
和水町(なごみまち)は緑豊かな山々に囲まれた自然豊かな土地で、町内には清流菊池川が流れます。米農家も多く、また日本マラソンの父「金栗四三」の生まれ故郷でもあります。
「花の香酒造」の歴史
1902年(明治35年)
1902年(明治35年)、この土地で神田角次・茂作親子が酒造りを始めました。ちなみに神田家の先祖は600年前、九条関白の子息の厳中和尚のお供として京都から下ってきたとされています。
創業当時は「神田酒造」と言い、妙見神社から譲り受けた田んぼで米を栽培し、神社からの湧き出る岩清水で酒造りをしていました。
1992年(平成4年)
その後1992年(平成4年)に現在の「花の香酒造」へ名前を変更します。
長年日本酒のみを造ってきた酒蔵でしたが、1970年代に焼酎造りにも挑戦します。焼酎ブームの後押しもあり、その頃の売上は順調に伸びていたようです。
しかしブームは長くは続きません。焼酎ブームは下火になり、また日本酒も全国的に需要が減っていきました。
2011年(平成23年)
2011年(平成23年)、6代目蔵元が就任。日本酒造りについて悩んでいたところ、「獺祭」の旭酒造のことを知ります。
さっそく弟子入りすることを頼み込み、2014年に蔵人ともに修行に行ったのでした。
その結果、修行で得られたものは大きく酒蔵ではさまざまな改革が行われました。
一つ一つの作業をていねいに行い、昔ながらの経験や勘に頼った酒造りは見直しました。
そうして造られたお酒は評判も良く、設備投資にも積極的にすることで製造量も増やしました。
2016年熊本地震
2016年には熊本地震という災難に見舞われるも、大きな被害は受けずにすみました。
そしてこの地震を機に熊本応援のためにと取引が増え、全国の人々に花の香酒造のお酒が知られていくようになったのです。
「花の香」の実績
現在もいろいろな工夫や調整を重ねてさらなる酒質の向上を目指しています。フランスへ行き、シャンパンの製法を学んだりもされています。
こうした中で生まれたのが「花の香」シリーズで、ロンドンのコンクールなどで優勝も果たしました。
そして新たな挑戦として、酒造りに使用する酒米を、すべて地元の和水町産のものにしていこうとしています。
この挑戦はすでに始まっていて、花の香酒造のために山田錦を生産する米農家は少しずつ増えています。
フットワークが軽く、次々と新たな挑戦をし実現をしていっている花の香酒造ですから、これからもわくわくするような日本酒造りを期待できるでしょう。
和水テロワール「花の香」3選
屋号を冠したお酒、「花の香」は、蔵元の地元へのこだわりが随所に行き届いたお酒です。地元産の酒米の栽培から手掛け、2020年製造分からは、ついに使用する酒米の全量を酒蔵のある和水町内で収穫されたものだけで仕込むことができるようになるとのこと。お酒の生産で重要な原材料の米と水が、ともに同じ菊池川へ端を発するという、熊本和水の風土がそのまま凝縮されたようなお酒が完成します。
そんな「花の香」の中から、いくつか商品をご紹介します。
純米大吟醸 花の香 和水
「純米大吟醸 花の香 和水」は、蔵元の思いのこもった商品であるとともに、フラッグシップ的な一本です。仕込みに使用された米は、全量熊本県和水町産「山田錦」。仕込みの水も和水町の清らかな伏流水。全部が和水町でできているといっても過言はないお酒です。地元産「山田錦」を丁寧に50%まで磨き上げ、米の旨味と甘みを余すことなくに引き出しました。
グラスに注ぐと大吟醸らしいフレッシュで華やかな香りが立ち上ります。口に含むと、メロンのような香りが鼻へ抜けていき、酸味を纏った米の甘さと旨味が口一杯に押し寄せてくるようです。甘くジューシーで飲みやすいお酒ですが、酸味が隠れているため、くどくどといつまでも口の中に甘さはのこりません。サラッと喉奥へ消えてゆきます。美味しいお酒にもいろんなものがありますが、ジューシーな「美味しいお酒」として間違いのないもです。和水の力が作り上げた逸品でしょう。
純米吟醸 花の香 菊花
「純米吟醸 花の香 菊花」は、熊本産の酒米「山田錦」と「レイホウ」を全量使用した一本。先に紹介した大吟醸ではなく吟醸酒ですので、立ち上がる香りやや穏やか。リーズナブルな価格設定も嬉しいお酒です。口に含んでみると、スッキリとした軽い口当たりながら、しっかりとしたふくらみのある米の甘さと旨味が広がっていきます。それでいていやなべたっとしたくどさがないのは、クリアな酸味が仕事をしているからでしょう。スーッとはいって、そのままさらさらと喉奥へ旨味と甘さを主張しながら流れていく感じで、余韻はかるくキレのある味わいです。食事のお酒として秀逸なお酒ではないでしょうか。
花の香 花火
今週、これを目標に頑張った!!!#花の香酒造#花の香花火 pic.twitter.com/l9lEW9e3ea
— しろ♪(猫桜) (@shiro_neco299) April 5, 2020
最後の一本は変わり種。「花の香 花火」をご紹介します。なんといってもこの「花火」は、仕上がった「花の香」を、さらに瓶の中で2次発酵させたお酒。瓶の中で2次発酵させる技法は、高級シャンパンや発泡ワインと同じ伝統的な製造法。「花火」は日本酒の発泡酒なのです。原酒瓶詰の発泡酒はよく見かけます。それとはまったく異なる、異次元の味わいをもたらします。瓶詰後の2次発酵は澱の処理が大変です。伝統的で手間のかかるデゴルジュマンの手法を用いて解決、まさに和水の生んだ新たな日本酒の形でしょう。
味わいは、スポンと栓を抜くと軽快な香りが広がります。口にすると、ドライな口当たりが軽妙で、仕込みに使用した純米大吟醸の片鱗を垣間見せてくれる甘さと旨さが余韻を引きながら喉の奥へと溶けていきます。大方の人にはこんな発泡酒は初めての体験になるのではないでしょうか。
「花の香」は醸造量があまり多くないため、入手することが難しい商品もあります。しかし、蔵元や地元関係者の努力で生産量も増えていますので、熊本和水の詰まったお酒。ワイン風にいえば和水テロワールを余すことなく堪能してください。
「花の香」の愉しみ方
「花の香 和水 純米大吟醸」を「雪冷え」で愉しむ
花の香は純米酒が主体です。特に「花の香 和水 純米大吟醸」、香りや甘さを引き出して愉しむ飲み方に向いたお酒です。よく、キュッと冷やしたお酒と表現しますが、ちょうど冷蔵庫の庫内の温度に近い5℃くらいでしょう。この辺りのお酒を「雪冷え」といいます。実に豊かな表現ですね。この辺りまで冷やしても、このお酒は十分にポテンシャルを発揮してくれます。むしろ華やかな香りが、しっくり落ち着き、甘さが引き立つ味わいがクローズアップされます。グラスに注いだあと、徐々に温もっていくとともに香りもグッと立ち上がってきて、また違った一面を愉しめます。
あわせるお料理も、和水の水を使ったものはいかがでしょうか。ずばり、お豆腐。お豆腐は大半が水。そして、水がよくなければ豆腐は美味しくないのはお酒と一緒です。道の駅菊水ロマン館では、美味しいお豆腐製造販売をしています。このお豆腐を冷奴か温奴、あるいは湯豆腐にしていただきながら「花の香 和水 純米大吟醸」を口に含めば、和水の景色が目に浮かぶことでしょう。
「花の香 純米 菊花」原酒は冷やで火入れは日向燗で愉しむのもよし
「花の香 純米 菊花」は原酒と火入れの2種類があります。原酒は当然に冷やで愉しむのが定番。温度的には「雪冷え」がお勧めですが、やや温度の高い「花冷え」でも美味しく飲めます。お店で「「花の香」を「花冷え」で」なんて、なかなか洒落た注文ではないでしょうか。一方、火入れの方は同じ冷やでも本当の冷や、常温が美味しい温度。好みは分かれるかもしれませんが、日向燗で愉しむのもよしでしょう。
純米吟醸イコール冷酒という考え方もありますが、お酒の飲み方は十人十色、お気に入りの飲み方をすればいいと思いまので燗酒もありです。
お酒を燗にすると、冷や酒で飲んでいた時とは違った味わいが表れます。こちらのお酒もそう。ただ熱燗にするのはどうかと思います。日向燗は、30℃前後まで温めたもの。35℃を超えると人肌燗になります。このお酒は人肌燗くらいまで、ちょうど日向燗くらいで飲むと、冷やでは見えていなかった、酸味や旨味ぐっと前に出てきます。肴は選ばない素直なお酒ですので、煮魚や塩焼きに限らず、ほぼどんなものでも合います。
「花の香」は、すべてのお酒がクリアで素直な味わいですから、これは合わない。これはダメという組み合わせはあまりありません。飲み方も、生酒や原酒、発泡酒などは冷や冷酒ですが、それ以外のお酒は燗酒でも美味しく飲めます。是非、お試しください。