「栄光冨士」は山形県の日本酒。山形県といっても日本海に面した鶴岡市に安永7年(1778年)創業の冨士酒造が醸造するお酒です。鶴岡市は修験道で名高い出羽三山の麓、米どころとしても有名な庄内平野に位置します。
「栄光冨士」を醸す冨士酒造もその一つです。
※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
「栄光冨士」の歴史や特徴とは?
『栄光富士』は、山形県鶴岡市にある「冨士酒造」が蔵元です。1778(安永7)年に庄屋を営んでいた加藤専之助有恒氏によって創業ししました。
創業当初の屋号は「加茂屋」を名乗っており、銘柄は『冨士』でした。
鶴岡の地は、加茂港の宿場町として、多くの旅館や旅籠が立ち並び、特産品である「紅花」を京都に運ぶ北廻りのルートでもあり、交易で繁栄した土地でした。
さらに、当時は酒井藩の領地であり、そのなかでも「冨士酒造」が位置する大山は天領(徳川の直轄地)として、酒税が3分の1だったのだそうです。
そのためもあってか、この地は、江戸時代には東北の灘とも呼ばれ、最盛期には数十件もの酒蔵が並ぶ酒業の栄えた地でした。
この地において、「冨士酒造」山形の老舗酒蔵として240年余、日本酒を造り続けてきました。
また、「冨士酒造」は、戦国武将で肥後(熊本)藩の初代藩主として知られる、加藤清正公との縁故があると言われています。
かつて、加藤清正公の三男、熊本藩の第2代藩主加藤忠広公は、徳川家光から肥後領内支配の不行き届きから改易され、庄内藩の預りとなりました。庄内の地にて、加藤忠広公が側室に産ませた長女・加藤妙延が、加藤家の先祖と伝えられています。
今も蔵には、清正公の手槍の柄の部分が家宝として、大切に残されてます。
2006(平成18)年に、13代目として加藤有慶氏が就任しました。
就任当時は、全国の酒販店にお酒を持って行っても、断られ続けていたそうです。
そこで酒作りの基本を見直し、各工程を1つ1つ検証し、「原料の前処理」「搾った後の処理」を特に強化することで、『栄光冨士』は格段に美味しい日本酒へと進化しました。
現在「冨士酒造」は〈伝統と挑戦の酒蔵〉をスローガンとしています。
酒造り
多くの種類の酒米や食用米を使い、さまざまな味わい日本酒を、年に30種以上を醸しています。
日本酒はお米を原料にして作られています。日本人の主食であるお米から作られているのでとても身近に感じられるお酒ですよね。 日本酒はお米が原料になっていますが、どんなお米でも日本酒を作れるわけではありません。日本酒を作るのに向いているお米とそうでないお米があります。またどのようなお米を使って日本酒を作...
『冨士暦酒』では、毎月その季節にあったお酒を「富士酒造」から届ける企画です。これには「楽酒楽学」という小冊子が添えられ、篠田次郎氏の日本酒の飲み方や日本酒ソムリエ菅原敏美氏のコメント、酒の肴などが載せられた内容となり、ファンに嬉しい企画です。
出羽三山の麓、鶴岡のお酒「栄光冨士」5選
さて、そんな「冨士酒造」の代表銘柄「栄光冨士」の酒質について解説します。
「栄光冨士」は全体的にクリアな酒質とバランスのとれた味わい、余韻の美しさに定評があります。といっても、「栄光冨士」は多くの商品ラインナップを擁しています。派生した銘柄などを含めると、「富士酒造」のお酒も相当な種類あります。個々のお酒にはそれぞれ個性があります。いくつかご紹介します。
栄光冨士 本醸造 辛口
「栄光冨士 本醸造 辛口」は、「栄光冨士」シリーズのスタンダート商品。限定品ではなく通年買える商品。おまけに純米酒ではない、普通酒の本醸造。
気軽に味わえる一本です。香りは吟醸酒ではないので華やかな香りはありません。むしろ、日常にお酒を愉しむのに過度な香りはどうなのという風情。
くっとあおると、スーッと流れていく感じ。甘めの口当たりながら、スッとキレる辛口。昨今、あちこちの蔵元が作る超辛口とは一線を画す、普通に晩酌の飲める、飽きのこないシンプルな味。肴は特にこだわらず、日々のお惣菜をあてにして愉しめます。燗もいい。人肌燗なんてヌルいのではなく熱燗でもしっくりくる味。くどさもなく美味しいお酒です。
栄光冨士 暁乃翼 純米酒無濾過生原酒
「栄光冨士 暁乃翼 純米酒無濾過生原酒」は、季節限定の生原酒。山形県産の「はえぬき」を使用。65%まで磨いて仕込まれた一本です。
「はえぬき」いえば、美味しいお米としても市場では人気の品種。酒米ではなく、普段のご飯に人気品種で醸しています。純米無濾過ですから、タンクで仕込まれたお酒をそのまま瓶詰。生原酒ですから当然に火入れなし。
瓶の中でも発酵は進むので、シュワシュワの感じのお酒になります。おまけに無濾過なので澱が瓶の底に薄っすらと溜っています。まぁ濁り酒ですね。栓を開けると、シュワッとした原酒特有の感じで、香りがほんのり立ち上がります。飲み口はフレッシュな果実感のある甘みの中に米の旨味がはっきりとした味わい。酸味がいい仕事していて、後口サッパリとキレの良さもあります。甘口の日本酒がお好きな方にピッタリ。シャンパンの代りに食前酒にしてもよろしいかと思います。
栄光冨士 純米大吟醸無濾過生原酒 ザ・プラチナ(雪女神33)
「栄光冨士 純米大吟醸無濾過生原酒 ザ・プラチナ(雪女神33)」 は、まだ発売前のお酒。発売前なのでなんともいえないのですが、「冨士酒造」さんの「栄光冨士」シリーズだから、まず間違いのないお酒とおもいます。
注目したいのは酒米。山形県が開発した新酒米「雪女神」を33%まで磨き上げ仕込まれた純米大吟醸の無濾過生原酒。万全を期し、丁寧にして繊細な工程で造られた新酒。2月末くらいに出荷されるとのこと。
銘柄は『栄光冨士(えいこうふじ)』の他に、『有加藤(ありかとう)』、『LEAP YEAR』等があります。
有加藤
『栄光冨士』とは違う酒質を持つ日本酒として、販売店限定新銘柄として造られている銘柄です。
銘の読みは「ありがとう」では無く「ありかとう」。富士酒造の蔵元である加藤家は代々名前に「有」と名付ける慣わしがあることが銘の由来です。
LEAP YEAR
今年も買えました栄光冨士リープイヤー✨ボリューム感のある甘味で1口目から幸せ😍
写真2枚目の右の空き瓶は4年前のリープイヤーです。勿体なくてとっておきましたふふふ♪ pic.twitter.com/4WaIBEIgQy— いかさし🦑 (@nihonshushushu) March 17, 2020
無濾過生詰めの純米大吟醸酒の原酒で、うるう年にだけの特別な日本酒で、4年毎の超限定酒となっています。
ほかにも「栄光冨士」のラインナップは豊富です。季節限定品も多いため、入手に苦労する者があるかもしれません。飲みたい時が買い時です。気になる商品を見掛けたら、ゲットして「栄光冨士」を愉しみましょう。
栄光冨士の実績
特に全国の特約店限定で販売される無濾過の生原酒のシリーズは定評があります。
『栄光冨士 大吟醸』は兵庫県産の山田錦を35%まで磨き、丁寧に仕込まれた大吟醸酒です。
『栄光冨士 朝顔』- SAKE COMPETITION2018 純米吟醸部門 GOLD受賞
1964(昭和39)年に、創業以来の代表銘柄であった『冨士』に繁栄の願いを込めて《栄光》を加え、『栄光冨士』と銘を改めました。
すでに気付かれた方もおられるでしょうが、「栄光冨士」の「フジ」の二文字に注目下さい。なんとウ冠ではないのです。社名の「冨士酒造」の方も同様にウ冠ではワ冠。「冨士」の意味は、日本一の酒を造りからきているのです。なら「富士」でもと考えられますが、伝えられるところによると、「富士山は唯一無二。冨士酒造とは別物」。ゆえに、その違いをワ冠として表現しているそうです。