凉冷えから、常温、燗酒とお好みの温度帯で愉しめる懐の広さを感じさせるお酒になっています。
満寿泉 Green 生 ワイン酵母仕込み
はたしてローヌのワイン酵母による日本酒はいかなるものなのでしょうか。さらに驚くのは、このお酒は「生」であるということ。火入れをしていなので酵母がまだ生きています。グラスに注ぐと柑橘系の華やかな香りがフッと立ち上がります。ワイン酵母による発酵のせいなのか、通常の吟醸酒の柑橘系の香とは少々趣がことなり、どこか白ワインを思わせるような感じがします。口に含むと、お米で醸した白ワインのような酸がしっかりと乗った爽やかな当たり。
※の旨みや甘さも十分に広がりますが、さらさらとした喉越しとともに消えて行くようです。生酒ですのでキリット冷やした花冷えや雪冷えで愉しみたいところ。肴はさっぱりとした白身のお魚などもいいかもしれません。富山ですから、白エビのてんぷらとも好相性そうです。
満寿泉 貴醸酒 オーク樽熟成
開栓すると漂い出す甘く爽やかな香気、口含むと広がるはちみつのような甘さとふくらみゆく旨み。まさに濃醇甘口の日本酒の頂点のひとつに到達した至高の甘い日本酒といえます。晩酌や食事のおともするお酒ではありませんが、食前酒や食後のデザートワインのように愉しみたいお酒です。
「満寿泉」を冠するお酒はさらにいろいろとラインナップされています。特徴的なものは、数量が限定されている、前衛的で挑戦的な商品の多さでしょう。ワイン酵母で醸した日本酒を紹介しましたは、シャンパンの酵母を使った純米酒やワイン酵母使った吟醸酒なども発売されています。しかしいづれも、数量限定なため品切れ状態。見掛ければ、即ゲットしたいお酒でしょう。
通常商品も、品質の高さ、酒質の良さからまちがいないお酒ばかりです。吟醸酒の先駆者らしくラインナップは充実していますが、おすすめは純米酒。純米酒は価格も手ごろで、食事とも好相性。気軽に愉しめるお酒になっています。晩酌のおともにどうでしょうか。











