「篠峯」を醸造するのは、奈良県御所市ある千代酒造です。


また、西に聳える葛城山は修験道の開祖ともいわれている、役小角が修行したといわれる霊峰です。
酒蔵のある、葛城山地の東側の麓一帯は、古来より櫛羅という地名。なかなか読めない難読地名です。「櫛羅」書いて、「くじら」と読みます。奈良や京都、大阪には古代からの地名が変わらずに残っているため、こうした難読地名にしばしば出くわします。
※この記事を書いた日本酒ライターdencrossのプロフィール
原料や酒米
閑話休題、古代より櫛羅とよばれたこの地は、西側の霊峰葛城山地に降った雨が時間をかけて伏流水となり潤す土地。その水の恩恵を自社の井戸で汲みあげて、お酒を醸造に利用するほか、1994年から酒蔵の周囲にある自社田で栽培している酒米「山田錦」にも使用されています。
日本酒はお米を原料にして作られています。日本人の主食であるお米から作られているのでとても身近に感じられるお酒ですよね。 日本酒はお米が原料になっていますが、どんなお米でも日本酒を作れるわけではありません。日本酒を作るのに向いているお米とそうでないお米があります。またどのようなお米を使って日本酒を作...
酒造りの成果
千代酒造が目指すところは、「時間と手間をかけて、風土を醸した酒造り」。工業的に醸造される美味しい日本酒ではなく、農産物加工品としての酒造りを行ています。酒蔵周辺の櫛羅の地で育まれた酒米。葛城山地からの清らかで豊かな伏流水。酒造りに適した、盆地特有の冬の冷え込み。蔵付の麹菌や乳酸菌。これら、櫛羅の風土と蔵人の想いがこもったお酒を醸し続けています。
その成果は、全国新酒鑑評会金賞を16回もの受賞歴という輝かしいもの。新酒鑑評会への出品は平成25年を最後に取り止めているのは誠に残念なこと。しかし、小規模な酒蔵がお客さんの注文にこだわるためにはいたしかたがないことかもしれません。
新酒鑑評会に出品は取り止めていますが、金賞に代り人気の高さが、品質を裏付けています。
「篠峯」の特徴
特筆すべきは、カップ酒をラインナップしていること。お手軽に楽しめる純米酒のカップ酒を2種類販売。気軽に購入していただき、純米酒の魅力に触れてもらう機会を増やしてもらいたいという思いがあるのでしょう。
「どぶろく」の製造
新たな試みとして、「どぶろく」の製造も始めました。「どぶろく」は、米と麹、水だけでつくったお酒。純米酒との違いは、搾らないお酒。まったく搾らないので、醪がしっかりと残っているお酒。
米がそのまま残っていて、まるで甘酒のようですが、しっかりと発酵しているのでアルコール度数は日本酒と同じくらいの16度あります。酒蔵は新たに製造免許を取得し、製造に挑んでいます。蔵元が、「どぶろく」にかける情熱を感じます。
最近は若い方や外国人にも人気が出てきている日本酒ですが、日本酒というと透明に澄んだお酒を思い出されるでしょう。しかし日本酒の中には白く濁った「にごり酒」というものもあります。 普通の澄んだ日本酒と「にごり酒」とは、何が違うのでしょうか。なぜ「にごり酒」は白く濁ってしまっているのか、解説していきまし...
カップ酒もある?奈良の地酒「篠峯」
「篠峯」の定番シリーズにはカップ酒があるのです。
「篠峯 山カップ純米山田錦」と「十字カップ 雄町 純米吟醸」は、手軽に飲めて、気軽に購入できるので、うれしいお酒。正直、1升瓶は冷蔵庫に入らんと諦める人も躊躇なく買えます。大事なのは、味わいですけど。
篠峯 山カップ純米山田錦
さて、「篠峯 山カップ純米山田錦」ですが、新緑色のラベルの正味1合のカップ酒。キャップをカパッと開けると、フッと香る甘めの香り。純米酒の特徴であるふくらみのある米の旨味がハッキリとしています。冷やでやると、最初の口当たりは軽く酸味が出てくる、辛口の風情。カップ酒らしく、そのままお湯へドボンと、ほどよく燗にすると、今度はすっきりとした甘みの勝った口当たりに変わってきます。サラッととして喉越しは軽くキレのある感じ。立ち呑みに並んでいれば、一度手にして楽しんでほしいお酒です。篠峯 愛山 純米 無濾過生原酒
つづいては、季節限定の「篠峯 愛山 純米 無濾過生原酒」をご紹介。ほかに「篠峯 愛山 純米大吟醸 無濾過生原酒」もありますが、ここは吟醸ではない純米酒をチョイスしました。生産量の少ない酒米「愛山」を66%という微妙な歩合に精米して仕込んだお酒を、そのまま瓶詰。フレッシュ感とシュワッと弾けるガス感ば面白い一本です。
口当たりは、「愛山」を使ったお酒に多い、酸味がサッと立ち、米の旨味と混然となり喉奥へ消えてゆく、キレの良い仕上がりになった味わいです。冷やでもいいのですが、これは人肌燗くらいで飲めば、酸と旨味のバランスに甘みも前に出てく感じへと変化していきます。食事や晩酌にピッタリ。口の中の雑味がきれいに洗われるように流れていきます。
櫛羅 純米吟醸 中取り生酒
最後は、酒蔵のエッセンスを詰め込んだ「櫛羅」から一本チョイスしてみました。「櫛羅 純米吟醸 中取り生酒」は、自家栽培した櫛羅産「山田錦」を全量使用。水は、葛城山地の伏流水で仕込んだ一本です。荒走りと責めをのぞいた中取りだけをタンクから無濾過で瓶詰。吟醸香は穏やかで甘く静かに香ります。口に含むと甘さとふくよかな米の旨味に酸味がしっかりと調和し、さらさらと喉奥へと消えてい行きます。甘い香りにキレのある辛口の風情は、食事にも好相性。料理を引き立てるお酒です。軽く日向燗でも美味しいと思います。
「篠峯」には、月ごとにリリースされる限定酒が沢山ある一方で、定番酒としてカップ酒もラインナップされていりバラエティー溢れる商品構成です。
一方、「櫛羅」は酒蔵の地元へのこだわりが詰まったお酒。どちらも、しっかりとし丁寧に造られたことが感じ取れるお酒です。生産数量が少なく、見掛けることも少ないですが、カップ酒は手軽に購入できるので、出会ったときは手に取ってみてください。
まとめ
奈良は日本酒発祥の地ともいわれ、数多くの酒蔵があります。「篠峯」を醸造する千代酒造もその一つ、明治6年創業の老舗の造り酒屋です。酒蔵のある御所市は、西に連なる葛城山地か流れ出る清冽な伏流水と、奈良盆地の寒冷な気候、蔵に棲む酵母を生かし、蔵伝統の技術で日本酒を醸造しています。その手腕は素晴らしく、全国新酒鑑評会で金賞を16回も受賞しています。しかしかがら、小規模な酒蔵のため、平成26年以降は出品を取り止めています。
千代酒造は、「篠峯」のほか、「櫛羅」というお酒も生産しています。
櫛羅
酒蔵周辺の自社田で育てた「山田錦」と、自社の井戸から汲みあげた伏流水、蔵に棲む酵母、奈良盆地の風土、そして蔵人の技が造り上げた、まさに気候、土、水、米すべてが櫛羅で構成されたお酒です。もはや「櫛羅」のエッセンスといっても過言では、唯一無二のお酒です。
一方「篠峯」は、酒蔵から出た酒の変化を飲み手に楽しんでもらうお酒、酒蔵だけで完結しない日本酒の魅力を伝えるお酒として立ち上げられた銘柄です。
そんな「篠峯」、名前の由来は、酒蔵の西に聳える葛城山の別称から。千代酒造のお酒は、葛城山地の伏流水を、自社井戸でくみ上げて使っています。酒蔵にとってかけがえのない山といえます。
「篠峯」や「櫛羅」といった千代酒造のお酒は、小規模酒蔵らしく少量生産のため入手は困難な部類にはいります。全国にある特約店で入手するのが早道でしょう。近くにない場合は、通販に応じてくれる酒屋さんから入手できます。まずはお手軽なカップ酒を見付けに街へ繰り出してみるのも楽しいかもしれません。














