日本酒のラベルをよくみてみると、「生もと造り」と書かれているものを目にします。生もととは日本酒の製法の一つで、これによって作られたお酒には多くのファンが存在します。
今回は生もと造りの日本酒について、その特徴や味わいをまとめました。魅力を知ればさらに美味しく日本酒が飲めると思いますので、ぜひチェックしてくださいね。
※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール
目次
日本酒はどうやって作られる?
生もと造りを理解するためには、まず日本酒の造り方から知っておきましょう。日本酒はお米から造られている、というのはご存知の方が多いと思いますが、実は日本酒ができるまでには様々な過程が存在しているんです。大まかに分けると以下のような製造工程が存在します。
1.精米
原料米を磨き、雑味の原因となるタンパク質などの余分な部分を削り取ります。
2.洗米・浸漬
お米の表面に残っている糠などを洗い流します。さらに水に浸しておくことで、お米に水を吸い込ませます。
3.蒸し
2で浸しておいた米を、蒸気で加熱し蒸らしておきます。こうすることで、麹菌が作用しやすくなります。
4.製麹(せいぎく)
麹室という専用の部屋にて、蒸した米に麹菌を繁殖させます。
5.酒母造り
酵母を育てるための酒母を造ります。酒母は「酛」とも呼ばれます。蒸した米・水に酵母、乳酸菌を加えることにより酒母が完成し、これが日本酒発酵のもとになります。
6.醪造り
いわゆる「仕込み」のことで、タンク内に酒母、蒸米、麹、仕込み水を加えアルコール発酵します。一般的には3回に分けて投入をする、「三段仕込み」と呼ばれる方法がよく知られています。
7.絞り
6でできた醪を絞り、酒と酒粕に分けます。
8.貯蔵
濾過や加水、火入れ処理などをし貯蔵します。貯蔵したお酒は後に瓶詰めされ出荷されていきます。
生もと造りについて解説!
酛(もと)=酒母のことを指します。生もと造りのお酒とは、この酒母造りの過程を特別な手法によりこだわって造られたお酒のことを指します。
酒母造りでは、一般的には人工の乳酸を使っていますが、生もと造りでは乳酸も手作業で造ります。人工の乳酸を使用する場合に比べ、生もとの場合には約1ヶ月とおよそ2倍の時間が掛かります。元々人工の乳酸が存在しなかった時代にはよく使われていた手法で、昔ながらの伝統的なお酒づくりの方法とも言えます。時間をかけて酒母を丁寧に作ることにより、丈夫で長生きな酵母菌が出来上がり、お酒に余計な糖分が残らないようになります。
生もと造りの味わいは?
暖冬だと今年は言われていますが、やっぱり寒い! そんな時にソッと身体を暖めてくれるのはやはり日本酒の熱燗だと言っていいでしょう。 ひとくちに熱燗と言っても温度によってその呼び方も変わりますが、日本酒の味、薫り、口当たりも変化します。 今回は家でできる美味しい熱燗の入れ方やその種類、温度に合う日...
「山廃仕込み」とは何が違うの?
生もと造りと近い製法の一つに、山廃仕込みのお酒があります。山廃とは「山卸廃止」のことです。
生もと造りでは、自然由来の麹菌を取り込むために米や麹をすりつぶす「山卸」という作業をおこなっています。これは非常に重労働なことでも知られています。
山廃仕込みのお酒とは、山卸をせずに乳酸菌を培養し日本酒を造るという製法のお酒のことです。明治時代に流行した製法で、重労働である山卸の過程を省略しながら天然の乳酸菌を取り込みお酒を造るという方法になります。
山廃仕込みのお酒は濃厚な旨味かつ切れ味のある生もとのお酒に比べて、より男性的で力強い味の印象を受けます。銘柄によってもその味は異なるので、飲み比べてみても楽しいですね。
生もと造りのお酒はどう飲むのがおすすめ?合わせるおつまみは?
上記でも述べましたが、生もと造りのお酒はお燗にするのがおすすめです。燗酒にすることで、より強い香りや風味を感じられるようになります。特に精米歩合が低めの純米酒や本醸造酒は、お燗にすると濃醇な旨味をさらに楽しめます。
またしっかりしたコクのある生もとのお酒は、濃い味の料理と合わせても負けることがありません。豚の角煮や鯖の味噌煮など、こってりした味付けのものと合わせて飲んでみてください。以下の塩辛や白子ポン酢などの濃厚なおつまみとも好相性ですよ。
お酒を飲むときに欠かせないのがおつまみです。美味しいおつまみと合わせれば、いつものお酒がより美味しく感じられるようになるでしょう。 ※この記事を書いたお酒ライターAnchanのプロフィール お酒におつまみを合わせるコツ おつまみとお酒には相性があります。もちろん自分が好きな食べ物を選ぶ...
日本酒 生もと造りおすすめ銘柄10選
1.大七 純米生もと
- 特定名称:純米吟醸酒
- 原料米:五百万石
- アルコール度:15~16%
- 日本酒度:+2
- 酸度:1.6
2.新政 S-type 純米吟醸
- 特定名称:純米吟醸酒
- 原料米:酒造好適米
- アルコール度:14%
- 日本酒度:-
- 酸度:-
日本酒人気が高まってきました。少し前であれば、日本酒は「親父臭い」などとして若い世代からの人気はイマイチでしたが、ここに来て幅広い世代からの支持を集めるようになりました。新政についても、そんな日本酒の代表格といっても良い存在であり、着実に人気と知名度をアップさせています。 新政の歴史 そ...
3.生もとのどぶ 純米にごり生原酒
- 特定名称:-
- 原料米:国産米
- アルコール度:18%
- 日本酒度:+11
- 酸度:-
4.男山 生酛 純米酒
- 特定名称:純米酒
- 原料米:美山錦
- アルコール度:15%
- 日本酒度:+4
- 酸度:1.6
男山は江戸時代に生まれ、これまで幾多の歴史的な偉人達が飲んで来たお酒です。 味わいとしてはぴりっとした辛みを持ちながら後味はすっきりしており、これぞ日本酒といったさっぱりした飲み応えを楽しむ事が出来ます。香りも爽やかで味にも癖がない爽やかな飲み応えである事から、ついつい飲み過ぎてしまうそんな魅惑の...
5.花垣 生もと純米
- 特定名称:純米酒
- 原料米:-
- アルコール度:15%
- 日本酒度:+5
- 酸度:2.0
ひと言で日本酒と言っても、色んな種類があって迷ってしまいますよね。せっかく飲むなら味わいにこだわりたいものです。上質なお酒を飲めば、より楽しい時間が過ごせるでしょう。 そこで今回ご紹介したいのは「花垣(はながき)」という銘柄です。このお酒は、原料米から麴まですべて手作りで作られたという、こだわりの...
6.初孫 伝承生酛 本醸造
- 特定名称:本醸造酒
- 原料米:-
- アルコール度:15.5%
- 日本酒度:±0
- 酸度:1.5
7.菊正宗 生もと 上撰
- 特定名称:本醸造酒
- 原料米:国産米100%使用
- アルコール度:15%
- 日本酒度:+5.0
- 酸度:1.4
8.天明 焔 HOMURA 生もと 特別純米 本生
- 特定名称:特別純米酒
- 原料米:夢の香
- アルコール度:16.5%
- 日本酒度:+2
- 酸度:1.8
「天明」は、人気の日本酒銘柄の一つです。福島県の地酒として知られるこの銘柄は、季節感を大切にしており透明感のある味を表現しています。 蔵元は長い歴史をもち、伝統を大切にしながらも新しい試みを続けてきました。「天明」は現在から数えて一世代前の蔵元が作り上げた銘柄であり、それまで日本酒づくりでは当たり...
9.龍力 特別純米 生酛仕込み
- 特定名称:特別純米酒
- 原料米:兵庫県特A地区産山田錦
- アルコール度:16%
- 日本酒度:+2.5
- 酸度:1.6
龍力の歴史 「龍力(たつりき」」という名前の由来は、龍樹菩薩です。龍樹菩薩は、真言宗の始祖とされ、厳しい修行の末に神通力を会得しました。その力によって龍樹菩薩は、齢数百年に及んだと言われています。また、地元が龍野といったので、その一文字を取り、「龍力」と命名しました。龍力は、長寿の酒、健康酒として...
10.沢の鶴 特別純米酒 実楽山田錦
- 特定名称:特別純米酒
- 原料米:兵庫県実楽地区産山田錦
- アルコール度:14.5%
- 日本酒度:+2.5
- 酸度:1.8
伝統ある手法「生もと造り」のお酒を味わってみよう
昔ながらの生もと造りによって醸されたお酒は、しっかりとしたコクや奥行きのある味わいが特徴です。特に燗酒にするとより一層美味しく感じられますので、ぜひ挑戦してみてください。身体が温まり、リラックスしながらお酒を楽しむことができるでしょう。