日本中に、「正宗」を名乗るお酒は数多くあります。現在、「正宗」の名を持つ銘柄は百数十あるともいわれています。もともと神戸のお酒、「桜正宗」が発祥だそう。江戸時代の後期、北前船で全国へ運ばれていたころ、その酒質と人気にあやかって全国に広がったそうです。

天童市は内陸ながら、最上川の舟運で酒田とつながっており、北前船で関西とつながっていたので、当時最新の清酒の醸造技術がもたらされたことがうかがえ、興味深いことです。
『山形政宗』を醸すこだわりの蔵元「水戸部酒造」
『山形政宗』の蔵元は山形県天童市の「水戸部酒造」です。1898(明治31)年に創業されました。
蔵のある天童市は、将棋駒と温泉のまちとして知られています。

代表銘柄の『山形正宗』は、辛口でバランスの良く切れ味が特徴で、昔ながらの木槽で搾られる手作りを大切にした日本酒です。
全ての絞りを「槽(ふね)」による上槽で行っており、より自然で最後の一滴まで雑味のない酒となっています。
仕込み水
仕込の水には、立谷川(たちやがわ)の伏流水を敷地内の井戸から汲み上げて使用しています。
この水は、酒造りに有効なミネラルを多く含み、硬度120とかなりの硬水であるため、醸される酒も切れ味よく、「銘刀山形正宗」と呼ばれるほどのキレの良い辛口の日本酒となる一因でもあります。
酒の熟成具合を見極め出荷
また、「水戸部酒造」では毎年様々な種類の酒を造っていますが、それを一斉に出荷するのではなく、ワインの様にそれぞれの酒の熟成具合を見極め、一番良い時期に出荷する、味と品質の管理にも徹底した蔵元です。
酒造の歴史
現当主であり、杜氏の水戸部朝信(とものぶ)さんは子供の頃についたあだ名が「稲造」です。
2000年10月に、東京で勤めていた大手企業を辞めて、蔵に戻ってきました。そして、2008年11月5日に五代目として、社長に就任することとなりました。
「水戸部酒造」の蔵で使われる木槽は、なんと100年も使われているという漆塗りの漕(ふね)です。また、朝信氏自ら設計したという麹室は、黒漆喰の扉に、室内は地元山形産金山杉の柾目を使用という贅沢な造りになっています。仕込み蔵の内装には漆喰が塗られ、天井にはレリーフがあしらわれていますが、これは見た目だけでなく、強アルカリ性である漆喰の特性によって、蔵に不要な雑菌を入れない為でもあります。
「歌を唄うなら、公民館よりオペラハウスが気持ちよい。うちの仕込み蔵も、オペラハウスで唄うくらい、気持ちよく酒造りができる場にしたいんです」という、このこだわりの蔵は、一般見学はおこなっていませんが、機会があれば是非見学したい蔵です。
酒米
朝信氏のこだわりは米にもあります。2004(平成16)年からは、自社で保有していた土地を利用して稲作をスタートしました。当初は四代目と2人でおこなっていた米作りですが、2018(平成30)年には、酒米に特化した農業生産法人「水戸部稲造」を設立しました。現在では8.5ヘクタールに作付けをし、収穫された酒米を使っての醸造もしています。
《ほぼドメーヌ化》を掲げ、酒米は自社で栽培された「出羽燦々」、「亀の尾」を中心に地元でとれた酒米を主に使用していますが、その一方で栽培する土地の特性にあった各地の上質の酒米も評価しており、兵庫県秋津産の「山田錦」、岡山県赤磐産の「雄町」も使用しています。
日本酒はお米を原料にして作られています。日本人の主食であるお米から作られているのでとても身近に感じられるお酒ですよね。 日本酒はお米が原料になっていますが、どんなお米でも日本酒を作れるわけではありません。日本酒を作るのに向いているお米とそうでないお米があります。またどのようなお米を使って日本酒を作...
銘柄は『山形政宗』の他に『水芙蓉』、『乙七』(地元限定)、そして「正酒屋六根浄」のPB『六根浄』があります。
世界でも評価される『山形政宗』の受賞酒
山形政宗 まろら
IWC2016 純米酒部門 BRONZE受賞
この発酵によって、『まろら』はリンゴ酸を乳酸に変えることで生まれる柔らかさを持つようになりました。リンゴ酢の「冷旨酸(冷やすことで旨みが増す)」と、乳酸の「温旨酸(温めることで旨みが増す)」のバランスにより、冷やでも燗でも美味しいオールマイティな日本酒です。
山形正宗 貴醸酒
IWC2018 普通酒部門 GOLD受賞
「出羽燦々」を60%精米にて使用した貴醸酒です。仕込みに日本酒を使用し醸された日本酒は、上品な甘みに、完熟したメロンや蜂蜜を感じさせる味わいを持つ極甘口の酒でありながら、後味はスッキリとキレの良い『山形政宗』らしい貴醸酒です。
銘刀の切れ味のキレ「山形正宗」4選

奥羽山脈の伏流水と良質の米のみで醸される純米酒は、「銘刀切れ味」と表現されるシャープでスパッしたキレのお酒を生み出すのでしょう。
仕込みから絞り、熟成貯蔵まで、伝統の技術、丁寧な仕事、最新の設備を用いて、新しい道具で伝承の技術で造り出されるお酒は、日本酒の新たな地平へと誘ってくれる魅力を感じさせてくれます。
山形正宗 藍
酒蔵のフラッグシップ「山形正宗 藍」は純米大吟醸の一本。岡山県赤磐産の「雄町」を40%まで磨きこんで使こまれたお酒は、華やかな香りがスッと立ち上がります。しかし、華やかであるが華美ではなく、しっとり落ち着いた感じの香り。口すると、雄町の酒らしいふくらみのある豊かな米の旨味が広がっていきます。あとくちはシャープなキレがスッキリと、次の一杯がすすむコクがあり深い味わい。「山形正宗」の酒質をそっと教えてくれるようなお酒に仕上がっています。
山形正宗 純米辛口
「山形正宗 純米辛口」は、「山形正宗」の定番。スタンダートな位置付けのお酒。酒米には「出羽燦々」を使用。精米歩合60%まで磨いて仕込みました。香りはほのか、穏やかで落ち着いたもの。日々の晩酌にはちょうどいい感じ。口に含むと、突き抜けるように豊かな米の旨味がやってきます。甘さもしっかり旨味の陰で仕事をしています。あと味は、シャープ。銘刀の切れ味のような鋭いキレがあり、余韻はスパッと喉奥へ消えて行きます。キレの良さは料理とも好相性。お酒と料理が引き立てあい、さらに一杯と盃がすすみます。
食事のお酒、晩酌にぴったり。常温もいいですが、人肌燗、ぬる燗、上燗あたりで愉しむの、また盃がすすみます。
山形正宗 夏ノ純米

クリアブルーが涼しげな「山形正宗 夏ノ純米」は夏の限定酒。夏の山形は長く日本の最高気温で知られるように、盆地で暑い土地。日が暮れると山や川から涼しい風がそっと吹き抜けるころ、キリッと雪冷えの「山形正宗 夏ノ純米」などを愉しむのでしょうか。
兵庫県産「山田錦」を6割に磨き仕込まれたお酒を、厳重に温度管理したタンクで初夏まで熟成させたお酒。おろどくことに、初夏に出荷するお酒と盛夏に出荷するお酒は度数や味わいを変えているとか。これはどちらも飲み比べたくなります。
「山田錦」のしっかりとした深い旨味と甘さが広がりますが、くどさは全くありません。夏の酒らしく酸味もしっかりあと味の良さとキレを演出しています。ただ爽快さとキレに重きを置いた酒とは一線を画す、味わいを感じることができます。
山形正宗 熟成梅酒
最後に変化球的なお酒を。「山形正宗 熟成梅酒」。何だ梅酒かと申されますな。「山形正宗 熟成梅酒」はその辺にある梅酒ではありません。日本酒で造る梅酒は、度数の低さゆえ、家庭では簡単に造ることできません。ましてや、「山形正宗」にじっくりと漬込み熟成された梅酒。
2014年には大阪天満宮で開催される「天満天神梅酒大会」で優勝という栄誉を得ています。季節限定の商品ですが、見掛けたら一度お試しください。べたつくような甘い梅酒や、梅の香りだけの梅酒などと次元の異なる深いコクと旨味、すっきりとした甘さと、長い余韻がストレートでもロックでも愉しめる味わい。食前酒にも最適な梅酒です。
「山形正宗」、季節限定にはさらの多くの魅力的な商品があります。定番品にも、味わい深い逸品が揃っています。「山形正宗」、機会があれば、まずは一献、お愉しみ下さい。












